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【2019修学旅行】やっぱ枕投げしなくちゃね!

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【2019修学旅行】やっぱ枕投げしなくちゃね!

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第3章 枕投げin女子部屋

 女子部屋は、愛美とマリエルを中心に東西に分かれて、枕投げが行われていた。
「さて、始まりました、修学旅行といえば恒例の枕投げ! 実況は私、弥隼愛がさせていただきます!」
 弥隼 愛(みはや・めぐみ)は、布団の敷かれた間から一歩出た、館内用のスリッパが並ぶ場所で実況という名目で枕投げに参加している。
「おおっとここでマナの枕乱れ撃ちだぁーっ!!」
 愛美がマリエルに向かって、いくつもの枕を両手を使って交互に投げつけているのを見つけて、愛は声を上げた。

 愛美の隣の布団を陣地とするのは朝野 未沙(あさの・みさ)だ。
「愛美さん、危ない!!」
 他の人に投げるのに夢中で、飛んできた枕に気付いていない愛美の様子に、未沙は押し倒すようにして庇った。
「びっくりしたー。でも、未沙さんが庇ってくれなきゃ、当たってたんだわ……ありがとう」
 上体を起こしながら、愛美は未沙へと感謝の言葉を口にする。
 未沙としては、愛美から何かあれば、と願っていたけれど、そう上手くはいかないようだ。
「マリエル様、お隣よろしいですかぁ?」
「うん、よろしくね、未那」
 一方で、未沙のパートナーの1人、朝野 未那(あさの・みな)はマリエルの隣の布団を陣地としているようであった。
「マリエル様、私達も負けていられませんよぅ」
 言って、反対側に居る未沙や愛美に向かって枕を投げる。
 ときにマリエルに飛んでくる枕を間に割って入って、受け止めるなどして、彼女のことを庇ったりもした。

 お菓子を持って、親友のレイディスを訪ねて来た宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)であるが、彼に会うことが出来ず、仕方なく、女子部屋へと入り込んだ。
 ちょうど枕投げが開始されたところのようだ。先に未沙の姿を見つけるとメモ用紙を渡してから、出入り口付近に陣取り、お菓子を広げる。
 お茶も用意して、観戦していると、流れ弾が近くへと落ちてきた。
 あまり端のほうの布団を陣地にしている生徒は居ないようで、落ちた枕が回収されることはない。
 仕方なく、茶器を置くと、祥子は枕を手に取り、愛美に向かって全力で投げつけた。
 メモでの指示通り、投げつけられた枕に気付いたか、未沙が愛美を庇っている。
 その様子を満足げに眺め、また茶器とお菓子を手に、観戦モードへと移る祥子であった。

 就寝の準備をしていた橘 柚子(たちばな・ゆず)は、掛け布団を広げることに集中していたため、後ろから飛んできた枕に気付かなかった。
 枕は柚子の頭部に当たり、その反動に彼女は倒れる。ちょうど、隣で枕投げに没頭していたマリエルを巻き込んで。
「きゃっ!」
「わあ!?」
 抱きついて押し倒すような形で、布団へと倒れこんだ2人。
 倒れた拍子に、頬同士に口付けしたような格好となり、気付いた柚子は慌てて上体を起こした。
(可憐な先輩にキスしちゃった、どーしよー)
 頬を朱に染め、マリエルのことを真っ直ぐ見つめてしまう。
「大丈夫だった?」
 けれど、マリエルは柚子の心中など察することなく、けろっとした様子で訊ねてくる。
「え、ええ」
「うん。気をつけてね、いつ、流れ弾が当たるか分かんないしね」
 そう言って、落ちた枕を拾うと、マリエルはすぐ、枕投げに戻った。
 柚子はその姿を頬を染めたまま視線だけ追いかける。

「こ、これはチャンスだわ!」
 枕投げでのアクシデントでキャッキャウフフな黄色い歓声が上がる中、あーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)は周りの様子にぐっと拳を握った。
 男子禁制の女子部屋での枕投げを煽り文句にビデオカメラで映した女子部屋の様子をDVDにすれば小銭が稼げるのではないか、と。
 もちろん、枕投げの様子を映すつもりはないけれど、そうと決まれば、今まさに中を覗くために部屋の外に集まってくる男子生徒を追い返そうと部屋を出た。
「下心いっぱいで覗きに来ないの!」
 部屋の外で仁王立ちになり、案の定、通りすがりに覗こうとする男子生徒たちを一喝して追い払う筐子の姿がそこにあった。

