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首狩りウサギを捕まえろ!!

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首狩りウサギを捕まえろ!!

リアクション


頭を使って捕獲

 生首騒動があったが、いよいよ本格的に捕獲作戦が展開された。

 生徒たちは、罠など知略を使って捕まえようとする者もいれば、力ずくでねじ伏せようとする者もいた。

 まずは、頭を使って捕獲しようとする生徒たちをみてみよう。

 アレフティナ・ストルイピン(あれふてぃな・すとるいぴん)は、ウサギ用の肉がおかれた皿の隣で、ビクビクしながら鶏のから揚げを食べていた。

「あう、やっぱりやるんですね。危なくなったら助けてくださいよ・・・・・・それにしても、から揚げおいしいです」

 スレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)は、光学迷彩で姿を隠しつつ、クラーク 波音(くらーく・はのん)と一緒に、アレフティナの様子をじっと見守っていた。

 と、1匹の白いウサギがトコトコとアレフティナに近づいてくると、皿に置かれた肉塊を食べ始めた。

「あわわ、これがパラミタヴォーパルバニー!」

 アレフティナは、至近距離にいる殺人ウサギがいつ襲いかかってくるのかと、身の凍る思いがした。

「よし、今だ」

 スレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)は、鞭を手に持つと、姿を消したままヴォーパルバニーに近づいていった。

 そして、食事中のウサギへと近寄ると、鞭を振り上げた。

「待って、スレヴィ! 叩かないで」

「えっ?」

 ピシッ!

「ギャーーーッ」

 なんと、スレヴィの振り下ろした鞭が、狙い誤ってアレフティナを直撃してしまった。

「痛ーい!!」

「シーッ、アレフティナ静かに」

 騒ぐアレフティナを制したのはクラーク 波音(くらーく・はのん)だった。

 クラークは、ウサギに向き直ると、笑顔を作って手招きをした。

「おいで、ウサちゃん。キミと話がしたいんだよ」

 手招きの次は、うさぎ跳びのモノマネをして、ヴォーパルバニーに呼びかけている。

 パラミタヴォーパルバニーは、はじめ少し警戒していたが、肉を食べて満足したのか、目からは鋭さが消えていた。

「おいで・・・・・・」

 一層優しさをこめてクラークが手招きをすると、なんと、ウサギはトコトコとクラークに近寄っていくではないか!

「お、おい、クラーク。危ないぞ」

 しかし、スレヴィの心配は杞憂だった。

 なんと、パラミタヴォーパルバニーは、草食のウサギのように大人しく、クラークに撫でられている。

「よしよし、いい子だね」

「え? これ、首狩りウサギでしょ!? 頭なでてる・・・・・・」

 驚くアレフティナ。

「もう大丈夫。さあ、ウサギ小屋に戻りましょう」

「すげえええええ。クラーク、あんたにこんな能力があるとは知らなかったぜ」

 ひたすら感心するスレヴィとアレフティナだった。

 これで、マリエルに対峙していたウサギに続いて、2匹目を捕獲した。

※ ※ ※


 校庭の茂みでは、影野 陽太(かげの・ようた)酒杜 陽一(さかもり・よういち)とともにウサギの探索をおこなっていた。

「酒杜さん、俺の『ユビキタス』と『博識』で収集した捜索地域データからすると、このあたりにいるのは間違いはありません」

「ああ、陽太。なるべく戦わずに捕まえたいものだな」

「それは大丈夫です。『トラッパー』と『防衛計画』で最適の罠を考えていますから・・・・・・」

「ほう、最適って、どんな罠なんだ?」

「まあ、基本は餌でおびき寄せて檻に閉じ込める感じですね」

「ふーん。で、エサは持ってきているのか?」

「えへへ、実はその餌って・・・・・・酒杜さんのことなんですよ」

「あはは、そうか。それなら心配ない。もともと自分が囮になるつもりだったからな」

「そうだったんですか! それなら話が早い・・・・・・あ、ここです、ここに立っていてください。このポイントが最も出現しやすい場所ですから」

 得たりとばかり、酒杜 陽一(さかもり・よういち)は茂みに背を向けると、手鏡を取り出して後方が見えるようにした。

 やがて、茂みの葉がわずかにガサゴソと動き、なにかの影がみえた。

「来たぞ・・・・・・パラミタヴォーパルバニーは俺の首を狙っている。おそらく、最短の軌道を描いて飛びかかってくるだろう」

 キシャーーーッ!!

