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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(序章)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(序章)

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第9章 夢の中の女王器

「どんな風に秘匿され存在し続けたのか……その謎が解かれる時、観察者として傍らに在りたい。というのは我儘かい?」
 小さく笑いながらぽつり。
 黒崎 天音(くろさき・あまね)
「天音……あまり我の心臓に悪い事はしてくれるな。例えお前が誰の傍にいようが、守るつもりではいるがな」
 ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)


9-01 夢の中へ

 ハヴジァにある邸宅。
 パルボンが縁のハヴジァ貴族に借りた大仰な屋敷だ。
 天音らは、その上階の大部屋を与えられていた。
「女王器か」
 まさか天音の予想した通りに、本当にこのヒラニプラ南部の地にそれがあるとは。しかも、おそらくそう遠くはない場所に。
 収集した情報を吟味しつつ、女王器に関わろうとする者がいる筈……と思うのだが、もしかしたら、教導団の学生らにはそれをはっきりと知る者はまだないのかも知れない。パルボンは総大将の自分には耳に入っていること、と言った。しかし、学生らは? おそらくこういったことはそう大々的には知らされないのだろうし(知らずにそれを集めさせるということは考えられようとも)、もしパルボンが独自に掴んでいる情報であるなら、あの欲深な男が、それを他人の耳に入れることは尚更、ないだろう。そしてパルボンは、教導団を離れた。
 それに……
 天音はパルボンのことを少し考える。
 パルボンは、しかし天音にはそのことを打ち明けている。
 天音は……パルボンの気に入ったようで、パルボンは天音に体の関係を求めてきている。だからだろうか。
 簡単に身体の関係は持たないが、天音はパルボンに魅力を感じていないでもなかった。
 瞳に浮かぶ欲や好色の中に垣間見える知の光。ぞくぞくする。……そう、天音は思っていたのだ。今は……少々猫をかぶっているつもりだが。天音はすでにこの年齢で、この辺りの駆け引きには長じているところがあった。だが、パルボン、あの男も狡猾である。
「ところで、夢の中の麒麟の居場所とはどういう事なのだろうな」
 ブルーズが尋ねる。
「麒麟と夢か……麒麟の夢は吉夢と言われたり、和装の柄だと麒麟には夢を運ぶという意味があるそうだよ」
「ふむ」
「言霊と駄洒落か。麒麟と騎凛……麒麟の女王器の機能自体が不明だし、言霊に意味を見出すなら……。
 騎凛教官を探すのも良いかも知れないね」
 とりあえずはあの男をもう少し転がしてみるとしようか。
 その晩も、パルボンは天音の室を訪れた。
「天音。女王器に最も近いのは、わしらじゃぁ。
 ふほほ。教導団も黒羊軍も、好きなだけ相争うがよい。わしらは、愚鈍な亡者どもの群れる波の上を、優雅な船で軽やかに渡らせてもらうとするかの。ほっほほ。
 わしは争いは好まぬ」
 天音は、ご冗談を、といった目で見つめた。パルボンは騎凛の辺境討伐隊時代から前線で戦ってきた部将でもあるのだ。
「争うのは下賎どもにさせておけばよい。わしには勝利だけがあればよい。
 そしてわしは美しいものが好きである。ほほ」
「パルボン殿」天音は、相手の唇を指で撫でながら、微笑を浮かべて言う。「ところで、(教導団が)黒羊郷に向かった理由や、騎凛教官についてご存知のことをまだ……」
「……。ほほ、天音よ、お前はなかなかたまらんのう、わしを楽しませてくれるわ、愛いことよ」
 ギリギリの所で寸止め。パルボンにはこれでいけるか。こっちも、楽しめそうだ。
 翌日。
「天音。騎凛……キリンのいるところに往くぞ。あの女はすでに黒羊郷の方に入ったそうだ。それは間違いない。ハヴジァの王から、黒羊郷に入れる手形は貰った。
 そこに女王器の秘密がある」
 女王器……五獣の女王器のような、"人には過ぎたる力"を自分のものにしたいという願望は、僕には無いけれどね……だけど。また小さく笑う天音。



