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【十二の星の華】シャンバラを守護する者

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者
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第8章


 ホイップの元にはやっと自分の作業が終わったエルが到着していた。
(好きな女も守れないようじゃ男じゃない。死ぬ気で守れ、だ)
 その様子を見て、レンはニヤニヤしていた。
 他のデバガメメンバーも勿論、2人が一緒にいるのを察知して見ていた。
 新しく覗きに来ている人も何人かいるようだ。
「ホイップちゃん、一緒に探さない?」
「う、うん」
 頷いた次の瞬間、ホイップの顔色が明らかに変わった。
 青ざめ、血の気が引いていくのが解る。
「ホイップちゃん……?」
 何事かとエルは声を掛けたが、ホイップの耳には入っていない。
 ホイップはそのまま走りだしてしまった。
「ホイップちゃん!?」
 そのただ事ではない様子にエルは勿論、他の人達も皆付いていく。
 走って、走って、やっと辿り着いたのは秋にホイップが確認していた杖の場所だった。
 あの時と違うのは、杖が無くなっていた事だ。
 ホイップの表情は一段と青くなった。
 すると、ホイップが背負っていた黎のリュックがポコポコ動きだし、中から何かが出てきた。
「ふぅ〜、やっと落ち着いたのです……ん? 敵が襲来したみたいではないのですが……なんなのです?」
 なんと中から黎によく似たゆる族あい じゃわ(あい・じゃわ)が出てきたのだ。
「ホイップ殿、顔色が良くないのです」
 ホイップはかなりびっくりしていたが、それどころではない。
 じゃわは青くなっているホイップの頭の上へと登り、よしよしと頭をなでる。
「ありがとう……ちょっと落ち着いたよ」
 ホイップは目を少し閉じ、じゃわを頬ずりした。
 次に目を開けると、そこには決意の色が現れていた。
「皆に聞いて欲しい話しがあるの。時間がないから簡単になってしまうんだけど」
 ホイップのその言葉にその場にいた全員が頷く。
「……ホイップちゃん、良いんですか?」
 グランがそう尋ねるとホイップは首を縦に振った。
「実はね……私は十二星華の1人、牡牛座のホイップ・アルデバランです。正体を隠していたのは……ごめんなさい。そして、ここにあった杖は私の光条兵器、星杖『シナモンスティック』……そして、私の杖は封印の為にここにあったの。約5000年前の巨大台風……それが私の杖で封印していたモノ」
 ここまで一気に言うと、ホイップは息を吸い込み、長めに息を吐いた。
「ラズ、ソレ大ババ様に聞イタよ。昔、昔、この地ニ来タ台風は大地を削リ、幾ツカの都市や村ヲ消滅させたッテ」
 ラズが静かに言う。
「うん、そう……私が封印してる台風はこの辺り一帯を消してしまったの。ジャタの森の南側って抉(えぐ)れてるでしょ? あれは、その時に無くなってしまったから……」
 ホイップの言葉が付け足されると、今度は皆が青ざめる番だった。
「そして、引き抜かれてしまった為に、封印は長くは持たない。だから、皆にお願いしたいことがあるの」
「うん! 何?」
 エルが一番早くに返事をし、後に皆が続いた。
「杖を取り戻して欲しいの!」
「勿論! 任せて!」
 やはりエルが一番に答え、皆が同意を示した。
「ありがとう……」
 ホイップは少し泣きながら頭を下げた。
 頭に乗っているじゃわが落ちそうになる。
「少しでも封印を長続きさせる為に私は……石化するけど……うん、皆を信じてる」
 ホイップはそう言うと、エルの側まで歩いて行き、ぎゅっと抱きしめて離れた。
「信じてる……ね?」
 ホイップは泣きそうな表情で笑うと杖のあった場所まで戻り、じゃわを優しく下ろした。
 エルは初めて見るその表情にとまどい、うまく返すことが出来ない。
 ふところから出した小さな青い瓶を一気に飲み干すとホイップはそのまま石化してしまった。
「…………ホイップちゃん」
 グランは石化したホイップへと近寄り、皆へと向いた。
「ホイップちゃんのこの石化は特別なものなんです。……時間がかかり過ぎると石化が解けても……心が壊れてしまう。だから一刻も早く杖を取り戻して下さい!」
 グランが必死に頭を下げる。
 ここにきて口を開いたのは黎明だ。
「怪しい奴でしたから、ゆっくりと話しを聞こうとここまで追いかけて来てたんですよねぇ。ティセラ様からの鞭がどうとかティセラ様のヒールがどうとか、ちょっとうざかったんで黙らせようとしたら煙幕使って逃げて行きましたから……でも、バイクに乗ってたんでタイヤ痕は残ってますよ?」
 黎明の言葉通りタイヤの痕がくっきりと地面に残されている。
 皆はゆっくりとその方向へと目を向けた。


続く

担当マスターより

▼担当マスター

えりか

▼マスターコメント

 リアクション公開が遅れてしまい、誠に申し訳ありませんでした。
 体調を崩してのことではあったのですが、言い訳にすぎません。
 本当にお待たせして、すみませんでした。


 シナリオにご参加くださり有難うございました。
 最後にある通り、続きます。

 今回はホイップを守りたいといった方が結構多かったように思います。
 嬉しかったです。
 氷術消火の方法は、びっくりしました!
 杖まで行く人は流石にいませんでしたねぇ。
 デバガメさんもどんどん人数が増えてますね。

 次もご参加くださると嬉しいです。
 では、では!

 リアクションの裏話は『蒼い予告編』を検索してみてくださいませ。
 今回の裏話は後日になりそうですが……。