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全学連『総蜂起!強制退学実力阻止闘争』

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全学連『総蜂起!強制退学実力阻止闘争』

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 黒豹小隊が選んだ待ち伏せポイントは、ヒラニプラ近郊のひときわ険しい場所だった。そこは峡谷の底を沿うように線路が敷かれていて前後をふさがれれば逃げ場が無く、列車を襲撃するには絶好の場所だ。彼らはここで、獲物を待ち構えることにした。
 黒豹小隊は峡谷の崖の上の、洞窟状の岩陰に身を潜め、作戦会議をしていた。
「こことここ、それからこの2カ所にも爆薬を仕掛けました」
 ロイは簡単な地図の4カ所のバツ印を指さして話を始めた。
「装甲列車が通過した瞬間、同時爆破します」  
「なるほど、こーすれば前も後ろもふさがれて身動きできなくなるわけだ」
 黒子は串刺しにして焼いた川魚をほおばりながら聞いていた。
「そして崖下のハツネたちに言うんです。降伏しなければ崖全体を崩落させて生き埋めにするぞ、と」
「ボクたちそんなにバクダン持ってたっけ?」
「もちろんハッタリです」
「通じるかな。ハツネも相当切れるらしいぞ?」
 ジャンヌが釘を刺す。が、
「キレるの間違いだろ?」
 と、音子が言うと、小隊が皆で笑った。
「それにしてもさ、みんな何で小隊のゲリラ戦参加に賛成したんだ? 勝手にやってるんだからギャラは出ないぞ?」
 そう、もともとは空京大の事件を聞きつけた音子が、突然言い出した話だったのだ。
「私は、思想信条とか正義だとかなんとかかんとか、そういう綺麗事じゃなくて、性格っていうか、要するに私らの後ろに何がいるかってことだよ」
 と、副隊長のジャンヌが言う。
「何かって?」
「つまり、自分たちより弱いもの、だよ。それは守らなくちゃいけない。そのための自分、そのための銃、そのための黒豹小隊。そう思ったから。黒子は?」
「ボク?」
 突然名指しされて、きょとんとする音子。
「前も言ったけど、ここだけは絶対曲げられないところっていうのがあるだろ? ボクにとってのそれは、虐められてる人は見捨てないってコト。えへへ、なんか暑っ苦しいかな? でも、そういうこと。次、とっこーたいちょ」
「私か。私はただ、二束三文のはした金で体制側に頭下げてる連中の面食らったツラを見るのが好きだからですよ。他に理由は……」
「隊長っ!」
 突然、ニャイール・ド・ヴィニョル(にゃいーる・どびぃにょる)が叫んだ。
「観測ポイントのフランソワ・ド・グラス(ふらんそわ・どぐらす)から連絡や。装甲列車、接近中!」
 と、言ったか言わないかのその直後、黒豹小隊の頭上を何十機もの戦闘箒に乗った魔女たちが駆け抜けていった。
「全員静かに! 偵察だ」
 隊員全員が身を伏せる。
 音子が岩陰から顔を出す。
 魔女たちは崖の上のさらに上空をぐるぐると旋回している。
「くそー。これじゃ崖下がのぞけない」
「勘でやるしか無いでしょうね」
「フランソワから際連絡。観測ポイントを列車通過!」
 列車の音がだんだん大きくなってくる。
 音子は耳を澄ませてタイミングを待つ。
 限界の限界まで引き寄せるのだ。
「今だ!」
 合図と共にロイが起爆スイッチを入れる。
 ぽむぼむっとくぐもった爆音がし、がらがらと崖の一部が崩れて落ちていく。
 そして黒豹小隊は突撃の合図と共に飛び出していく。
 眼下には前後を完全に遮断され、最前列車両を土砂に突っ込んで止まった、装甲列車がいた。
「装甲突撃軍に告ぐ! 降伏せよ。さもなくばガケ全体を崩落させる!」
 音子が崖下に向けて叫ぶ。
 すると程なくして、白いハンカチを持った将校が出てきて、両手をあげた。
 小隊全員から喝采が起こる。
 音子はザイルを使って崖下まで降下し、将校の前に立った。
「援軍に行けなくて残念だったね。ハツネはどこ? せっかくだから会わせてよ」
「さー、どこだと思います?」
 メルヴィン少尉がニヤリと笑う。
 まさか。
 そう思った音子は貨車まで駆けていってその下の『ゴーレム』を覆っている帆布をはがした。
 そこにあったのは……ゴーレムだった。正真正銘の。
「どういうことだっ? なぜ笑っているっ?」
「つまり、うちらのボスのほうが一枚上手だったってコトですよ」
「ゴーレム無しで何が出来る?」
「ここにあるのは全部で27機のゴーレム。さて、残りの3機とボスと、あと、急遽徴用した中型飛空艇はどこでしょう?」
「……!?」
 音子は崖の上を見上げると、
「ジャンヌ! そこから何か見えないか!?」
 と、叫んだ。
 崖の上では、さっきまで上空を旋回していた魔女たちが一斉に一方向に向かって飛び去っていくのを皆があっけにとられてみていた。
 飛び去っていく先には、中型飛空艇が、3機のゴーレムをつり下げて飛んでいた。
「音子ーっ! どうやらやられたらしいよ!」
 そう叫び返してきたジャンヌに音子は歯ぎしりをした。
「第4師団きっての精鋭空挺部隊その名も黒豹小隊。お噂はかねがね存じていますよ。でもねえ、空挺作戦はウチらにだってえ出来るってことです」
 あっけらかんと手の内を明かすメルヴィンに、
「3機だけでやるつもりなのか? 27機無駄にして」
「そう。足らなかったら本部にあと60機ある」
「……そっか。うはははっ。まーけた。ボクの負けだ。キミの名は?」
「教導団第3師団所属、メルヴィン少尉」
「同じく第4師団黒豹小隊隊長、黒乃士官候補生」
 そういってふたりは共に敬礼した。