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【初心者向け】イコンシミュレーター イコン VS 『何か』

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【初心者向け】イコンシミュレーター イコン VS 『何か』

リアクション


第五章 第4試合

イコンチーム

 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)
 アルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)シルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)
 ヴェルデ・グラント(う゛ぇるで・ぐらんと)
 トゥーカァ・ルースラント(とぅーかぁ・るーすらんと)クドラク・ヴォルフ(くどらく・うぉるふ)
 
 巨大化チーム

 朝野 未沙(あさの・みさ)
 グレン・ヴォルテール(ぐれん・う゛ぉるてーる)
 カイル・アーヴァン(かいる・あーばん)
 ノエル・プリエール(のえる・ぷりえーる)

「第4試合は4対4の変則ルールだよ。イコンチームもリーダーは決めてないから自由に戦ってね。では、戦闘スタート!」

「行くぜー!!」
 ルカルカの開始の合図と共に、ヴェルデがPHOENIX_Fソードウイング/Fで飛び出していく。
 S-01に乗り込んだアルクラントはきょろきょろと辺りを見回す。
「飛行形態の高機動性で敵をかく乱し、味方が接近戦に移った際は変形し、援護する。ああ……しかしきっと強烈なGに振り回されそんなことも考えられなく……」
「アル君、シミュレーターだよ?」
「あれ、シミュレーターなのか? 少し……残念だ」
 シルフィアの指摘に残念そうに答えるものの、アルクラントの表情からはわくわくとした心情が窺えた。
「こんなにはしゃいでるアル君、初めて見た気がする……調子に乗って無茶しなければいいけれど……。意外と子供な所あるのよね。ちゃんとサポートしないと」
 そんなアルクラントの姿を見て、シルフィアはこっそりと決意を固めるのだった。
「まあ、相手方がどのような姿で現れるのかも興味深いし、巨大な敵を協力して倒すというのも素敵だ。きちんと訓練としてしっかりと学ばせてもらいたい」
 そう呟いたアルクラントは早速機体をS-01飛行形態に変形させると、味方と合流し敵をかく乱すべく、行動を開始した。
 すぐに巨大な何かを発見し、距離を保ちながら状況を観察する。
 それは未沙がwyvernヤクトの兵装をそのまま身体にした状態で巨大化した姿だった。
 巨大な火球となったグレンがその周囲を飛び回り、壮絶な雰囲気をかもし出している。
「なるほど、このような手段もあるのですな」
 しげしげと観察しながらアルクラントは頷いた。

「このようなふざけた遊びにまで参加なさるとは……グラキエス様の物好きには困ったものだ」
 遠くからその姿を見つけたエルデネストが肩をすくめてみせる。
「10メートルの”何か”が気になって参加してみたが、想像以上に面白いものがいそうだな。このシミュレーションのデータは保存しよう。ツヴァイに普通の戦いとは一風変わったデータを与えられそうだ。キース、エルデネスト、頼んだぞ」
「分かっております。存分にお楽しみいただけるよう、サポートさせて頂きましょう。ただし、結果次第では見返りに多少色を付けてもらいますが」
 エルデネストは薄く微笑む。
「ヴァッサゴー、エンドに栄養を摂ってもらうため、頑張りましょう!」
 彼らの乗るCHP009シュヴァルツ?、通称ツヴァイ。  シミュレーション中、その機体にはロアが本体の姿で機器に接続されていた。
 ロアの狙いはシミュレーションそのものではなく、グラキエスの体調を整えるための海鮮鍋だった。
 グラキエスは遠距離から急所狙いでヤクトに攻撃をしかける。
 しかし、即座に反応したグレンの炎ではじかれてしまう。
 グラキエスに気づいた未沙はミサイルポッドとガトリングガンでけん制しつつ一気に距離を詰める。
 グラキエスが二刀流で応戦する中、エルデネストは偵察でヤクトの弱点を探ろうとする。
 アルクラントは飛び出すと、ヤクトの周りを素早く飛び回り、グレンの動きをけん制した。
 シルフィアはヤクトやグレンの動きを細かく分析しながら、完璧にアルクラントのサポートをこなしていた。

 離れた地点では、ヴェルデがカイルとノエルによる怪獣『ぷりーすと』と戦闘を繰り広げていた。
 ぷりーすとは、第2師団・従軍牧師特務機関『ぷりーすと』所属の聖職者。
 『ブラックハット』の異名を持つ型破りな神父で酒癖、女癖、横暴な性格の持ち主でとても神を信奉しているとは言い難い男。
 己の欲望を行動理念に置く。それが怪獣『ぷりーすと』だ。
 20〜30階建てのビルをもぎ取ると、肩に担いで棍棒状態にし、器用に振り回して大立ち回りを始めた。
 素早い突きや打撃、振り回して風圧で周囲のものを吹き飛ばすなど、周囲を破壊しながら暴れ回る。
「とんだ怪獣だぜ!」
 吐き捨てるように言うヴェルデの機体も、どちらかと言えばそれなりに敵に見える形状をしている。
 だが、そんなことは知ったことではない。
「怪獣か、いい響きじゃないか」
 ぷりーすとは高らかに笑うと助走をつけるためにワザと踵を返して後退する。
 30m程の猛突進から棒高跳びの要領でビルを地面に突き立てて、ジャンプすると、両足を揃えてドロップキックをソードウイング/Fにかました。
 ヴェルデは吹っ飛ばされた勢いで転回すると、ツインレーザーライフルで反撃する。
 すぐに離れると、より戦闘向きとなるソードウイング/Hへと変形し、再び攻撃へと転じる。
 怪獣ぷりーすとが戦線を一時離脱すると、クドラクはトゥーカァの指示でソードウイングへと近づいた。

