校長室
憧れあの子のお菓子争奪戦!
リアクション公開中!
「「トリック・オア・トリート!」」 黒猫の格好をしたテレサ・ツリーベル(てれさ・つりーべる)と、コアラの格好をしたミア・ティンクル(みあ・てぃんくる)は、パートナーの優斗へとそう声をかけた。 「テレサにミアか。ごめん、お菓子は愛美さんと交換したからありませんよ」 優斗は手を上げてひらひらと振りながら、何も持っていないことをアピールする。 「ひどいですわ!!」 声をあげ、テレサは思わず優斗の頬を引っかいた。 「うわっ!! ご、ごめんってばっ! 次の機会には用意しますから!!」 引っかかれた頬に手を添えながらも、テレサの頭を撫でて、落ち着かせる。 「うぅ……それなら、許してあげますわ……」 頭を撫でられれば、テレサは何も言えなくなってしまう。 「うん、本当にごめんね。許してくれてありがとう……」 「だっ、だって、ねっ、猫ですから……ニャー」 許してくれたことを笑んで嬉しがる優斗に、テレサは咄嗟にそう告げる。 「……それで、ミアは何で抱きついてくるんです?」 気付けば、優斗の左腕にミアが抱きついていて、動かせない状態になっていた。 「だって、僕、コアラだもん☆」 「抱きついても……用意したお菓子は交換してしまいましたので、何も出せません」 そう告げてもミアが離れる様子はない。 「だって、僕、優斗お兄ちゃんが大好きだもん」 ミアは抱きついたまま、優斗を見上げてそう口にした。 それを見ていたテレサが右腕側に、猫が甘えるように擦り寄る。 「ミア?」 「こっ、これは猫になりきらないといけないからであって、普段からこんなことをしたいとか考えているわけではないですよ。本当ですよ? ニャー」 無意識の行動だったのか、名前を呼ばれてミアはガバッと離れながら告げるのであった。 * フランケンシュタインの格好をした風祭 隼人(かざまつり・はやと)は、誰かから逃げるように、学園内を彷徨っていた。 彼がお菓子を交換したい相手は、争奪戦には参加していないようなので、あとはただ只管、身を隠すのみであった。 そんな隼人を探しているのは、彼のパートナーであるアイナ・クラリアス(あいな・くらりあす)だ。 優斗のお菓子を貰おうと、彼の元を訪れると、お菓子は他の人と交換した後だと言うし、彼のパートナー2人が両腕にぶら下がるかのように抱きついていた。 負けないつもりで彼の元を訪れたというのに、女子2人に気圧されて、果敢なアタックは出来なかったのだ。 その腹いせ……ではないけれど、自分が作ったお菓子は、自分のパートナーである隼人に食べてもらおうと、彼を探しているのだが、なかなか見つからない。 一般教室棟、特別教室棟、食堂、カフェに講堂などなど。 学園中を探しているのに隼人の姿は見当たらない。 何処で見かけたという話を聞いても、辿り着いたときにはその姿はないのだ。 避けられているのではないかと、感じ始めたとき、隼人を見つけることが出来た。 「見つけたわ!」 「わあっ!?」 アイナの言葉に、隼人は驚いた。 可愛い子と交換していたお菓子を思わず取り落としそうになるほど、だ。 「お菓子、貰ってたのね……」 隼人が手にしたお菓子を見て、アイナは呟く。 「まあな」 「ほっ、本当は優斗さんに貰って欲しいけど、私の下手な料理で優斗さんに悪印象をもたれるのは嫌だし、パートナーが全くお菓子を得られない結果になったら私にとっても恥だから……そう、パートナーの義理として仕方なくあげようと思って持って来たのに……!」 わあ……と泣き出さんばかりの勢いでアイナがそう告げる。 「う……」 何事かと向けられる視線に隼人は思わずたじろいだ。 もし見つからなかったら、後でキレられて地獄を見ていただろう。 けれど、ここで受け取っても地獄を見るのは目に見えていたのだが、泣かれては困る。 「わ、分かった……アイナの分も受け取るよ、ありがとう」 そう告げて、アイナが差し出した手作りチョコレート――っぽいもの、を受け取った。 「味わって食べてね?」 泣き出しそうになっていたのは何処の誰やら。 けろりとした様子で、アイナは隼人へとそう告げるのであった。 * 魔女服を着て魔女に仮装したリリィ・マグダレン(りりぃ・まぐだれん)。もともと魔法使いである彼女が着ているのだ、何だか威圧感を感じてしまう。 彼女の数歩先には、そわそわして落ち着きのない、パートナー、ジョヴァンニイ・ロード(じょばんにい・ろーど)の姿があった。 そんな彼に、リリィは背後から近付いて、彼の身体へと腕を回し、絡みつくように抱きついた。 「わあっ!?」 驚き、慌てたジョヴァンニイは、手にしていたクッキーを落としてしまう。 誰かに渡すつもりであったのだろうか、手作りらしいクッキーは不恰好ながら、お菓子用の可愛らしい小袋に入れられていた。 「んー?」 リリィはそれを拾い上げ、小袋を傾けて、中のクッキーを流し込むように口に含んだ。 少し固めのそれを咀嚼して飲み込むと、開口一番――。 「……まずいわね」 そう告げる。 あまりのショックに、ジョヴァンニイはくず折れた。 「魔法使いなんだから手先は器用でなくちゃいけなくてよ」 言いながら、リリィはジョヴァンニイの口へと自分が用意したクッキーを押し込む。 呆然としたまま、ジョヴァンニイはそれを噛み、嚥下する。 そのままぼぅっとリリィを見ていると、何故だか、彼女がキラキラと輝いて見え始めた。 「何でもお申し付けください!!」 立ち上がり、きりっとした様子でジョヴァンニイは、リリィへと告げる。 リリィは彼へと食べさせたクッキーに惚れ薬を仕込んでいたのだ。 「じゃあ、早速、買い物するから重たい荷物、運んでくれる?」 「もちろん!」 リリィの言うがままに動くジョヴァンニイ。 気付けば、周りの皆もその様子に、くすくすと影で笑っているようである。 薬の効果が切れると、周りの皆に笑われていて、ジョヴァンニイは何事かと己の姿を確認した。 別段変わった格好をしているわけではないのだが、笑われている。 目の前のリリィの口元もどうやら笑んでいるように思えて。 (ああ、またか――) 勘のいいジョヴァンニイはまた、リリィに弄られたのだと気付いた。 「……トリックオアトリック……」 リリィは誰に言うでもなく、ぽつと呟くのであった。 終。
▼担当マスター
朝緋あきら
▼マスターコメント
朝緋あきらです。 参加、ありがとうございました! 予想以上に、愛美やマリエルのお菓子を求めてくれる人が居て、嬉しい反面、どんな展開にしたものか、悩みに悩みました。 また、今回は、誰とでも……と他のCに絡んでいくという人も多く、そういった方々は絡ませやすかったです。 楽しんでいただけたなら幸いです。 それでは、また別のお話でお会いしましょう。