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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第3回

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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第3回

リアクション


終曲 〜Spiral〜


 F.R.A.G.第一部隊は撤退。
 しかし、帰投後すぐにマヌエル枢機卿が率いる第二部隊が出動したとの報が入る。
 生徒達は間髪入れずに出撃することになる。

『ホワイトスノー博士』
 四瑞 霊亀はイコン製造プラントで次世代機のシステム調整を行っているジール・ホワイトスノー博士に根回しでコンタクトを取った。
『開発中のイーグリット・ネクストにBMI搭載のものを製造して頂けないでしょうか。今のシフなら、使いこなせる。そう思いますから』
 答えは、「試してはみる」とのことだった。
 第二世代機はまだ完成したわけではない。あくまで優先するのは次世代機の調整、とのことだった。

* * *


 強化人間管理課。
(この二人が残りましたか。まあ妥当なところでしょう)
 風間はレイヴンのテストパイロットのデータを閲覧していた。そして、完全適合体候補の中から、二人を「認定」する。
 モニターにはその二人のデータが映し出されていた。

 白滝 奏音。
 ミネシア・スウィンセラフィ。

 と。

* * *


「ヴェロニカちゃん、大丈夫……?」
「……まだ立ち直れそうにはないわね」
 館下 鈴蘭はニュクス・ナイチンゲールと顔を合わせていた。約束通り、彼女のことを教えてもらうために。
「約束通り、話すわ」
 ニュクスが口を開いた。
「わたしがヴェロニカとパートナーを組んだのは今回が始めてじゃない。前も、その前も、ヴェロニカと一緒だった」
「それって、もしかして……」
「わたしはプラントで目覚めてから、最終決戦までの約半年間を何度も繰り返しているのよ。どうしてなのかは分からない。最後は【ジズ】があの『回帰の剣』を、【ナイチンゲール】が『女神の祝福』を起動するところで終わる。そしてわたしは再びパートナーと出会う。ヴェロニカは五代目よ」
 出会うパートナーが変わると、世界が大きく変わったとニュクスが告げる。
「だけど、今回は今までとは違う。わたしが知る極めて稀なイレギュラーが次々と起こっている。ヴェロニカがあんなに多くの友達を持ったことも含めて、ね」
 そして、ある可能性を示唆した。
「ここまでに四度世界が変わっている。この輪の中に囚われているのは、きっとわたしだけじゃない。その誰かが少しずつ、何かのために世界をズラしていってるように思えるわ」

* * *


 シスター・エルザの元を、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は訪れた。
「シスター・エルザ。以前俺に聞いた『どちら側から世界に関わりたい』かの答えを出すよ――両方からだ」
 地球でもシャンバラでもなくその両方に深く入り込んでいく。
「それは『あたしの領域』に来る、ということよ。どちらにも加担するわけでもなく、どちらとも協力する。そこでは『物語』に自ずから関わる資格はなく、ただの『傍観者』となる。それを拒絶し、自ら『物語』に関わろうとするならば両方の敵となる。孤立無援。ただ一人で『世界』と『運命』に挑もうとでも?」
 試すような語り口だ。
 ならば、それに乗ってやる。
「馬鹿げた答えかもしれない……が、それがゲームに対する俺の答えだ」
 何を言われようと曲げるつもりはない。
 そして、一人で挑むには力がいる。その力を得さえすれば全てを敵に回したって構わない。この世界にある「歪み」を潰せるのならば。
「俺が単機でも戦えるイコンを回して欲しい」
「それにあたしが応じると?」
「応じるさ。さっき自分で言っただろ? どちらにも加担するわけでもなく、どちらとも協力する。それは、関わろうとする者を拒否することが出来ない、ってことじゃないのか? それに、前に言っていたはずだ。『あたしは誰の敵でも、味方でもない』と。だったら、俺の敵になることも出来ない。そして何よりも『あたしの領域』に来る、と言っている時点で既に『両方の敵』のどちらにも含まれない。違うか?」
 こんなのはただの屁理屈だ。だが、エルザとの「ゲーム」に付き合っているうちに、こうした思考が身に付いてしまっていた。
「ちゃんと覚えてたのね。ふふ、まあ及第点ってとこかしら。【ベルフェゴール】を回すことは出来ないけど、とりあえず手伝ってあげるわ」
 校長室を出るエルザの後について行く。
 行き着いた先にあったのは、巨大な空母だった。
「イコン空母【トゥーレ】。クルキアータ50機を搭載可能とし、整備環境も整っているわ」
「で、どうしろと?」
「行くわよ。とりあえず、『両方から関わりたい』なら、そのための『場』を設けないと」
 どうやら、エルザも一緒に行くらしい。
「まあ、留守は『聖歌隊』の子達に任せればいいし。あと、ちょっとヴァチカンに寄らせてもらうわ」
 何を考えているかは分からない。
 ただ、一応は協力してくれるらしい。
「それで、この空母でどこへ向かうんだ?」
 エルザが不敵に微笑んだ。

「日本――海京よ」