 トゥーカァはクドラクとともにCHP008プラヴァーで移動していた。
 戦闘というよりは、整備科として今後整備に生かすためにイコン実戦感覚を勉強しようと考えていたのだ。
 そのために、射程外の距離から2箇所で行われている戦闘の様子を観察し、イコン戦の調査および情報収集、分析を行っていた。
 ぷりーすととヴェルデの戦闘を分析すると同時にヴェルデの被弾状況も把握していた。
「この隙に修理しちゃえばいいじゃん。チャンスだしぃ」
「ああ、頼むぜ」
 トゥーカァの提案にヴェルデが頷く。
 アビリティHP回復支援(30)を発動しながら、カタカタと接続したキーボードで操作することによりソフトウェア的に制御系をいじり応急処置を施していく。
「この場所の被弾ならここをこうバイパスにすればいいじゃん」
 一通り処置を終えると、トゥーカァは立ち上がる。
「これで大丈夫だしぃ」
「助かったぜ!」
 ぷりーすとが戻ってきたのを確認すると、トゥーカァは再び後方へと下がる。
「人はここまで力を望むのであるか、どこまでいくのやら……」
 クドラクが呟く。
 機体能力の上がったヴェルデが先制して攻撃を仕掛ける。
 しかしぷりーすともノエルの能力で魔術・火術を体現するものとして、火を吐いたり雷撃での攻撃を繰り出してきた。
 ビルを振り回しながらも途絶えることなく続く雷撃に、ヴェルデはなかなか接近できない状態が続く。
「あのデカ物、上半身と下半身が動きがたまにずれてバランスくずしてるじゃん」
 アビリティ攻撃支援(65%)を発動し状況分析したトゥーカァがヴェルデに助言する。
 ヴェルデは注意深く隙を窺うと、ぷりーすとがバランスを崩した瞬間に重い一撃を放った。
「いよっしゃあ!」
 吹き飛んだぷりーすとに、ヴェルデが興奮した声を上げる。
「ただの授業じゃん、そんなにハシャグ事ぉ? ……次のとこいかなきゃだしぃ」
「トゥーカァ、了解したのだ。左後方のビルの陰に移動を開始するよ」
 むくりと起き上がるぷりーすとの姿を見ながら、クドラクは地点を移動した。

「我に出来る事はまだ少ないのだ。悪く思わないでくれ」
 グラキエスたちが戦線を展開する付近に接近すると、グレンの炎が近くに飛んできたため、不意打ちで射撃を行う。
 機動戦を避けるためにはこの手段しかなかった。

 エルデネストは、神出鬼行によるワープ移動や、心眼、行動追加、リミッター解除をグラキエスのの戦闘スタイルや攻勢・回避行動のタイミングに合わせて随時使用し、戦況を優位に進めていく。
 グレンが未沙の周囲を離れた瞬間、アルクラントが威嚇攻撃を行う。
 被せるようにグラキエスがアビリティで更に機動力と命中率を上げ、一気に懐に飛び込み、二刀流を叩き込む。
 アウェイの瞬間、ノイズ・グレネードを使い、追撃・反撃を妨害した。

「今、攻撃を叩き込んですぐ離れたでしょ、あれ大切なんだよね」
「確かに無傷ですぅ」
「映像で見ても、流れるような動作だった」
 見事な攻撃に、ルカルカがエリザベートに状況を解説していた。
「あ。残り3分だよ!」
 タイムを確認し、声をかける。

 負傷した未沙に駆け寄ると、グレンは命のうねりを炎で演出した再生の炎で回復させていく。 
 そのまま飛び出すと、アルクラントとグラキエスの機体に次々と炎の攻撃をぶつけていく。
「炎による再生と破壊、か……」
 クドラクの言葉を、未沙のミサイルポッドとガトリングガンの音が掻き消してゆく。
 けん制しながらグラキエスに接近すると、近距離のブレスで体勢を崩して、クローでトドメを狙った。

 ふとシミュレーターの情報に目をやったクドラクが呟く。
「いずれ拒絶されるのみ、付き合わずとも我は良いのだ」
 そのままトゥーカァが戦線から離れた瞬間、ルカルカの声が響き渡った。

「タイムアウト! 戦闘終了。双方有効戦力4を維持。判定になるからちょっと待ってね」
 判定は、コリマとルカルカがイコンチーム、エリザベートとダリルが巨大化チームを選択。
「ちょっと異例かな。第4試合、ドロー!」
 ルカルカの宣言に合わせ、シミュレーターが解除された。