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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?

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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?
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 その場にいた生徒たちも、黄鬼もびっくりしてしまうが、リュースはまじめそのものだった。
「オレだって、1日10食食べてもまだ空腹、食べることが趣味、食べることこそ我が個性、我が至上、生き甲斐、ライフワーク! そして、周囲というか、パートナーのグロリアには、いつかパラミタにイートクライシスを起こしそうだと言われる男。オレより食べる奴は、今の内に見切っておかないと、オレが食べる分がなくなってしまうじゃないですか!!」
 リュースは用意してきた大量の食料をどどん! と黄鬼の前に置く。
「みなさんの芋やサンマも頂きます!」
 いきなりそう宣言するとリュースは次から次へ、まるで飲むように食料を口に運んでいく。それを見て、黄鬼もその気迫に押されたのか、サンマや芋、京飴をブラックホールに吸い込むように口に運んでいった。
「どこかのテレビで、こういう番組ありましたよね〜♪ すごいすごい!!」
 炬は既に楽しむモードに入っている。
「よし、食料がなくなるまで、焼いて焼いて焼きまくるぞ!」
「おう!」
 張り切る陣に政敏。
「めんどくせーから、さっさを終わらすぜ」
 壮太もどんどんと食料を焼いていく。レイディスはどこから持ってきたのか、飯盒を用意し、新米を炊きあげる。メイベルやセシリア、フィリッパが次々と米をとぎ、カチェアとリーンは燃料になる落ち葉集めに奔走する。しかし、それらを二人の食欲魔人はまるで吸い込んでいくかのようにして、互いの胃袋へと収めていく。
「食料が、追いつかないぞ!」
 しかし、黄鬼とリュースのフードバトルも佳境を迎えていた。
 黄鬼のボディは二倍にもふくらみ、リュースの両ほほにはものが詰まったまま、二人はにらみ合いを続けていた。さすがの大食漢とは言え、二人は限界を迎えていた。しかし、それでもリュースが焼き芋を口に運んだ時、黄鬼はぐらっと体を傾かせる。
「黄鬼…!!」
 レイディスが慌ててその黄鬼の体を支えると、黄鬼はぜえぜえと言いながら、リュースを手招きする。
「これを…」
 黄鬼は仄かに光る玉をリュースに手渡す。
「『だらすけ丸』!! 黄鬼、お前…」
 「僕より、たくさん、食べる人、はじめて出会ったよ…」
そう言い残すと、黄鬼はかくっと首を落とし、気を失ってしまう。
「黄鬼〜!! わが友よ〜!! あなたの犠牲は無駄にはしない〜!!」
 リュースは口の端にご飯粒をつけたまま、黄鬼の手を握ってそう叫んだ。

 その瞬間、天河神社一帯を覆っていた結界はキラキラと光を放ちながら、消えていった。


   ☆   ☆   ☆
   
   
 結界が消えたところで、食休みをして回復した黄鬼や生徒たちは仲良く天河神社に参拝することにした。
「天河神社はね〜弁天様をお祀りしてるんだよ〜あの弘法大師様がこのまだ先にある大峯山で修行されたときの一番の修行場がここだって言われてるんだ〜七月の例大祭にはすっごくたくさんの人が集まって、能が奉納されたりするんだよ〜」
 黄鬼は焼き芋を境内のなかを案内してまわる。おなかが満腹でご機嫌なようだが少し疲れたらしい。
「ふう〜よっこいしょ」
 なぜか、境内に不自然においてあるベンチに腰を掛けると、ベンチががたん! と黄鬼の体重で傾いてしまう。
 その瞬間、どっと生徒たちの間から笑いが起こる。


「ケイ、それはなんじゃ?」
 カナタはケイが手にしているものに、興味津々、目を向ける。
「以前にお手伝いにいった温泉地のレインにお土産を探そうと思ってさ。天河のお守りだから、きっと霊験もあらたかだぜ。どうしているかなあ〜レイン。これ、渡しにいってあげたいな」
「ケイ、それは安産のお守りではないか? レイン殿とやらはおめでたなのか?」
「え? 安産のお守り!? うそ! 間違えた!!」

「天河神社はまだまだ謎が多いわ! UFOまで出てきちゃうし。ねえ、黄鬼さん! 天河神社の謎を教えて!」
筐子が黄鬼にせまると、その師匠である一瞬 防師が黄鬼の体をマッサージしながら、その体をまさぐっている。
 「まてまて、筐子。拙者が先じゃ。黄鬼殿、鬼退治と言えば、『打ち出の小槌』が付き物ですじゃ。『打出の小槌』を手に入れ、幸福な家庭を築くのが拙者の夢…そのような小槌、おもちでないですかな?」
「うーん、僕もよく知らないんだよねえ〜そんな小槌があったら、どんどんお菓子もなんでも出せちゃうんだけどねえ〜」




【第3章 燃える闘魂! 金剛峯寺の戦い!?】

「どうやら、吉野山と天河神社の結界は消え去ったようね…これで赤鬼を捕らえることが出来れば、レイディスと私の愛の夜がやってくるわけね!!」
 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は萌えて、いや、燃えていた。どうしてレイディスが好きなら、天河神社にいかなかったのであろうか。不思議である。
 とにもかくにも祥子は次から次へと精霊たちをタッチしていく。
「私とレイディスの夜をジャマする奴はゆるさーん!!」
 祥子の迫力に、徒党を組んで大量襲来してくる精霊たちであったが女王の加護を使い、感知してしまう祥子の前にはなすすべもなかった。

