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リアクション
結・大団円
ヨシュアの救出を遠目に確認し、一般人に紛れて捜索者の連携を図っていた白竜と羅儀は、彼の前には姿を見せずにその場を離れた。
白竜には、まだやることがある。
この事件を公にしないよう、手を回すことだ。
彼の誘拐は営利目的ではなく、明確に動機のあるものだったらしく、国軍関係者として、再度人質等の目標にさせるわけにはいかなかった。
「ヨシュアも、ついに契約者か」
離れる前に見た、ナージャ達とのやりとりを思い出して、羅儀が言う。
白竜は答えなったが、頷くような気配があった。
羅儀には、強化人間になった時の記憶はない。
ただ、戦地で頭に銃弾を受け、倒れた自分を、当時の上官だった白竜が背負って運んでくれたことだけは、何となく憶えていた。
それがどれほどの距離だったのか、その時の白竜が、どんな思いでいたのか――白竜は何も語らず、全ては想像だが、今自分が強化人間としてここに在り、彼のパートナーとなっていることが、一つの答えなのだろう。
白竜の後に続いて歩きながら、羅儀は、今、彼もその時のことを思い出しているような気が、何となくした。
「どうやら、無事に解決したみたい」
「解決っていうんスか、あれ」
珍しく二人で出歩いていた最中、アレックス・キャッツアイ(あれっくす・きゃっつあい)とサンドラ・キャッツアイ(さんどら・きゃっつあい)の双子は、街で偶然出くわした誘拐事件の、野次馬に混ざっていた。
被害者は無事救出されたが、犯人は取り逃がしたようだ。
その被害者が、パートナーであるリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)の既知の人物だということは、露知らない二人である。
「で、その被害者は、救出される過程で、誰かと契約したんだって」
「へえ。勢いってやつっスかねえ」
サンドラの聞いて来た話に、アレックスはそう答え、サンドラは呆れた目をアレックスに向けた。
「兄貴、思いっきり人のこと言えない」
……そして、自分もまた、言えないのだ。
聖地カルセンティン。そこが二人の出身地である。
聖地の守り人と呼ばれる人物を、アレックスは尊敬し、憧れていた。
彼の力になりたい――そう切に思った時、たまたま、目の前にいたのがリカインだったのである。
(全く、博打もいいところだわ。そんな自覚ないんだろうけど)
アレックスは、半ば強引に押しかけ契約者となり、リカインと共に村を出て行き、突然いなくなったアレックスを追いかけて、サンドラもまた、気がついたらリカインと契約していたという顛末。
似ているところなどまるで無い二人だが、この思い切りの良さは、やはり双子なのかもしれなかった。
(最初は、騙されてるんじゃないかと疑ったものだけど)
疑心暗鬼だったが、今やサンドラも認める程に、アレックスは成長している。
「なあ姉貴、師匠に何かお土産買って行くっス。何が喜んで貰えるっスかね。
はー、オレも早く、師匠くらいに強くなりたいっス。
強く、優しく、美しく、師匠は本当、素晴らしい人っスよ!」
「……あー、そうね」
アレックスを成長させたリカインには、勿論感謝しているが。
会話の中にナチュラルに駄々漏れるリカインへの賛美は、本当、何とかならないかしらと、サンドラは遠くを見つめながら思った。
「……うん、やっぱり契約って、勢いだけでしていいものじゃないよね……」
勿論、人のことは言えないわけだけれど。
「何か言ったっスか?」
「何でもない」
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