「まず問いたい。
 ここは何処?」
 一ノ瀬月実(いちのせ・つぐみ)だ。
「何処って? また、夢の中じゃないの。月実の。ほんと夢見がちよねぇ(それは俺様の設定だけど……)」俺様=リズリットもちゃんといる。「前にもこんなことなかったっけ。なんか夢の中をどんどんどんどん下っていかされたようなこと……」
「もしかして……」
 一ノ瀬は、何かに思いあたったように言う。
「ヘンなキノコだったとか?」
「……ぶるぶる。わぁーん、俺様恐い(月実が)。月実、俺様達、何としても逝キノコろうね」
 そこは……緩やかな川のような、いやただそれに流されているような心地の場所だった。
 実際には、ぼんやりとした淡い種々の色が入れ替わり入れ替わりしている様しか見えない。
 だけど……俺様(註:リズ)達って、龍に食べられちゃったんだよね……ああ、そうか……じゃあここ、死後の世界なんだ……ああ、空間が歪んでいく……

 やがてそこに、迦陵(か・りょう)道明寺、騎狼に乗った一条アリーセ(いちじょう・ありーせ)らの姿も浮かび出てきた。
「えっ。ここは……」
「あ、皆裸だ」
「ちょっと待って」
 月実、「……」。リズ、「あ、俺様達もだ……」
 ここで、全年齢対象のゲームのため、規制がかかります。
「ふふ。……この無意識の世界の中では、自分自身を偽ることはできないよ?」
 天音が言う。
 そこには裸のパルボンの姿もあった。
 月実、「げっ」。リズ、「あ、俺様もうだめ」
 周囲に、七人の古の哲学者の姿も浮かんだ。彼らはすでに骨だけになってゆらゆらと立っている。
「パルボン殿?」
「ウウム。カマワヌ」
「では、君たち……皆に話すとしようか? この夢の世界における女王器探索についてのお話をね……」


担当マスターより

▼担当マスター

今唯ケンタロウ

▼マスターコメント

 ご参加頂いた皆様。ありがとうございました。
 ペリフェラルエピソード【十二の星の華】に入っての序章としてお送りさせて頂きました。
 「ヒラニプラ南部戦記」、バトルも冒険も新たな領域に。今回はその感触を掴んで頂けたでしょうか、如何でしたか。
 是非、皆様のご意見・ご感想をお聞かせ下さい。
 これを序として、ゲーム性・物語性共にもう少し発展させてゆきたいと思っております。考えていることやイメージはあるのですが、なかなか一度には形にできないなと思います。

