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魅惑のダンスバトル大会 IN ツァンダ!

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魅惑のダンスバトル大会 IN ツァンダ!

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◇第五章 終幕◇

(アリシアの奴。とんでもない事に付き合わせてくれたな。まぁ、これも修行の一環と思うしかないが……)
 パートナーの陰謀によって、大会へのエントリーを知ったのは大会数日前。特に興味はなかったが、参加した以上は全力を尽くす村雨 焔(むらさめ・ほむら)は見事にダンスを仕上げてきた。日本舞踊と武踊(剣の舞)を併合した彼の踊りは舞扇を使用する独特のもの。音楽は大会の音楽担当の比賀 一(ひが・はじめ)に任せていたが、それは彼の望んでいた『勇敢なる武人の物語』的なイメージにピッタリした音楽で焔も安心して舞う事が出来た。
「いいよ、焔。私がついてる!」
 焔は嫌がっていたが、この計画の首謀者であるアリシア・ノース(ありしあ・のーす)はノリノリであった。焔を女形として舞台に上げ、メイク・衣装等も担当していた。彼に似合いの白系の肩衣に黒の袴。そのおかげで焔は動きずらく、積極的に戦闘する事はなかった。迎撃反撃をメインとし、舞の動きの中で受け流し反撃する方法を取っていたのだ。
「全敵性データ捕捉。戦略データ立案完了。マスター、転送します」
 さらに焔の新しいパートナーで機晶姫のルナ・エンシェント(るな・えんしぇんと)はハンドガンを用いて、焔の敵を狙撃する……気づけば回りに優勝候補らしき人物は残ってない。
(おっ、もしかして優勝できるかも?)
 しかし、彼に湧き上がったそんな思いも一瞬で消し去られる事になる。
「な、何だ!!?」
 剣と剣が交差して激しい金属音が鳴る。前方から現れた漆黒の翼の衝撃に思わず、焔はよろめいたのだ。
(やれやれ……やっぱり、アリシアの奴。とんでもない事に付き合わせてくれたな)
 そこには彼の親友であるクルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)が立っていた。そして、ルナのハンドガンを避わすと、ゆっくりと焔に剣を向ける。
「そう言えば、どっちが強いかちゃんと試した事はなかったな。黒竜の爪牙……その身で味わえ!」
 焔はクルードと激突する。

 ――剣舞。踊りとは結局のところ戦いからきている。それをそう認めざる得ないような動きをしていたのが、不気味な鬼の面を着けた東條 カガチ(とうじょう・かがち)であった。
「踊る阿呆に見る阿呆同じ阿呆なら踊らにゃ損々、てねぇ」
 軽口を叩くが、環頭大刀状の光条兵器を使用しながら、跳ねるように踊る彼の動きは精悍である。大げさに剣を振り回し、音楽と足音と掛け声を見事に揃える彼の鬼剣舞は北陸の方に伝わる伝統芸能の一つである。
「カガチ、がんばって! なぎさんはカガチのおよめさんなんですよ!」
 彼のパートナーである柳尾 なぎこ(やなお・なぎこ)はカガチの光条兵器が消えないようにギリギリ半径10メートル以内の位置に待機していた。戦いや踊りなどはしない。他の人の邪魔にならないように控える奥ゆかしさだ。
(今、どれくらいの順位なんだ。俺は?)
 人数が減るたびに彼は不安になってきた。チームも組んでないシングル出場のカガチは圧倒的に不利である。後半から踊りをさらに大きく荒々しくし、蹴り上げた足でついでに蹴り飛ばしたりしてきた。
(優勝する気はないけど、どうせなら勝ち残りたいものだねえ)
 心臓が高鳴ってきた。もちろん、踊りの最後にはちゃんと〆のポーズを決めるつもりだ。
「カガチ! もうすぐ、おわりですよ!! あとすこし! がんばれぇ〜!!」
 後ろの方でなぎこの声が聞こえる。
「おう、わかった。なぎさん」
 すると、彼は最後の力を振り絞って、振り回す剣で爆炎波を出す。

 もう知った顔も少なくなっていた。
「はぁはぁ、ドジョウスパイラル!!」
「グエエエエッ!!!」
 青空 幸兔(あおぞら・ゆきと)は次から次へと現れる敵から身を護るので精一杯になっていた。ドジョウヘッドスピン&MAX等の多彩な技がなければ、幸兔も残ってなかったに違いない。そう思えるほど辺りは混沌としていた。

