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【新入生歓迎】不良in女子校!?

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part6  戦い暮れて日が暮れて


 更衣室前の戦いは、終結に近づいていた。
 パラ実生たちの多くは百合園生に倒され、あるいは追い払われ、地面に横たわっている。
「ヒルデガルド、フタバスズキリュウを見つけてください! あれを手に入れさえすれば、パラ実の目的は失敗。この戦いも終わります!」
 武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)は自らも戦場にくまなく視線を巡らしながら言った。
「向こうに入れ物らしきものが落ちています。あれではないでしょうか」
 ヒルデガルド・ブリュンヒルデ(ひるでがるど・ぶりゅんひるで)が百合園とは反対方向を指差した。
 二人は息せき切って入れ物に駆け寄る。
 スキンヘッドのパラ実生が空を仰ぐようにして気絶し、お腹に入れ物――洗面器を大事に抱えて寝そべっている。洗面器の中にはフタバスズキリュウが入っていた。
「これですべてが……」
 幸祐は喜々として洗面器を持ち上げた。だが、やけに軽い。よく見れば、フタバスズキリュウの体には縫い目があり、メイドインチャイナのタグまでついている。
「ぬいぐるみ……ですね……本物はいったいどこに……」
 ヒルデガルドは唖然とした。


 その頃、みすみは神楽月 九十九(かぐらづき・つくも)装着型機晶姫 キングドリル(そうちゃくがたきしょうき・きんぐどりる)で掘ったトンネルを歩いていた。トンネルは百合園の五十メートルほど前から始まり、更衣室の下を通ってヴァイシャリー湖東岸の方へ続いている。
 みすみの腕にはちゃんと本物のフタバスズキリュウと洗面器が収まっていた。
「凄いよ、君たち。まさかこんな冴えたやり方で戦闘を回避できるなんて……。迂回はしてないから失格にはならないもんね」
「みんなが百合園の戦力を本気で引きつけてくれていたお陰ですよ。そうでなければ、トンネルを掘る音が百合園の人たちにばれてしまうところでした」
 九十九はキングドリルでトンネルを掘り進めていく。
 既に百合園の地下は通過し、今はヴァイシャリーの街並みの下にいる。
「我らは単に穴を掘っただけだ。穴を使うのを決めたのは貴殿、影武者を仕立てようと考えたのも貴殿。我らはほとんどなにもしておらんよ」
 キングドリルはシャープシューターで地質を見極め、最も効率的に作業できるようドリルの回転数を制御する。
 彼らのあとには、百合園生からは逃亡したと思われているパラ実生たちが何人もついてきていた。


「随分派手にやらかしてくれましたねー」
 両校の衝突が終わり、荒れ放題になった更衣室で、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は軽くため息をついた。
 窓ガラスは割れて散乱しているわ、あちこちに血飛沫は飛んでいるわ、床には荒野の泥がこびりついているわで、とても由緒ある百合園の一室とは思えない。
 詩穂は給仕として放っておけず、掃除を開始する。散らかっているガラクタを拾い集めてゴミ袋に入れ、なぜか妙に干からびた男子・破天が転がっていたのでそれもゴミ袋に入れ、口を縛る。
 そのとき、柄の悪そうなパラ実生たちがどやどやと更衣室に入ってきた。
「うっしゃー、一人しかいねーぜ」「今のうちにもらうもんもらっていくぞ!」「せっかくここまで来たんだしな!」
 火事場泥棒らしい。
 詩穂は家事モードだった頭を、戦闘モードに切り換える。
「苺おぱんちゅディフェンダー、下着泥棒もお掃除させていただきます!」


 パラ実生にとっても百合園生にとっても、長い一日だった。
 日は傾き、大地から夜の涼気が忍び寄ってくる。
 トンネルを通ってヴァイシャリー湖の東岸に到着したパラ実生たちは、岸辺でフタバスズキリュウとの別れを惜しんだ。
 フタバスズキリュウは心細いのか、しきりに鳴いており、なかなか皆から離れようとしない。
「すっかり懐いちゃったね」
 みすみは笑みをこぼした。
「うん、もうなんか野生に見えないぐらい。よしよし、ピーちゃん。これあげるから、あっちに行くんだよ」
 葛葉 明(くずのは・めい)はフタバスズキリュウの頭を撫で、さきイカをくわえさせた。名残惜しいが、フタバスズキリュウを水上に移動させ、促すように向こうへと押しやる。
「自然の中でちゃんと生きていけるかな……?」
「さあ……。それはあの子しだいだよ」
 みすみは唇を結んだ。
 フタバスズキリュウは何度も振り返りながら、沖へと泳いでいく。
 ざぱーっと湖水が割れて、巨大なフタバスズキリュウが姿を現した。親か、もしくは親族だろうか。その偉容に一同は圧倒される。
 大きなフタバスズキリュウは小さなフタバスズキリュウを先導するようにして、薄霧の奥に消えていく。大小二つの軌跡が湖面に筋を引く。
「元気でねー、悪い人間に捕まるなよー」
 二匹の姿が見えなくなるまで、明はずっと手を振り続けていた。

担当マスターより

▼担当マスター

天乃聖樹

▼マスターコメント

こんにちは。シナリオを担当させていただきました、天乃聖樹です。
今回はバトルシナリオだったため、シリアス寄りのリアクションでした。

パラ実に対抗するアクション(野盗、反エリュシオン、百合園陣営)が多く、残念ながらパラ実の生徒はほぼ全滅しました。
しかし、トンネルという素晴らしい打開策があったので、ミッション自体は成功です。
パラ実側で参加されたパラ実生徒の方には、「波羅蜜多実業高等学校一年生」の称号を贈らせていただきます。

百合園陣営によるパラ実撃退は成功。
戦闘に百合園生で参加された方には、「百合園更衣室の守護者」の称号を贈らせていただきます。

なお、両校共に、特殊な活躍をされた方には別の称号が付く場合がございます。


この度は当シナリオに参加いただき、まことにありがとうございました。
機会があれば、またご一緒させていただきたければ幸いです。
ご意見、ご要望がございましたら、気軽にお寄せください。