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小ババ様の一日 旅立ち編

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小ババ様の一日 旅立ち編

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    ★    ★    ★
 
「こーばーばー、こーばーばー……こば?」
 イコンができるまで、箒に乗って世界樹内の散歩に出た小ババ様でしたが、何かにぶつかりました。
 つんつん。
 五百蔵 東雲(いよろい・しののめ)さんのようです。
「はーい、どいてどいて。あ、小ババ様、邪魔だから」
 突然、リキュカリア・ルノ(りきゅかりあ・るの)さんが走ってきました。どうやら、五百蔵東雲さんを回収していくようです。それにしても、どうしてこんな所で倒れていたのでしょうか。ポンポン空いたのかな?
「よっこいしょっと。じゃあね、小ババ様」
 ひょいと五百蔵東雲さんを担ぎあげると、リキュカリア・ルノさんは走り去って行ってしまいました。
 いったいどこへ持っていったのでしょうか。気になります。後で美味しくいただくのでしょうか?
 小ババ様は後を追いかけましたが、寮枝の所で見失ってしまいました。
 おや、何やら声が聞こえます。ちょっと覗いてみましょう。
「金色の小ババ様ですか?」
 ちょっと身をかがめて相手に身長を合わせながら、笹野 朔夜(ささの・さくや)さんがアンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー)さんと話しています。
「ええ、見た方がいらっしゃいますの。全身金ぴかな小ババ様ですよ」
 アンネリーゼ・イェーガーさんが言いますが、そんな小ババ様は小ババ様としても嫌です。
「金がいると言うことは、まさか銀の小ババ様も……」
「もちろんですわ」
 笹野朔夜さんの冗談に、アンネリーゼ・イェーガーさんがキラキラと本気で目を輝かせます。
 以前蒼空学園で小ババ様が大量に誕生したときに、最後に合体した小ババ様は金ぴかに光っていました。その話が変な形で伝わってしまったのでしょうか。
「ですから、ちゃんと説明してさしあげますわ。小ババ様と契約するためには、小ババ様を契約の泉に突き落とさなければならないのですわ」
「こばっ!」
 なんか、さらりと酷いことを言われた気がします。
「まさか、女神様が……」
「その通りですわ。湖の中から現れた女神様が、金の小ババ様と契約するか銀の小ババ様と契約するか聞いてくるのですわ」
「それで、アンネリーゼさんはどっちを選ぶんですか?」
 笹野朔夜さんが聞きます。
「もちろん……」
 小ババ様は怖い考えになって、最後まで話を聞かずにその場を逃げだしていきました。
「こばっ……こばば」
 また何かにぶつかりました。
 また五百蔵東雲さんです。
 どうして、あちこちで倒れているのでしょう。
「いたいた。せっかく術師が連れ戻してくれたというのに、また勝手にふらふらとでかけるとは。困ったものだ。でかける度に貧血で倒れるくせに。よいしょっと」
 上杉 三郎景虎(うえすぎ・さぶろうかげとら)さんが、またひょいと五百蔵東雲さんを担ぎあげました。五百蔵東雲さんって、そんなにも軽いのでしょうか。
「うーん、少し肉を食わせないとだめだな、これは」
 そう言いながら、上杉三郎景虎さんが足を引きずって五百蔵東雲さんを運んでいきます。おや、足に何かしがみついているようです。ねこさんでしょうか。
「ああ、いたいた。サブちゃんったら、かかえあげなくても……」
 リキュカリア・ルノさんがやってきました。ちょっと不満そうです。その視線が、上杉三郎景虎さんの足許の猫さんにむけられました。素早く猫さんが上杉三郎景虎さんの身体を登って、五百蔵東雲さんの身体の上で丸くなります。
「シロ! あんたどこにいるのよ。しっしっ!」
「よいではないか!」
 リキュカリア・ルノさんが追い払うと、床に落ちた猫さんがンガイ・ウッド(んがい・うっど)さんになりました。
「よくない!」
 リキュカリア・ルノさんに怒られて、ンガイ・ウッドさんがあわてて姿を消しました。まったく、ポータラカ人って不可思議です。
 
    ★    ★    ★
 
 なんだかめまぐるしかったので、さすがに五百蔵東雲さんが倒れてはいないだろう校長室近くへと小ババ様は行ってみました。
「おや、小ババ様? 小ババ様も、大ババ様の所へ行くのですか?」
 ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)さんに聞かれて、小ババ様は首を振りました。大ババ様は忙しいはずなので、なるべく心配をかけないようにしています。なので、今回の大冒険も秘密なのでした。
「こばー」
「はいはい。じゃあ、よろしく伝えておいてあげますね。そうだ、小ババ様にも、一つさしあげましょう」
「こばあ♪」
 小ババ様の顔が思わず満面の笑みを浮かべました。シャンバラ山羊のミルクアイスを一個もらったのです。
「それではまた」
 そう言うと、ザカコ・グーメルさんは校長室へと入っていきました。ここには、ザナドゥへのワープゲートがあるので、ザカコ・グーメルさんは、クリフォトにいる大ババ様のところに行くのでしょう。