「ふにぃ〜、もう駄目ぇ〜!」
 最初に倒れたのは朝野 未那(あさの・みな)であった。
「お、お姉ちゃん達の……ために……私……頑張るの」
 パタンッ、続いて朝野 未羅(あさの・みら)も倒れる。
「もう、げんか〜い!!!」
 小谷 愛美(こたに・まなみ)もお手上げだ。未那を未羅の真ん中に愛美も倒れてしまう。すると、汗だくとなり濡れた愛美の肢体を暫し見つめていた朝野 未沙(あさの・みさ)も、まだ元気だと言うのに愛美に抱きつくように倒れてしまったのだ。
「あぁ〜ん、愛美さぁ〜ん」
「や、やだ、そんなとこ、だめ……あぁ〜ん!」
 後一歩のところまできたが……
 【小谷 愛美】、【朝野 未沙】、【朝野 未羅】、【朝野 未那】 リタイア。

 そして、最後の最後に一際大きな歓声と拍手があがった。【Cheers!】の面々が最後の最後に『グループアクションの決め技:ピラミッド』を行おうしているようだ。
「さぁ、皆様いきますわよ!」
「楽しませてくださいね」
 荒巻 さけ(あらまき・さけ)とパートナーの日野 晶(ひの・あきら)が美しい白い足をコンパスのように振り上げ、白いボンボンを手に後転宙返りが交差させると、久世 沙幸(くぜ・さゆき)宮本 月里(みやもと・つきり)が側転や月面宙返りを組み合わせ、リターニングダガーを乱れ撃ちながら重なっていく。
 さけと晶と沙幸が一番下、その右上に体重の軽い月里が乗る……しかし、ちょっと手が滑り、沙幸の身体に負担がかかってしまったようだ。
「ちょっ……月里っ……それ以上はっ……だ、だめなんだからね!」
「ご、ごめんなさい……沙幸くん、今は力を貸して……!」
 会話が百合っぽいが次が本番である。この技が決まればポイントがかなり高いに違いない。それだけに難しいのも事実なのだ。
「ちょっと、月里さん。わたくしの沙幸さんに手を出さないでくださいます?」
「おおおおおっ!!?」
 観客が萌えた。それは藍玉 美海(あいだま・みうみ)のヘソちらの成果である。色っぽく妖艶な美海の動きは人を釘付けにしていく。体重の関係で頂上を任されたのは九条院 京(くじょういん・みやこ)だ。運動が苦手な彼女だがここまで来て泣き言は言えないだろう。
「……きょ、京に任せておくのだわ!」
 京は己を奮い立たせるような発言をして、美海と一緒に走り出す――観客が固唾を飲んで見守っていた。さけ達のフォローがあるにしろ、周りから狙われやすく難易度の高いこの技。もちろん、ここで邪魔する連中も出てくる。
「優勝ハ、オレタチダ!」
 それはまるで能面のように固まった笑顔、失敗のない規則的な踊りをしていた奇妙なグループ【チャンピオンズ】であった。心のこもってない、人間的な表情、感情を一切見せない奴らは【Cheers!】の放つ攻撃をモノともせずに突っ込んでくる。

「さぁどんどんいくよー スピードあげて 難しかったらぶっぱなせ♪」
 しかし、それを気づいた【ピラフとチャーハンの違いが解らないの会】が機関銃を【チャンピオンズ】に向ける。彼女らはラップの不規則な動きで、奴らを撃ちまくると全員で手を高々とあげて歌ったのだ。
「さぁさぁここまで来たよ こういう時こそ冷静に 華麗に避けるそら今だ 【Cheers!】〜!!!」
 そこに敵も味方はなかった。藍玉 美海(あいだま・みうみ)九条院 京(くじょういん・みやこ)が辿り着けばピラミッドは完成する。だが、それを邪魔したのは能面のような集団の一人だった。その男は京の足を掴んでバランスを崩させてしまう。
「何で何で、ここまで来たのに!?」
 さけの叫び声。崩れる事はなかった。しかし、バランスの乱れたピラミッドは多少不恰好になってしまったのだ。
「あんたらのせいよ!!!」
「キイィーーー!!!」
 怒った【Cheers!】は【チャンピオンズ】に襲い掛かった。パンチ、パンチ、パンチ、キック、キック、キック! それは白いボンボンが赤く染まる続けられた。おそらく彼らは全治三ヶ月程度の傷を負ったのだろう。

