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燃えよマナミン!(第2回/全3回)

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燃えよマナミン!(第2回/全3回)

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【2】覇王マリエル無双拳……3


「やめて、マリエル!」
 愛美は飛び出した。 
「……ほう、愛美ではないか。他にも万勇拳の有象無象がちらほら。どうやら我らの動向は筒抜けだったようだな」
「どうしちゃったの、マリエル! はーおーこーとかよく知らないけど、そんなマリエル嫌だよ!」
「うぬが新たな自分を見つけようとしたように、我も新たな自分を見つけたまでのこと」
新しすぎるよ!
「五月蝿い奴め。それは貴様よりも先に武の高みへ辿り着いてしまった我への嫉妬か?」
「そうじゃなくて!」
「何が気に入らぬのだ。我もうぬも新しいキャラになって新しいスタートをきればよいではないか」
「決まってるじゃない! 悪い人の仲間になるなんてダメだよ!」
「悪? そんな観点でしか物事を見ぬから、貴様は今ひとつ垢抜けんのだ!」
「!?」
「武の道に正義も悪もない。ただ強さがあるのみ。我に文句があるなら、拳で己の正しさを証明しろ!」
 目で見えるほどの闘気がマリエルの身体を覆った。
「とくとその目に焼き付けるがいいアル。千年にひとり使い手があらわれる伝説の秘拳『覇道拳』を」
 覇道拳。
 大昔に失われてしまった天宝陵の伝説的秘拳。天宝陵史上もっとも偉そうな技だと言う。
 天賦の才が必要とされる技のため、後継者に恵まれず、伝承者不在の幻の拳法なのだ。
「戦うしかないの、マリエル……?」
「逃げるなら追わぬ……ただ貴様との関係は終わりだ! 弱き者をパートナーとは認めぬ!」
「……だったら私は逃げないよ、マリエル!
ならば、来いっ!
 愛美の青い瞳に真っ赤な炎が宿った。
 その手に集束した愛美の闘気が巨大なガントレットへと変化していく。
「行くよ! 万勇拳奥義『自在』!!」
 パートナーの小さな身体に巨大な鉄拳を叩き込む。
 ところが気で出来た拳は、マリエルに触れた途端、硝子の如く粉々に砕け散ってしまった。
「……え?」
「我に挑む気概は見事だ、愛美よ。しかしうぬの拳はぬるい、猫に撫でられているようだ」
 竜巻が渦を巻くように凄まじく攻撃的な気がマリエルの拳に集う。
「技とはこう使うのだ……覇道拳奥義『覇道轟衝波』!!」
「きゃああああああ!!!」
 胸に突き刺さったミサイルの如き掌撃に、愛美は表情に悶絶を撒き散らしながら吹き飛ばされた。
「げ、げほっ! げほげほ……!」
「どうしたその程度か?」
 容赦なく轟衝波を放とうと構える……とその時、龍をかたどった気弾が唸りを上げて飛び込んできた。
「龍頭戯画(ドラゴンヘッド)!!」
 セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)は崩れ落ちそうな愛美を支えた。
「愛美様お気をたしかに!」
「ま、マリエルの気……、半端ない……」
「ええ、本当に。あれほどの闘気は戦場でもなかなか見ません。女子高生が放つにゃヘビィすぎますわ……」
「気弾の直撃も余裕で耐える女子高生はちょっと健全じゃないよね……」
 騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は頷いた。
「ともあれ、セルフィーナは愛美ちゃんをおねがい。マリエルちゃんは詩穂がなんとかしてみる」
 詩穂はばぁーんと強盗のように個室を蹴破った。
 戸惑う自宅警備兵風の利用客をひょいと掴むと、羅刹の武術でまるで双節棍のように扱う。
「はああああああっ!!」

