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恋の糸を紡ごう

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恋の糸を紡ごう

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「相変わらずの格好ですね、見ている人が寒くなりますよ。さすがにこの寒い時期、その格好には対抗できません」
 もらった帽子を、刀真は軽く放り投げた。
 受け取るのは、ライバルの仮面だ。
「はい、それで多少は暖かくなるでしょう」
 何か仮面が言っているが、聞こえないふり聞こえないふり……振り返ると月夜の姿が。
「刀真、帽子は?」
「帽子ですか? さっき変熊に会ったんであげましたよ……あれ? もしかして月夜欲しかったんですか。あー、ごめんなさい。その帽子は報酬の物ですね? 良く似合ってますよ可愛いです」
「ん、ありがとう」
 どうやら月夜は、刀真からのプレゼントを期待していたらしい。
 ぷ〜っと膨れつつも、自分がもらっていた帽子をかぶる月夜。
 刀真に褒められて、悔しくも嬉しくなるのであった。

(マフラーを編むための毛糸が欲しくて来たんですが……)
「帽子を作るのもいいかもしれませんね」
 ふと空を見上げて、火藍は思う。
 皆が受け取っている毛糸の量では、さすがにマフラーを編むことはできないからだ。
「お前マフラー編みたいって言ってただろ? 俺の毛糸もやるよ」
 そのとき、ファーナのもとを離れた侘助が火藍の前で立ち止まる。
 差し出された手には、帽子用の毛糸玉。
「おまえ……ありがとう」
「ん、どういたしまして」

「え、報酬ですか。そんな、困っている人を助けてその人たちが笑顔になるのならそれに勝る報酬はありませんよ」
 欲しい品物を訊ねられるも、涼介は首を横に振って遠慮する。
 自身はもちろん、生徒達や『クロシェ』の人々の今の表情が、自分にとって最高の宝物だ。
「おにいちゃん! おにいちゃんには私がミトンを作ってあげるんだよ!」
 そんな、涼介の言葉と態度に感動したクレア。
 ミトン用の毛糸を受け取ると、力強く宣言した。

「ありがとうございます……でも、男が編み物をするのってどうなんだろう?」
(誰に贈るのか聞かれると困るし、編み物は本を見ながら自力で何とかするしかないか)
 性別をちょっと気にしつつ、帽子用の毛糸を受け取る北都。
 編み物教室も開かれているが、いろんな理由から参加するわけにもいかず。
(初めて会ったとき、空から舞い降りた天使かと思ったんだよねぇ。まあ、実際に『守護天使』だったわけだけど。蒼い髪が空の色なら、白い雲が似合うかなって……本人の前では絶対に言わないけどね!)
 本当はマフラーを編みたかったのだが、もらえる毛糸は帽子用かミトン用の量しかなかった。
 そのため今回は帽子に挑戦してみて、機会があればマフラーを編んでみようと思う北都なのであった。

「銃を扱う樹ちゃんのために、手を温めるミトンをプレゼントするんだ。まあ、執事になってからいろいろ覚えたから、編むことはできるでしょ」
「ありがとうございます。いただいた毛糸は、ベレー帽を編んで林田様に差し上げますです。思いっきり、大好きな気持ちを込めて、丁寧に編み上げますよ」
 章とジーナは、それぞれもらった毛糸を大切そうに抱き締めた。
 しかし。
(樹ちゃんも毛糸を……もしや、カラクリ娘へのプレゼントを編むのでは!)
(林田様はもしや、あんころ餅のために編むんでしょうか!!)
 心中穏やかでない2人は、互いに同じようなことを考えて睨み合う。
「ねーたん、じにゃとあきにあげうの? こたがあむのは、こたのぼーし。じにゃがあか、あきはあお、こたはぴんくのぼーし。こたのには、ぽんぽんつけうのー」
「こたちゃん?」
「コタ君、今なんと?」
「ねーたんはじにゃとあきにあげうの」
「っとばれちゃしょうがねぇ……まあ、なんだ。遅ればせながら『お歳暮』ってヤツだ」
 コタローが喋ってしまった事実……もらった毛糸で、樹は帽子を作るつもりなのだ。
 もちろんこれでは1人分しかないので、毛糸をもう1つ購入しなければならないのだが。
「ジーナも洪庵も何かにつけて無茶なことをするから、こちらは気が休まらないのだよ。しかしまあ、私のことを思ってしてくれている所が多いから……せめて、感謝の気持ちは伝えないとな」
 恥ずかしそうに頬をかく樹に、章とジーナ、コタローも雰囲気で、抱き付いた。

