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【借金返済への道】手作りダンジョンを攻略せよ!

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【借金返済への道】手作りダンジョンを攻略せよ!

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第2章


 ダンジョン開催当日。
 どうやらこのイベントは暫くの間やっているようだ。
 そして、今日は初日。
 バイトを申し出た人達は既に持ち場へと付いている。
 ダンジョンの前には沢山の屋台が出ていて、良い匂いがしてくる。
 入口と出口の中間には巨大なスクリーンが設置されており、中の様子が映し出されるようになってるようだ。
 ダンジョンの前には参加をする人だけでなく、イベントとして楽しみに来ている人が多数来ている。
「ダンジョンに参加する方は入口の受付に急げやコラぁっ! じゃなくて……お急ぎくださーい! 間もなく受付締め切りとなりやがるぜ、この野郎! ……違った。なりまーす!」
 元追い剥ぎの蛮族が拡声器を持ち、案内をしている。
 前に比べるとだいぶ小奇麗になっていた。
 服も如何にも蛮族な服ではなく、ダンジョン従業員専用Tシャツとジーパンスタイル。


「今度こそ、迷惑かけずに借金返済のお手伝いをするぜ!」
 拳を上に突きあげ入口前で叫んでいるのはエル・ウィンド(える・うぃんど)だった。
「本当……今度こそ頑張れよ」
「おぬしは、どうも空回りしやすいのであろう。気をつけよ」
 そんな様子のエルに緋桜 ケイ(ひおう・けい)悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が釘をさす。
「今度は大丈夫ですよ。ね? エルさん」
 優しく笑むソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)にエルはだいぶ感激し、抱きつこうと側へと近寄る。
「おいコラ、エル! お前、今ご主人に邪まな事をしようとしていなかったか? あぁん!?」
 雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)はソアとエルの間に入り、ドスの効いた声でエルをねめつけている。
「し、してないよ〜。やだなぁ」
 エルの目が泳いでいる。
「俺様が居ない間に何かしたら……どうなるか解ってるよな?」
「は、はい……」
 シュンとしてしまった。
「じゃあ、点呼とるぞ。返事しろよ! ソア・ウェンボリス」
「は〜い」
カッチン 和子(かっちん・かずこ)
「はいは〜い!」
クラーク 波音(くらーく・はのん)
「ほ〜い!」
「緋桜 ケイ」
「……ん」
「エル・ウィンド……は別に良いな」
「なんでだよ! ちゃんと居るよ! 点呼してよ」
「はいはい。次行くぞ、シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)
「いるよ」
「ちゃんとみんな居るな。頑張ってこいよ!」
 一同頷く。
「帰ってきたらヒールで回復するから頑張ってね」
 シルバのパートナーである雨宮 夏希(あまみや・なつき)が最上級の笑顔を向ける。
「ああ、心強いよ」
 シルバは夏希の頭をぐしゃぐしゃとなでまわす。
 迷惑そうな顔をしつつ嬉しそうだ。
「なんだか2人は兄妹みたいだね」
「そうか?」
 仲睦まじい様子を見て和子が話しかける。
 シルバは照れながらまだ夏希の頭をぐしゃぐしゃとなでまわしている。
 メンバーが入ろうとするとカナタが皆を呼びとめる。
「注意点がいくつかあるからな。まず、洞窟はなるべく壊さないように。修繕費を請求されたらたまらんぞ。中にいる蛮族やモンスターも怪我を最小限に。治療費がかかるとか言われるかもしれん。解毒剤の回収も窃盗とか言われる可能性もあるであろう。以上だ」
 一気に言い切ると満足気にしている。
「うん、有難う! 注意して頑張ってくるね!」
 素早く反応した和子が言葉を返す。
 ダンジョンに入る組は入口の扉を入り、見届けた留守番組は屋台へと流れて行った。