 超高速で入れ替わる映像は一瞬で”過去”になり、自宅警備兵の”記憶”へと追いやられた。
 未体験な遠心力は自宅警備兵の頭部へと血液を振り集め。
 鼻。
 口。
 耳。
 目。
 それらの”穴”は血液の脱出口として機能した。

 加えて……。
 眼球へと大量に流れ込んだ血液は航空業界で云う所謂……”レッドアウト”。
 夜空をも赤く演出した。

 突如眼前に発生した巨大なエネルギー。
 一目見て実感する手に負えなさ。
 その危険度はまるで密室のハンマー投げ。
 人間双節棍の半径100メートルはほぼ無人と化した。

「自宅警備兵よ。我が身を護身(まも)れッッ!! 護身り切れッッ!!」
「ひえええええっ!」
 武器化した警備兵をおもくそマリエルに叩き付けた。
 警備兵をぐるんぐるん振り回し、浴びせる乱打は目にも止まらぬ神技。
 しかし鍛え抜かれた我が子を武器にするならともかく、ただの青びょうたんを武器にしたところでたかがしれてる。
「むっ!?」
 ボコボコになった警備兵は折れ曲がり、ぐったり気を失ってしまった。
 警備兵が身体をはった……いやはらされた甲斐なく、マリエルの鉄壁のガードを突破するに至らなかった。
「おもしろい技を見せてもらった。これはその礼だ」
「これは……!?」
 それは警備兵の服をちぎって作った布細工の花だった。
「詩穂の攻撃から護身りながら、こんなものを作るなんて……!」
 今のマリエルの戦闘力はおそらく館主であるジャブラやミャオ老師に匹敵しているだろう。
 素直で天真爛漫な彼女の物事を吸収する力は半端ない。スポンジが水を吸うようにあっという間にものにしてしまう。
「おそろしい子アル……!」
 指導したカソもここまで成長するとは予想外だった。
「ちょっとおじさん! そんなとこでぼんやり見物してる場合じゃないわよ!」
「な、なにアル!?」
 カソに迫ったのはリナリエッタ、目を妖しく光らせ構えをとった。
「拳型『初見淫剥糖(しょけんいんぱくとう)』……万勇拳奥義『露出拳』!!」
 次の瞬間、気を漲らせた彼女の筋肉が大きく膨れ上がった。
 着ていたチャイナドレスがバリバリに吹き飛び、熟れた林檎のように艶かしい肢体が露となった。
 しかし全年齢対応ゲームなので、布切れが引っかかってギリギリ身体の要所を隠していることは言っておきたい。
「ま、待つアル。ワタシを殺したところでなんにもならないアル」
 戦闘能力の低い彼はあたふたと慌てたが、彼女のほうは「はぁ?」と首を傾げた。
「何そんなビビっちゃってるのよ。あなたもちゃんと攻撃してきなさいよ」
「え?」
「ロリぺたをあんな風にしたように、私をもっとセクシーにさせる穴、もとい孔をいっぱい突くがいいわ!」
「あの、ちょっと……」
ほら、私の孔を激しく突きなさいよ! もうこんなに孔が濡れてるのよ、我慢出来ないわ!
 秘孔はそんな孔じゃありません。
「肉食系女子無理アル……」
「好き嫌いはやめろとママに言われなかったの? 肉もちゃんと食べなさい、この見事に育った私と言う肉を!」
正直ドン引きアル!
 そこに轟衝波に吹き飛ばされた詩穂とセルフィーナ、そして愛美が転がってきた。
「!?」
 けれどもマリエルはトドメを刺そうとはしなかった。
「既に勝敗は決した。地に膝をつけた人間に拳を振るう必要なし」
「はぁ!? 何をお馬鹿なことを言ってるアルか! とっとと息の根を止めるアル、この色魔も一緒に!」
「誰が色魔よ!」
「……敗者にわざわざトドメを刺すなど小さきこと。覇王はただ頂点に君臨すればそれでいい」
「上司の命令には大人しく……」
「黙れ!」
「……ごめんなさいアル」