「スカサハ! 『帽子用毛糸』が欲しいであります! 帽子を作るわけでありませんが、何かしら役に立つかもしれないのであります!」
 何に使うのだろう……皆が思うなか、スカサハは帽子用の毛糸玉を受け取った。
 毛糸玉を抱いたまま、アヤメの方へと駆けていくスカサハ。
 胸に飛び込むと、素敵にごろにゃん状態で甘え始める。
「ふむ、私も『帽子用毛糸』にでもしましょうかな。帽子ではなく、可愛い子への愛の文字を縫うための足しにしようかと」
 スカサハが毛糸玉をもらったのを見て、里也も同じものをもらい受けた。
 そうしてスカサハの真似をして走り込むもっ!
「制裁っ!」
 ブラッドクロスの攻撃によって、あえなく失敗に終わるのであった。
「報酬はいらない。もともと縫い物やら家庭的なことは苦手だしな」
 ファーナからの申し出を断るアヤメは、まだスカサハを撫で撫でしている。
 アヤメにとっては、新しい友達ができたことが何よりの報酬かも知れない。
「はい、これ。お店のと比べると見劣りするけど……帽子作ったからかぶってみてね」
「え、ボクに!? ありがとう〜」
 里也をとっちめているブラッドクロスへ、凪沙が差し出した帽子。
 さっと立ち上がってほこりを払うと、ブラッドクロスは丁寧にお礼を言って受け取る。
「ボクは朔ッチにプレゼントする帽子を作るつもりなんだ。だからまた今度、何かお返しをするね!」
 その後もしばらく、凪沙とブラッドクロスは楽しそうにお喋りをしていた。
「鬼崎さん、ちょっと手出してもらっていいか? 小指と小指結んで、と……じゃん! 『運命の赤い糸』! はは、やっぱ結構恥ずかしいなこれ」
「あうあう」
 器用に結んだ糸を、朔の前で伸ばしてみせる紗月。
 紗月以上に恥ずかしさの増した朔は、何と言っていいのやら分からずに真っ赤になりながら口ごもってしまう。
(確かに朔ッチには……普通の女の子としての人生を歩んでほしいから、紗月くんの存在はすっごくありがたいよ? でも、それって……ボクじゃ、朔ッチを本当の意味で護れていないってことかもって考えちゃうんだよ。案外、周りにボクと同じ複雑な想いを抱いている子がいるんじゃないかな?)
 赤くなりつつも喜んでいる朔へ、やっぱり複雑な気持ちを抱かずにはいられないブラッドクロス。
 けれども大切な朔のことを想えばこそ、決して口にはしないと心に決めるのであった。
「あとこれ、できは悪いかもしんないけど鬼崎さんにプレゼント」
 編み上げたミトンを、紗月は朔の両手へとはめた。
 朔も、紗月の頭へ手編みの帽子を。
「俺に? ありがとな、すごい嬉しい!」
 プレゼントを渡し合った朔と紗月は、永遠の愛を赤い糸へと誓い合った。

「バレンタインのチョコ作りに使えるかな?」
 『クロシェ』のおばあさんからミトンを受け取りながら、ミルディアは微笑む。
 間近に迫ったバレンタイン、渡す側にも受け取る側にも、素敵なイベントとなるだろう。
「私は、報酬は遠慮いたします。皆様、お疲れ様でした。今後ともよろしくお願いいたします」
 真奈は、ともに依頼を成功させたすべての人達へ向かって丁寧に頭を下げる。
 またどこかで皆と出会えることを期待して、店の扉を開いた。
「俺にとっては、修業に臨めることが最大の報酬だ。それに自分への報酬とするよりも、それを商品として店に陳列したほうが『クロシェ』や『クロシェ』の客のためになるだろう」
 報酬をもらってしまうのはおこがましいと考え、辞退する太郎。
 何よりも修行を重んじ、求めるのは『パラミタ最強』の称号のみと、立ち去っていく。
「やった〜毛糸もらえたわ〜これでマフラー編めるわよぉ〜」
「ちょっと足りないと思うんだけど……」
「きゃ〜〜〜どうしよ〜〜〜〜」
 太郎の背後では、どりーむの悲鳴めいた声が上がっていた。
 2人がもらった毛糸を合わせても、マフラーを編むにはとても足りない。
 そんなこんなでどりーむとふぇいとも、今回はマフラーを諦めてミトンを作ることにしたのである。

「さて、オレら3人ともミトンをもらったわけだが。ほれリーズ、真奈」
 青紫色のミトンをもらった陣……それぞれリーズには右手、真奈には左手を渡した。
「んで、オレにお前らの片方をくれ」
「んに? 良いけど……はい、陣くん」
「はぁ……構いませんけど」
 逆に陣は、右手にリーズのシルバー、左手に真奈のロイヤルブルーのミトンをはめて。
「ま、こういう風にしたらさ、オレら3人とも繋がってるなぁって思えるような気がしたから、さ」
「に、にはは……何か今日の陣くん珍しくキザったらしいね。どうかしたの?」
「ご主人様……何か思うところでもありましたか?」
「どうもしねぇよ! さぁ撤収撤収〜!」
「あわわっ? いきなり歩かないでよぉ!」
(でも、ボクもそう思うよ……陣くん)
「きゃっ?」
(でも、そう思ってくれた事は……とても嬉しいです、ご主人様)
 リーズは陣の右手と、真奈は陣の左手と、満面の笑みで手を繋いで帰っていった。

「……と言うわけで、みんな笑顔で帰っていきましたよ。クロシェさんも、バレンタインを無事迎えられるそうです。ご家族の怪我も早く治ると良いですね」
 依頼の成功を伝えるために、アリアは『ミスド』ツァンダ支店を訪れていた。
「それとジェシカおばさん、これを……気になる人はいるけど、まだ大切な人にはなっていませんので」
 取り出したのは、報酬として受け取ったミトンだ。
 感謝をこめて、アリアはジェシカにプレゼントとして贈ったのだった。

担当マスターより

▼担当マスター

浅倉紀音

▼マスターコメント

お待たせいたしました、リアクションを公開させていただきます。
始めての恋愛モノでしたが、甘い世界を描写できているか心配です。
皆様のアクションからは、大切なパートナーや恋人などを想う気持ちが伝わってきました。
楽しんでいただければ幸いです、本当にありがとうございました。