「やったぁ!! マナはリタイアしちゃったみたいだけど、あたしらはここまで残ったよぉ〜!!」
 その隣でマリエル・デカトリース(まりえる・でかとりーす)が叫んでいた。もちろん、【マリエルダンサーズ】の連中も歓声をあげる。即席的なチームだったが、マリエルを護る一身で行動してきたメンバーの努力が実を結んだらしい。ダンスリーダーのマリエルのダンス音痴ぶりに点数は散々かもしれないが……
「最後まで踊りきったよ!! まぁ、当然でしょ。私がいたんだからね!!」
「すみません! 美羽さんがばら撒いたワックスで転ばれた方、ご迷惑をおかけしてしまって……」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がはしゃぐ隣でパートナーのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が頭を下げていた。
「クスクス、専守防衛が上手くいったようですわ。これで優勝できればいいのですが、まぁ、マリエルとは仲良くなったのでよしとするわ」
「お嬢様が喜んでくだされば私は何も申しません……しかし、どうして女装など……それにしても、マリエル殿はメイクが下手ですなぁ」
 飛鳥井 蘭(あすかい・らん)のパートナーのクロード・ディーヴァー(くろーど・でぃーう゛ぁー)は惨いメイクをされてしまっていた。蘭が喜んでいたのが救いであろうか?
「よっしゃ、今日も人生楽しんだ!!」
「話すこと、苦手なの……」
 シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)は戦いを避けながらダンスを満喫し、パートナーの雨宮 夏希(あまみや・なつき)は無口ながら和傘で顔を隠し微笑んでいた。
「喧嘩上等!! 長生きしたけりゃ、土下座しな!」
 トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)は無駄な戦いはせずに、挑発して敵を引き寄せながら戦った。どんなに強い相手でも、どんなに痛い攻撃でも、マリエルの為に気合と根性で乗り切ったのだ。
「神様が僕らに微笑んでくれましたね」
「怪我をせず大会を無事終えられてホッとしています」
 風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)とパートナーのテレサ・ツリーベル(てれさ・つりーべる)は激戦の結果、この場に残っていたのをホッとしていた。正直なところ、それほどは目立った活躍はなかったかもしれない。しかし、彼女らは最後まで生き残ったのだ。

「いやはや、ようやく終わりのようですね」
 飛び散る汗と血飛沫、炸裂するパンチにキックにチョップ……って血飛沫!? チョップ、こわっ!!
 あまりの血祭りぶりに観客席の陰に隠れながら応援をしていた黒峰 純(くろみね・じゅん)もこっそりと顔を出した。どちらかというとインドア派、インテリ系、爽やか紳士、暴力は嫌いの純はもちろん応援団としてこの勝負を見守っていた。
「『魅惑のカリスマダンサー』ですか、その誕生の瞬間に立ちあえるとは……長生きした価値がありますね」
 学ラン&ハチマキを着こなし、熱血的に応援活動する。気まぐれで天邪鬼で飽き性の純にとっては珍しい事かもしれない。しかし、それも仕方がないだろう。それだけ、この大会は熱かったのだ。
 負傷者を運ぶ手伝いをしようと思ったが出来ずにいた。演舞場に入るのが怖くなるほどの熱が辺りを覆っていたからだ。
「フフッ、これほどドキドキしたのは久しぶりです」
「キミもそう思う?」
「えっ?」
 驚いて振り向いた純の後ろには神和 綺人(かんなぎ・あやと)が立っていた。今まで観戦していた綺人も終わりが気になり最前列近くまで来ていたらしい。
「……誰が勝つのでしょうかね?」
 冷静に戻った純は真っ直ぐ舞台を見つめる。
「さぁ? もうすぐ結果が出るから楽しもうよ。この宴の終幕を……」
 綺人も舞台に視線を向けると演技終了の音楽が聞こえ、藍澤 黎(あいざわ・れい)の声が響き渡ったのだ。
「終了です。美しい……肉体の躍動、まさに一瞬の芸術。皆さん、拍手で選手たちを称えようではありませんか!」
 パチパチパチパチ! 観客から拍手が巻き起こる。もちろん、選手達……
 樹月 刀真(きづき・とうま)
 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)
 藍澤 黎(あいざわ・れい)
 エディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)
 高月 芳樹(たかつき・よしき)
 アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)
 比島 真紀(ひしま・まき)
 サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)
 らも拍手で皆を称えたのだ。

 こうして、長きに渡った『魅惑のダンスバトル大会 IN ツァンダ!』は終わりを告げた。
 残るは結果発表だけである。店を行った和佐六・積方(わさろく・せきかた)、唐揚げの売り子をしていた如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)は大忙しだったようだ。……と、佑也のパートナーのラグナ アイン(らぐな・あいん)が混じってないのは何故かって? 
 それはもちろん……『なんか赤い奴』がどうやら『ツァンダテロ禁止法発動』に引っかかったらしく、彼女は退場しましたとさ。
 【ラグナ アイン】 リタイア。