 酒杜 陽一(さかもり・よういち)の首へ、一直線に前歯が踊りかかる。

「でやっ」

 ウサギよりも一瞬早く、陽一の光条兵器からフラッシュが放たれ、ウサギの目を直撃した。

「今だ!」

 陽一は素早くウサギを取り押さえると、影野 陽太(かげの・ようた)が用意した檻の中に放り込んだ。

「ざっとこんなもんだな」

「さすがは酒杜さんですね」

「いやいや、陽太が入念な準備をしてくれたからだよ」

 これで、3匹目を捕獲。残りは7匹!

※ ※ ※


 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、校舎の中庭に来ていた。

 同行しているのはソラ・ウィンディリア(そら・うぃんでぃりあ)葛葉 明(くずのは・めい)

 美羽は、ここで恐れの歌を歌っている。

「♪♪♪ うふふ、これで大分パラミタヴォーパルバニーはおびえているはずよ」

 と、歌に聞き惚れていたソラ・ウィンディリア(そら・うぃんでぃりあ)の後ろから、いきなり光る前歯が襲った。

「あぶないっ」

 葛葉 明(くずのは・めい)は叫ぶや、腕を伸ばしてソラの首をガードする。

 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)も歌をやめ、ウサギに雷術を放った。

 ウサギが怯んだところを、ソラが素早く取り押さえた。

 すると、葛葉はソラの手からウサギを抱き取ったのだ。

「明くん、あぶないよ」

 そうソラが忠告したとおり、ウサギは葛葉の手をガブリと噛んだ。

 しかし、葛葉は痛みを顔に出さず、優しくウサギの背中を撫でていた。

 すると、ウサギは噛み付いても騒がない葛葉の行動を意外に思ったのか、攻撃的な態度をやめ、その傷口を優しく舐め始めたのだ。

「明すごい、おとなしくなっちゃった!」

「ううん、美羽ちゃんが歌ってくれたおかげだよ。怯えているウサギは、愛情を持って接すればきっと心開いてくれると信じていたからね」

 4匹目ゲット。残り6匹。

※ ※ ※


 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)朝野 未沙(あさの・みさ)霧島 春美(きりしま・はるみ)ピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)、そしてルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)は、ウサギを探してカフェテリアの前にやってきた。

「私、【獣医の心得】があるんだけど、ウサギって体温調節が苦手なのよ。だから、氷術と火術を同時に唱えて、周囲の湿度と温度を上げるのよ。こうすればウサギは本来の力を発揮できないわ。まぁ、私達もちょっと蒸しますが・・・・・・」