「ねーねー、るるも交ぜてー」
 パートナーの立川 ミケ(たちかわ・みけ)と共に、夜の散歩という名目で宿を抜け出した立川 るる(たちかわ・るる)。途中で、馬を引き連れたイルミンスールの生徒を見つけて、後をつけてきた先で、女子部屋へと辿り着いたのだ。
 交ぜてと言っている傍から、流れ弾がるるの頭に当たって、落ちる。その枕を拾い上げて、飛んできた方に向かって投げ返した。
「なーっ! なーなーなー!(やーん! 怖いよー、こっちに投げないでー!)」
 ミケはというと、るるの足元で必死になって、飛んでくる枕を避けている。
 避け続けていると、不意にひょいっとるるの手によって持ち上げられた。
「リリカル・ハート・アタック!」
 叫ぶるるは、持ち上げたのが枕ではなく、ミケだということに気付いていない。
「なーーっっ!!?(えええーーっっ!!?)」
「あ!?」
 鳴き声で初めて、るるはそれがミケであったことに気付く。
「ミケ、ごめんねー」
 慌てて、取り返しにいき、改めて枕を投げる、るるであった。

 消灯時間まで時間があったから、と挨拶をするために女子部屋へとやって来た神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)とパートナーのミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)
 部屋の扉をノックして、開くと共に、勢いの強い枕が有栖の顔面に当たった。
「おぉっと、マナミンの投げた枕が来客に――て、大丈夫!?」
 実況をしていた愛が、当たった枕が落ちても呆けたままの有栖の目の前で手を振って、訊ねる。
「あ、ええ。はい、大丈夫」
「……お嬢様、これは戦争ですわ……! わたくしたち百合園も参戦ですわ!!」
 こくと頷いている有栖の手を引き、ミルフィは部屋へと上がっていった。
「何だか知らないけど、来客2人も参戦だー!」
 愛はすかさず実況で伝える。
 何が何だか分からないうちに参加の方向に進んだ2人だが、有栖は生き残るために戦おうと、枕を手にした。
 飛んでくる枕は、ミルフィが盾となって、防いでくれる。
「んっ……その程度の攻撃、わたくしのこの胸で幾らでも受け止めますわっ!」
 そう言って、本当にミルフィは自分の胸を盾にして、枕を受けている。落ちた枕は、すぐに有栖が拾い上げ、全力で投げ返す。
 少し挨拶のつもりが、巻き込まれた形になってしまったが、枕投げを楽しむ2人であった。

「蒼空学園のアイドル、美羽ちゃんが相手よ!」
 自称、蒼空学園のアイドルである小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、枕投げでもナンバーワンになるために、飛んでくる枕を見切って、避け続けていた。
 勉強は苦手でも、体力勝負にはそこそこ自信があるつもりだ。
「避け続けてばかりではないんだもん! 反撃、いくよ!」
 言って、枕を拾い上げると愛美目掛けて、バレーボールのスパイクの如く、打ち出した。
「わわっ!」
 そのジャンプ攻撃を避け切れなかった愛美に枕が当たる。1つ当たれば周りの皆からも標的にされた。
「美羽さん、ひどーい!」
 言って、愛美が枕を投げ返してくる。けれど、美羽に投げられる枕は、彼女の体力が続く限り、見切られ、避けられ続けた。

 蒼空学園の友人のところに遊びに来ていた遠野 歌菜(とおの・かな)は、突如始まった枕投げに、動じることなく、嬉々として参加した。
 騎士として、友人を守るように立ち、飛んでくる枕を警戒しながら、防御姿勢で受け止める。受け止めた枕を盾にして、次の枕が飛んできたら、それを拾い上げて投げつけた。
 自分同様、他校から交ざりに来ている生徒たちを中心に、標的にしていたら、逆にこちらが標的にされたようで、盾にした枕で受け止めきれないほど集中して枕を投げつけられた。
「ちょ、ちょっと! そんなに一度には、受け止められない……っ!」
 焦る歌菜の声は届くことなく、浴びせられた枕の集中攻撃に、布団へと倒れこむ。
「ま、負けたわけじゃないんだから……!」