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リアクション
★ ★ ★
メイン会場の方では、イルミンスール魔法学校のブース近くで、ナナ・ノルデン(なな・のるでん)が目を光らせていた。
「こういうのって、騒ぎを起こしたい人たちにとっては、格好の標的ですよね。特に、うちの学校のイコンは結構目立ちますから」
展示されているアルマインの勇姿を見あげながら、ナナ・ノルデンが言った。
「そういえば、オプシディアンたちの仲間にも、こういったのが好きそうなのがいましたから」
ちょっとした不安材料に思いあたると、ナナ・ノルデンは気を引き締めて周囲を見回した。
「ちょっと、何をしているんですか?」
さっそく怪しい動きをしている者を見つけて、ナナ・ノルデンが声をかけた。
「いや、俺は別に怪しい者では……」
「怪しくないって言う人は、充分に怪しいです」
少しあわてる樹月 刀真(きづき・とうま)を、ナナ・ノルデンがジーと見つめた。
「――刀真? 何を……している?」
そこへ、機晶犬を連れた漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)がやってきた。
「よかった、月夜からも説明してくれ、俺は怪しくはないって」
ほっとしたように、樹月刀真が漆髪月夜に頼んだ。
「大丈夫。たまに光条兵器と間違えて人の胸つかんだりするけれど……、悪いことはしない……多分」
「多分じゃないだろ!」
「充分にセクハラね」
叫ぶ樹月刀真を、ナナ・ノルデンがさらにジーッと睨みつけた。
「まったく、ほら、ロイヤルガードの樹月刀真だ」
これ以上話がややこしくなってはたまらないと、樹月刀真が身分証明書を提示した。一応、白地にダークグレーの縁取りがある西ローヤルガード専用のロングコートを着ているのだが。
「ちょっと気になったんで、会場のあちこちに禁猟区をかけた物を設置していたんだ」
「それ、本当……」
うなずく漆髪月夜に、ナナ・ノルデンが一応納得する。
「別に、この会場の警備を担当しているわけじゃないが、人手は多い方がいいだろう?」
「まあ、そうですけれど……。あまり他の所でも疑われないようにしてくださいね」
「ああ、今ので充分に懲りた」
そう言うと、樹月刀真は漆髪月夜を引っぱるようにしてその場を立ち去った。
アルマインの足許で、なぜかスクール水着姿でパンフレットを配っているサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)の姿をちらっと横目で見つつ、次のブースへ急ぐ。というか、後ろから機晶犬に追いたてられた。
「こら、やめろ、月夜!」
小走りに進んで、尻を狙う機晶犬の牙を巧みに避けながら樹月刀真が叫んだ。
「刀真……、キャンペーンギャル見たかった? 私も、水着に着替えた方がいい……かな?」
「いや、キャンペーンガールは、月夜がやりたかったのならやってもいいが、水着はやめとけ」
「どうして?」
ちょっと理由に期待して、漆髪月夜が聞き返した。
「いろいろと、残念な……うわっ、よせ〜!」
「逃がしはしない……」
漆髪月夜の機晶犬に追いたてられて、樹月刀真はあわてて全力疾走を始めた。
「なんだか、騒がしい輩もいるのだよ」
樹月刀真の叫び声を小耳に挟んだ綺雲 菜織(あやくも・なおり)が、軽く眉を顰めた。
『何かありましたか?』
パートナーの有栖川 美幸(ありすがわ・みゆき)が、綺雲菜織のつぶやきを聞きつけて通信を入れてきた。
「いや、なんでもない」
ヘッドセットに手をやって、オンラインに変えた綺雲菜織が答えた。
何かあったときのためと、有栖川美幸は駐機場でイコンの不知火に乗ったまま待機している。
さすがに、展示物が展示物なので、会場に直接イコンでやってくる者も少なくはない。それら個人所有のイコンのために、会場近くに駐機場も設けられていたのだった。
こちらの方も、非公式ではあるが、ちょっとした展示会さながらの華やかさに彩られていた。
イーグリットの改造型の不知火は、追加装甲によって若干オリジナルモデルよりもなめらかなシルエットの安定感の増したデザインとなっている。装甲の増した分の機動性低下を補うために肩部のフライトユニットも若干強化されていた。
その足許では、会場にむかう子供たちが指さしながら群がっていた。
「まあ、あの程度であれば、目くじらを立てることもないか」
ちょっとだけフラワシで機晶犬を押さえ込んでおとなしくさせながら、綺雲菜織がつぶやいた。
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