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目指すは最高級、金葡萄杯!

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目指すは最高級、金葡萄杯!

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第八戦 紐解かれる真実


「ふぅ、なかなかしぶといですね……」
「もうめんどーだからさ、どでかい魔法使っていいか?」
「ダメです! 屋台が壊れちゃいます」

 クライス・クリンプトと浅葱 翡翠は魔法をつかおうとしているウィルネスト・アーカイヴスを何とか止めて、続々現れるパラ実のチンピラ集団をなぎ払ってた。警備班の北条 御影と、トライブ・ロックスターも参戦していたが、一体どこから湧いてくるのかわからないほどにパラ実のチンピラは殴りかかってくる。
 そこへ、箒にまたがったフードの女性が降り立ち、ぎょっとした顔でこちらを見ていた(ように見えた)。

「な、なによこれ、こんな騒ぎじゃ出られないじゃない! 両方指定どおりに手に入れたってのに……」
「何を手に入れたのか、聞きたいのぅ」
「そりゃ、金葡萄と赤髪の機晶姫をさらって来いって、寺院から指示があって……って!!!」
 
 悠久ノ カナタの問いかけにぽろっと漏らした女性は、鏖殺寺院のメンバーであることがすぐに分かった。その単語に、誰もがいっせいに武器を構える。

「ルーノと、金葡萄も返してもらうぜ!!」

 トライブ・ロックスターは綾刀で切りかかろうと駆け出したが、影から何者かが足を掴んでいるように邪魔をされて動くことができない。

「うふふふ、陰に何か潜んでるわねぇ」

 巫丞 伊月はその影に住んでいるらしい何者かを綾刀で突き刺して息の根を止めた。椿 薫もナイフを何本も取り出して、影に向かって打ち付ける。

「なら、影への攻撃をするでござる」
「俺だって、試合じゃなけりゃ思いっきりやってやりますよっ」

 影野 陽太は思いっきりバットを振り回すと、影の中に潜む何かと、パラ実のチンピラを一度に5人もなぎ払う。倒した本人が一番驚いてしまい、目をしばしばさせて呆然としてしまうも、すぐさま他の敵を殴りに駆け出した。

「ごめんなさ〜い、臭いからごみと間違えちゃいましたぁ☆」

 騎沙良 詩穂は仕込み箒で続々と湧いてくる影の中の生き物達を文字通り掃除していく。愛沢 ミサも、ならって箒を取り出し文字通りの掃除を行う。

「綺麗になるのは気持ちがいいなぁ」

 そこへ、銃声が響き渡る。
 だれも遠くから、スナイパーライフルを使っているのだというのが分かった。緋山 政敏は高台の上を見上げ、そこにいる人物に礼代わりの合図を送った。通じたかどうかは分からないが、向こうからも似たような合図が帰ってきた。

「なんなのよ、もう! ただ武術大会に忍び込んでただの葡萄とただの機晶姫を取ってくるだけが、なんでこんな!」
「その葡萄は、ただの葡萄じゃないんだよ」

 如月 佑也は低く呟いた。ラグナ アインも影から襲い来る攻撃を切り返しながら叫び声をあげる。

「それに、ルーノさんだってただの機晶姫なんかじゃありません!!」
「いろんな人の想いがつまってるんです!」

 カチュア・ニムロッドがフードの女性に切りかかって、その手から洩れたルーノ・アレエと金葡萄を抱きとめる。ルカルカ・ルーが轟雷閃を纏わせた渾身の蹴りを食らわせ、麻野 樹が三叉槍で目いっぱい突き出して距離を開けさせると、リリ・スノーウォーカーがファイヤーボールを放った。その後を追撃するため、メニエス・レインがかけていった。

「なんでよ! もう……」
「どちらにろ、失敗ね。あなたじゃなくあたしに頼めばよかったのに……」

 フードの女が逃げるのを手助けしたメニエス・レインは、怪しまれない程度に急いで戻ることにした。逃げられた、恐らく手負いだから問題はないだろう。そういう言い訳を頭の中で考えながら。


「ルーノ、大丈夫か?」

 大草 義純が駆け寄って、ルーノ・アレエのケガの具合を見る。無理に動かされて傷が開いたようだったが、「これなら任せて!」と後ろから朝野 未沙が満面の笑みを浮かべる。