「急がなきゃ! 参加できなくなっちゃう!!」
 息を切らしながら走って入口へと向かっているのはホイップだ。
 人をかき分け、入口まで到着する。
「メンバーを募っていると噂を聞いたから、まさかとは思ったが……本当に来るとは……はぁ」
 入口の扉の前で仁王立ちしてホイップを待っていたのは藍澤 黎(あいざわ・れい)だった。
「えっ? えっ!? 何で黎さん溜息?」
「一攫千金なんかで借金を返そうだなんて言語道断! 真面目に働け!」
 軽くホイップにチョップを繰り出す。
 黎の口調は少し厳しいが、心底ホイップを心配しているのが良く解る。
「心配してくれて有難う。でも今日はもう集まってくれた人がいるから……ごめんね」
「仕方ない……出口で待ってるから怪我せずに無事に戻って来るのだ。解ったな?」
「うん。じゃあ、行ってきます!」
「ああ」
 少し寂しそうに笑顔を作ると手を振り、見送る。
 扉が閉まり、ホイップの姿が見えなくなるとスクリーンが見やすい場所へと急いで移動する。


 扉の中では真紀とサイモンが受付をしていた。
 さらに、その前には今日、チームを組むみんなが揃っていた。
「うひゃっ。待たせちゃってごめんね!」
 深々と頭を下げるホイップにチームの皆は笑顔で迎え入れる。
「間に合って良かったです」
 志方 綾乃(しかた・あやの)がぽんぽんと頭を軽く叩く。
「うんうん、無事に参加が出来そうで何よりだねぇ……」
 黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)が頷いている。
「頑張って来てね! 後でキュアポイゾンしてあげるから、安心して逝ってらっしゃ〜い」
「違うだろ……」
 屋台で買ったりんご飴を食べながら物騒な事を言っているのはリリィ・エルモア(りりぃ・えるもあ)だった。
「フロイライン・ホイップ。今日は一緒に頑張ろう」
 エリオット・グライアス(えりおっと・ぐらいあす)が明るい緑色のマントをバサッと手で後ろにやり、言葉を掛ける。
「あたしも戦闘に参加するからね!」
「ん? メリエルも参加するでありますか? メンバーが1人多くなるぞ?」
 メリエル・ウェインレイド(めりえる・うぇいんれいど)が参加表明をすると受付をしている真紀からツッコミが入った。
「そんなぁ!」
「じゃあ、あたしと屋台巡りして待ってようよ! ね!」
 がっくりきているメリエルに、そろそろ食べ終わるりんご飴を手に持ったリリィが話しかける。
「うん……。ホイップちゃんと良い感じになったりしたら許さないからね、エリオット君。でもちゃんと守ってあげてね」
「守るのは解ったが……その前のはなんなんだ?」
 クエスチョンマークが頭上を飛んでいる。
「今回も宜しくね! 僕がホイップちゃんの護衛だよ」
 菊の描かれた純白のチャイナドレスをまとったリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)がホイップの肩に手を置く。
「宜しくお願いしますね。それにしても前回といい……似合うね」
「うっ……本当は凄く恥ずかしいんだよ」
「ま、本当に似合っていますよね」
 背に白い狼の刺繍が入った黒のカンフー着を着こなしているパルマローザ・ローレンス(ぱるまろーざ・ろーれんす)がくすくす笑いながら言葉を挟む。
「挨拶は終わったでありますか? これが受付表であります。記入して、奥に進んでくれ。そこが待合室になっている。気をつけるであります!」
 記入してからメンバーは次々に奥へと進んでいく。
 お留守番組は屋台へと向かう。
 腕時計へと目をやると受付終了時間ぴったりだった。
「受付は終了だな。これからタノベさんの護衛へと向かう。何やら良からぬ事を考えている輩もいるようだし」
 あるチームの事を思い出しながらサイモンへと話しかける。
「そうだね。あ、持っていくのは、この受付表だけだったよね」
「ああ。では行動開始だ。ここからが本場であります」
 顔を引き締め、真紀とサイモンは商人タノベの護衛へと向かったのだった。