 赤鬼は敢えて、高野山に集いし生徒たちに「ワシは金剛峯寺におるからな! うぃーっす! 追いかけてくるが良い、うぃーっす!」と宣言していたのだ。


 ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)も精霊たちをタッチしながら、赤鬼を追いかけていた。どうも天河神社の精霊よりも高野山の精霊や天狗たちの方が、真面目に鬼ごっこをしている。それぞれの鬼の性格によるものだろうか。
「敵を目の前にして逃げるとはそれでもリーダーなのか!」
 ウィングは挑発するつもりで、赤鬼に罵声を浴びせるが、赤鬼はそのままウィングを一瞥しただけで、スピードを上げて木から木へと飛び移ってしまう。
「挑発には乗らないようですね…それでは速攻をかけます!」
 そのまま、ウィングもスピードをあげる。すると目の前で、赤鬼は二つに分裂してしまったのだ。
「…どっちが影分身だ!?」
 一瞬迷ったウィングを取り残して、二体の赤鬼はスピードを上げる。
「ウィング、右の奴を追ってくれ! 俺たちは左の奴をおう!」
 そこに赤城 仁(あかぎ・じん)が現れた。
「わかりました!」
 仁がサイドから赤鬼を追い詰めると、赤鬼を密かにおいかけていたナタリー・クレメント(なたりー・くれめんと)が急に赤鬼の正面の前に現れる。黒髪が森の中にぱあっと舞う。
「のがしませんわよ! ジャージを持ってきていますから、どのような動きも問題ありません!」
 と、バーストダッシュで回り込んだのだ。
「うわ!」
 突然のことに驚いた赤鬼が、ナタリーを避けようと横にずれたところを、
「タッチ!」
 仁が思い切りタックルをカマしてしまう。しかし、その瞬間、赤鬼はどろんっと音を立てて消えてしまった。
「影分身か…道理で冷静なワケだ」

 一方、「爆炎波」で火術を調整しながら、森に燃え移らないようにと気を遣いつつ、速攻をかけたウィングは、赤鬼にタッチしてみると、こちらも影分身でボン! と音を立てて消えてしまった。
「影分身は、分裂出来るってわけですか…これは困りましたね。愉快な人たちだとは思っていましたが、ここまで鬼ごっこに必死になるとは…赤鬼さんらしい」
 地元の諸事情には詳しいらしく、ウィングはくすっと笑った。
 
 

 光臣 翔一朗(みつおみ・しょういちろう)は、精霊たちをパンチしかねる勢いでタッチしていた。アッパー掌打や顔面への張り手、空手チョップなどを使い、次々に精霊たちは影も形もなくなっていく。
「人間なめるじゃねえきに! 精霊風情が!」
 翔一朗は次から次へ、精霊をたたき落としていく。
「それを言うなら、おぬしも『人間風情が』と言うことになってしまうぞ」
 そこへ、錫杖を持ち、鬼を従え頭巾を被った人物が翔一朗を後ろから、かる〜く一つ歯下駄で蹴り飛ばす。
「精霊は自然界のたまものじゃ! おぬしよりも何千年も長く生きておる。敬いなさい。それにいくら禁止されていないからといっても、暴力はいかがなものかなあ?」
 錫杖を振るうと、翔一朗のみぞおちをとん! と突く。
「あ、あんた、ダレじゃ…?」
 その人物の強さに、翔一朗は腹を抱えてうずくまりながら、薄れいく意識のなかでその人物の顔を必死に見極めようとした。
「ん? わしはここにむか〜しから棲んでおる、いっかいの行者じゃよ。まあ、おぬしはしらんかもしれんがな…」
 そこで翔一朗の意識はぷつん、と途切れてしまう。
「おお、少し強くつつきすぎたらしい。鬼共、こやつを宿に運んでやれ」
「承知しました。行者さま」


 甲斐 英虎(かい・ひでとら)甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)は、凍らせた子を溶かしに来る天狗や精霊たちをタッチし、外堀を埋めることを担当していた。
「天狗はさ、こう鼻が長くて高下駄履いてて、芭蕉扇みたいなの持ってるんだよねー? 多分。外見は判りやすいハズ。でも精霊ってどんな姿してるんだろ? 見たら分かるかなー」
 首を傾げる元気少年、英虎にユキノはニコニコ笑いながら
「きっと小さくてふわふわしているんだと思います」
「あ、ユキノ。綺麗だけど落ち葉は滑るかも知れないから足元注意してね」
「はい。ねえ、トラ、『こおりおに』ってなんですか? 氷術でみんなかっちかちにしちゃうんですか?」
 興味津々のユキノに、くすっと英虎は笑うと
「違うよ。タッチされたら動けないだけ。だから『こおりおに』。でも、この結界の中じゃ、実際に凍っちゃうみたいだねー。そうそう、鬼ごっこが終わったら、押し葉にする綺麗な紅葉の葉っぱ一緒に探そうね−。あ、あれ、あの子、精霊じゃない?髪に花を差しているよ。ほら、ユキノ、タッチしておいで」
「わあ、可愛い〜タッチしますよ〜」
 ほのぼのな二人である。