 金葡萄をとりあえず村長に返して、ルーノ・アレエは修理を受けながら、めちゃくちゃになってしまった屋台の前で、残った売り物を振舞ってもらうと、ルーノ・アレエは修理が終わったとたんにうずくまってしまった。フィル・アルジェントが背中をさすって「大丈夫ですか?」と声をかける。

「私は、皆に守られてばかりだ。昔も、今も。助けられるだけの力が私の中にあるのに……それを自分で制御できないとは……」
「もしかして、金葡萄をほしがっていたのは……自分の力を制御するための研究をしようと?」

 ルーノ・アレエはこくん、と頷いた。

「自分の本当の名前を呟くだけで、大陸が荒野になる。本当か嘘か、確かめてしまってからでは襲い。でも、私の身体を開いて調べてもらうという事は、その人に迷惑がかかる。だから」
「ルーノ・アレエは、ルーノ・アレエだろ? 俺はあんたを友達だと思ってる。他の連中だってそうさ。友達から迷惑をかけられて嫌なんてやつ……俺は知らないな」

 トライブ・ロックスターはそういってルーノアレエの肩を叩く。志位 大地も隣で頷いた。

「皆……」
「ルーノさん、ルーノさんには、沢山の友達がいるんですよ」
「そして、これからもっと沢山できるんです」

 フィル・アルジェントと、ラグナ アインは「ね?」といって微笑んだ。

「ありがとう。大切な、友達……」
「おお、よかった、まだここにいたか」

 村長が手を振りながら、闇商人の屋台前に集まる人々に声をかける。
 その手には、金葡萄がひと房。小さな実ではあるが、沢山集まって輝きを眩しいくらいに放っている。


「これを、皆で一粒ずつ食べるといい。とってもおいしいぞ」
「え、でも」
「大会をやり直すには時間もアレだしなぁ。今年はこれでお開きだ。だから、全員で分けようじゃないか、って話になったんだよ」

 それを聞き、誰もが顔を見合わせながら恐る恐る金葡萄を口にする。今まで食べたことのないような新鮮な甘みが口の中に広がっていく。影野 陽太は思わず、言葉をこぼす。

「凄くおいしい……」
「大会がこうなってしまった以上、各学校の校長達にはコチラから金葡萄の詰め合わせを送っておくよ」


 村長の言葉に、誰もがその場に凍りついた。

「村長、今なんて?」

 宇都宮 祥子は何とかして口を開いた。

「いや、金葡萄はこの時期にしか取れない特別な葡萄でな。もって2日しか食べ時がないんだ。3日目になるとしぼんでおいしくなくなってしまうのだよ。全く不思議な葡萄だよなぁ」
「……あの、機晶石の力が篭っている特別なものとかでは……」
「ああ?ああ、ヒラニプラ家からそんな話を聞いたが、葡萄が光っててもとってもおいっしいてことくらいしかなくってなぁ。そんなんじゃ大会にならんだろ?初めてやったときはまだそんなことわからなくってなぁ。今まで内緒にしておったんだ」


 ひとのよさそうな村長の笑い声を聞いて、誰もが脱力したのは、いうまでもない。


 その数日後、金葡萄の詰め合わせが大会が円滑に行われなかった旨の文書と共に各学校に送られたという。






担当マスターより

▼担当マスター

芹生綾

▼マスターコメント

 お疲れ様です。
 当方初めてのバトルシナリオでしたが、如何でしたでしょうか?
 ダイスの出目と、あとはコチラで作成したアミダクジで試合の組み合わせを決めました。
 私としては初の試みだったので、不安な点も数多くありましたが……楽しんでいただけましたでしょうか?
 大会としては残念に終わってしまいましたが、勝利された方々には称号『金葡萄杯の勝利者』を差し上げます。
 運営として参加していただいた皆様、金の葡萄の謎を追及してくださった皆様もお疲れ様です。
 そして、前作から続いてルーノ・アレエのために来てくださった方々もありがとうございます。
 今回参加できなかった方々にも、彼女のその後を楽しんでいただけたならうれしいです。

 このたび、ルーノ・アレエをNPCとして登録させていただきました。今後も何か機会があれば当方のシナリオにでてくるとおもいます。よろしくお願いいたしますね。

 追記:レロシャン・カプティアティ様のお名前を修正させていただきました。大変失礼いたしました。09/11/10