 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)の話を聞くと、朝野 未沙(あさの・みさ)は反応した。

「あ、あたしもアリアさんと同じこと考えたよ。氷術で体温を奪えば、動きが鈍るだろうなって思ってた」

 こう話しているアリアたちの前に、食べ物を探してカフェテリアにやってきたパラミタヴォーパルバニーが現れた。

「あ、来た!」

 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は、ルミーナと背中を合わせて警戒しながら火術を放った。

 同時に、朝野 未沙(あさの・みさ)は氷術を唱えた。

 たちまち周囲の温度と湿度が上昇する。

 急激な温度変化に、体温を奪われたパラミタヴォーパルバニーは、本来の機敏さを失い、逃げようとした。

「逃がさないわよ!」

 朝野 未沙(あさの・みさ)が再び氷術を唱えると、氷の壁が現れて、ヴォーパルバニーの逃げ道をふさいだ。

「よーし、いよいよ春美たちの出番ですね。ピクシー、いきますよ」

 霧島 春美(きりしま・はるみ)はそういうと、魔法の箒にまたがって、ウサギと壁の間に飛んでいった。

 春美がハーフムーンロッドでウサギを追い立てると、ウサギは方向を変え、朝野 未沙のほうに向かってきた。

 未沙は、ハルバードを構えると、柄の部分で防御した。

 とっさの事態だが、うさぎさんを傷つけないように刃の部分は使わないという未沙の配慮だった。

「あ、そっちじゃないよ!」

 ピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)は、すかさずトランプを投げつけた。

 カカカカカッ

 まるで、手裏剣のように、トランプのカードが地面や壁につきささる。

 進路を塞がれたヴォーパルバニーは、窮鼠のごとく、ピクシコラにとびかかってきた。

「あぶないっ」

 朝野 未沙の悲鳴がカフェテリアをつんざいたが、ピクシコラは上手に避けると、かぶっていたシルクハットをスッと出し、これまた上手にウサギをキャッチした。

「よし、つかまえた」

 火術と氷術の攻撃で、ウサギはぐったりしている。

「ごめんね、あとでちゃんと手当てしてあげるから・・・・・・」

 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)はそう言いながら、ウサギ小屋に運ばれるヴォーパルバニーを見送っていた。

 これで半分の5匹目を捕獲。残りは5匹だ。

※ ※ ※


 高務 野々(たかつかさ・のの)たちは、体育館に来ていた。

 禁猟区を使って警戒していると、1匹のパラミタヴォーパルバニーが感知された。

 芦原 郁乃(あはら・いくの)が、さらに魔法で探知する。

「この周囲には、野々が感知したウサギしかいないようね」

「そうですか。それじゃあここは、ダメで元々、罠を仕掛けましょう」

 これを聞くと、藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)は意気込んだ。

「罠なら私に任せて! このナラカの蜘蛛糸を、トラッパーで広めに配置するのよ。それで、動くものが通りがかったら、糸でキュッとしめるんです。あ、糸は予め切れ味を鈍らせておいた部分を作っておいたから安心して。これならウサギがかかっても気絶するだけで済むから・・・・・・でももしうっかり鋭利な部分で締め切ってしまうかも」

「優梨子さーん、それはちょっとまずいんじゃないですか?」

「まぁ、一刻を争うことでしたから、準備が不十分だったのはお許し下さいませ、野々さん♪」

 こういうと藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)は、トラップたるナラカの蜘蛛糸を設置した。

 そして、自身はブラックコートをまとって気配を殺し、ウサギに気づかれないよう体育倉庫の陰に潜んだ。

 やがて、高務 野々(たかつかさ・のの)が感知したパラミタヴォーパルバニーが体育館に現れた。

「きたわね、いくわよ」

 芦原 郁乃(あはら・いくの)は、マリエルにアイコンタクトをすると、ウサギに向けて氷術を発動した。

「困ったウサギは凍えちゃえぇ〜っ!」

 氷術の直撃を受けたヴォーパルバニーは、動きが鈍る。

 そこへ、十束 千種(とくさ・ちぐさ)が真っ直ぐに突撃してくる。

 前歯も凍ってしまったウサギは、応戦することも叶わず、藤原 優梨子のセットしたトラップに一直線。

 みごとにナラカの蜘蛛糸に引っかかってくれた。

「すわ、ウサギ!」

 藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)が糸をグイと引っ張ると、ウサギは気絶。

 駆けつけた十束 千種(とくさ・ちぐさ)は、難なく捕獲することができた。

「優梨子さんのおかげで簡単に捕まえることができました。ワタシ、突撃しながら思ったんですけど、暴れたらどうしようか心配だったんですよ。ありがとう」

「いーえ」

 迷彩塗装で姿を隠し、ウサギ狩りを見物していた湯島 茜(ゆしま・あかね)も、生徒たちの見事な連係プレーに舌を巻いていた。

 ここまでで捕獲できたのは6匹。残りはあと4匹となった。