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リアクション
第三章 アイナを守れ!!
アイナの護衛を名乗り出た者達は、詩穂の殺気看破、アリカの超感覚、上空からは霜月の櫟で、
アイナの前方を守りながら歩いていた。
「不意を突かれないようにすれば良いだけの話で、例え突かれても対処出来る様に、
備えておけば何の問題も無い。ただそれだけのことだ」
と、アルツールの召喚した不滅兵団で、一行の周りを遠巻きに守っているが、警戒は怠らない。
その時、モンスターを発見した櫟の咆哮が響いた。
「少し先にモンスターが数体いるよ!! こっちに向かってる!!」
さらに、気配を察知した詩穂が叫んだ。
どうやら、不滅兵団の隙を掻い潜ってきた、狡猾なモンスターがいるようだ。
「行こう!! アイナちゃんに近づけさせちゃいけない!!!」
霜月が走り出した。
「向かってくる敵は全て倒すぜ!! 早く終わらせて、ピクニックの続きするんだ!」
ランディも勢いよく走り出した。
―――グルルルルッ……
霜月達を待ち構えるように、パラミタオオカミが数頭群れをなして唸っている。
どうやら、狩りのテリトリーに入ってしまったようだ。
「パラミタオオカミか……全部で七頭」
大吾が盾を構え、一歩前に出た。
「数が多いわね。早めに蹴りをつけないと」
クコが身構える。
途端にパラミタオオカミが、素早い動きで飛びかかってきた。
大吾が、盾でパラミタオオカミの攻撃を防ぐ。
「霞斬り!!」
クコの霞斬りが、パラミタオオカミ全頭を襲う。
パラミタオオカミは、攻撃を受け後ずさった。
「くらえ!! バニッシュ!!」
スレヴィがバニッシュを発動した。強烈な光が、周囲を包む。
パラミタオオカミ達は、目をくらまし後ずさった。
「オオカミさん……落ち着いて!!」
詩穂が眠りの竪琴を奏で、ディーバードと歌いだした。
ヒュプノスの声をのせた幸せの歌が、優しく響く。
歌に合わせて、ディーバードが軽やかに踊る。
パラミタオオカミ達はウトウトし始め、四頭が、眠りに落ちた。
「後三頭か……絶対に護ってみせる! 俺が、俺達が、最終防衛ラインだ!! うぉぉーーー!!」
大吾が山のように立ちはだかり、仲間達を守っている。
パラミタオオカミは隙を伺っている。
「オオカミ達が、動きを止めてるうちにっ!!」
超感覚と流星のアンクレットの効果で、スピードアップしたアリカが、先頭のパラミタオオカミに斬りかかった。
素早い動きで、パラミタオオカミに攻撃が繰り出される。
アリカは予告上カードを投げ、パラミタオオカミの注意を逸した。
「今だっ! 疾風突き!」
急所にヒットし、パラミタオオカミが唸りながら倒れた。
―――グァァッ
仲間を倒された事に、怒り狂った二頭目のパラミタオオカミが飛びかかってきた。
理沙はパンダの剣を構え、パラミタオオカミの攻撃を受け、弾いた。
パラミタオオカミの重さで、理沙は一瞬体勢を崩した。
「大丈夫かっ?! 鳳凰の拳!!」
ランディの攻撃が、パラミタオオカミに炸裂する。
「体勢を立て直すんだ!!」
霜月がパラミタオオカミに斬りかかる。
パラミタオオカミは、一瞬後退したが再び突進して来た。
「また来たわ!! 理沙の方に行ったわよ!!」
クコが叫ぶ。
「大丈夫!! 則天去私!!」
体勢を立て直した理沙の攻撃が、パラミタオオカミにヒットした。
「ギャウン」
二頭目のパラミタオオカミが、群れの後方に引き返し、森の奥に逃げ込んだ。
残りは一頭だ。
「光条兵器!!」
霜月が光条兵器を唱えた。
バニッシュに引き続き、まばゆい光線に当てられたパラミタオオカミが後ずさる。
「もう、お前一頭だけだぞ。諦めてくれよ」
霜月が、狐月をピタっとパラミタオオカミに向ける。
「去らなければ、攻撃するわよ」
クコも構えてパラミタオオカミを睨む。
―――グゥゥゥッ
パラミタオオカミが霜月とクコの横を疾走した。
「逃げたか?!」
スレヴぃが叫ぶ。
「違う!! アイナちゃんの方に向かってる!!!!」
詩穂が悲痛に叫んだ。
「ストルイピン!!」
スレヴィが、あんぱんとメロンパンをアレフティナに向かって投げた。
「わかりました!!」
スレヴィの意図を察したアレフティナが、あんぱんを一口齧ると、パラミタオオカミの前に飛び出した。
「ほ、ほーら!」
アレフティナがあんぱんとメロンパンを振って、美味しそうなポーズをとってみせた。
パラミタオオカミが首をかしげて見ている。
「スナイプ!!」
大吾の発泡した球が、パラミタオオカミの頭部スレスレをかすめる。
手練のなせる威嚇射撃だ。
―――ギュゥゥッ!!
高速の弾丸に怯んだパラミタオオカミは、全力で森の中に逃げ去った。
「ふううーーーー助かりましたぁぁ……」
アレフティナがほっとため息をついた。
尋人達は、アイナの後方を守りながら歩いている。
雷號が雪豹に変身し、木の上から獣の気配を警戒している。
「前の方で、何かあったみたいですね。やっぱり森の獣は怖いですねぇ」
霧神が戦闘の物音に気づき、眉を潜めた。
「ジャタの森が危険なのはわかっていたけど、避けることもできるはず。
できれば戦いたくないな……」
尋人は、チラリと馬上の天音を見た。
何かあれば自分が守る!!と強く思う。
「気を張ってばかりも疲れるだろう? 」
視線を感じた天音が、口を開いた。
木の根元を指差し
「キイチゴにサルナシ、あれはアケビかな? 山ブドウにクルミ……あっちには栗の木があるね」
と穏やかに言った。
「……黒崎」
尋人の張り詰めた緊張が、解かれていく。
「キイチゴか……少し採って行くか」
ブルーズが木の根元にしゃがみ込み、手を伸ばした。
「ぶはっ」
キイチゴの隣にあったキノコの胞子が、ブルーズに噴射された。
「あはは、またですか」
それを見た霧神が、楽しそうに笑った。