 各章を書き終えたあとでざっと眺めていきます。
 プロローグII … 少しドラマ仕立てになりそうなところをピックアップして全体の導入に描かせて頂きました。どうなるのか、楽しみですね。
 第1章(三日月湖に吹く風) … 統治・復興関連を今回は最初に。そこで動いている人を通して、間に交えて、現状を説明している部分も多いので、そこは必要そうな箇所を必要に応じて把握頂くのでよいかと思います。
 また、私の読解違い等で発言の意図がずれたり曲解あれば、掲示板等で述べてくださってかまいません。今回ある程度これまでの真相や設定に触れましたので、それについても、あれば議論をして頂いて指摘等して頂くのもありがたく受け止めます。
 第2章(雪の谷の戦い) … 本シリーズにおける最初の派手な戦闘シーン中心の章。また、ここでようやく十二星華であるジャレイラ・シェルタンが物語に参戦するというふうになります。前回(初登場)では神としての存在という部分のみを描きましたが、ここで自ら戦う者としてやあるいはちょっとしたワンシーンにおけるジャレイラを初めて描いています。これからこの教導団の敵として現れたジャレイラがどうなるか、また、どういう彼女の見えない部分が見えてくるかは、皆様のアクションによってもちろん変わってくると思います。
 第3章(第四師団包囲網1) … 第四師団の本拠・旧オークスバレーが陥落。これによって後方の退路や補給等が一旦断たれた形になります。そこまでは予期していなかったのですが、パラ実ヒラニプラ南西分校がここに誕生です。国頭さんおめでとう御座います。面白い(教導団にとっては困難な)状況で第一回を迎えることになりそうです。
 第4章(第四師団包囲網2) … こちらは、三日月湖の東の水路からの敵の侵攻で、湖賊・水軍関連の章になっています。後半はそのつながりで南部勢力がようやく実際に形として見えてきます。
 前半は2章に続く戦いの部となり、前回、教導団水軍の布石を打ったローザマリアさんと湖賊のもとで活躍される樹月さんお二人のアクションの、考える部分はしっかり考えられつつも気合?の入りようが違いました。と感じました。ブトレバは歴戦の水軍として登場するはずだったのですが、士気も策も完全に負けだったと思うくらいです。ローザマリアさんは今回はどんどん前に前に攻めていく感じで、樹月さんはそうであるようでいてかなり冷静・冷徹にそれをやっているという、そのどちらもよかったと思いました。
 また、南臣さんは、前シリーズの最後にとった血判が決め手で、まさかとも思いましたが判定上、少なくともひとまず外面上は南部勢力を一つにまとめました。どうでしょう。また、どうなる、でしょう?
 第5章(龍)*後述
 第6章(砂漠にて) … 独自に行動する人たちと、またその人たちを通して新たな勢力が現れるのが描かれた章です。ここはまだ、砂漠が今回新たに登場したばかりらしく、次にどうなるか、という展開までの部分が中心になりました。この章あたりからが今回の後編という感じです。
 第7章(黒羊郷で起こったこと) … GAはさほどなかったのですが、ここは今回最も化学反応な章だったと思います。書いていて、マスターの方でも驚く展開になったといった感じです。作戦が練り込まれてまではいなかったと判断しましたので、最初から敵を倒すまでは至りませんでしたが、とくにはイレブンさんの思い切ったアクションとそれと補完し合うデゼルさんと、ハインリヒさんの今回一癖あるアクションが偶然反応した結果だと思います。こんなドラマチック(?だと思うのですが?)な展開に、いきなり(序)からなるとは、と驚いてしまいました。(たぶんいちばんPLさんも驚かれる展開になってしまったかも知れないのですが。そこはアクション/リアクションの面白い点かとは思います。)
 第8章(ハルモニア解放軍) … 戦闘シーンからいくと一つ前の7章後半がいちばんサビで(最初の構成では本章と7章が逆でした)、ハルモニアの方はまだ状況自体が見えておらず、小競り合いなのですが、こちらはこちらで更に先が見えない展開になり、終わりの章にふさわしくなったかと思います……。いちばん最後の展開については、アクションを読んでプロットを立てた段階では、全く考えておらず、書いていく中で見えたという感がありました。
 第5章(北の森の龍)/第10章(夢の中の女王器) … この二つが最終的に絡み合うことになったのですが、龍はある意味マスターからの(いじわるでない)罠で、ガイドにあるたったあれだけの一文に、それぞれの方独自の好奇心や思惑、考察からアクションをかけてくださいました。そこで、何故か? と思うかもわからないのですが、今回は、この方々に、本シリーズにおける女王器探索のパートの方に参戦して頂こうかと思います(前回時点で直観と考察から見事に女王器の情報に行き着いた黒崎天音さんに加えて)。というのも本シリーズでの女王器探索は、ただの遺跡発掘や奪取ではなく、どこにそれがあって、どこからそれのある場所にたどり着くかわからない、という特異な探索にしたいと思っています。
 そこで今回は龍の話というわけで、そこには夢や伝承への洞察や直観的な引っかかりを持ってかけてもらったアクションが多かったです。そういう部分を夢の中の女王器探索につなげていきたく思います。以降も、何処かから夢に迷い込んだり、逆に出てしまったりという入口出口を用意していきたいと思います。(なので龍のこと自体はこれ以上追っても何も出てきません(でももしかしたら何か出てくるのかも?)。)
 女王器は黒崎さんの言い当てられたように、麒麟の女王器です。そして騎凛(きりん)の迷い込んでいるのも夢や無意識の世界で、これが黒羊郷の地下(湖)や未だ謎の奥地ヴァシャとつながっていて、おそらくこれも女王器の方(かもしくはもっと全然違う未知な世界?)にいくのではないか、と思うのです。それは……よくもわるくもマスターすらも知らないのですが、まる投げしてほったらかしているわけではなくて、私自身も自らのシナリオにアクション投げかけてる部分があるという感じです。

 戦いの方は戦いの方で、よりゲーム性や戦略性を緻密にして楽しんで殺し合ったり奪い合ったりしていけたらと思います。(PC間敵対勢力も出てきていますが、戦記ものですから、対エリュシオンの模擬戦と思って思いっきり殺っちゃいましょう。)
 註:今回は誰もPCさんは死んでません。御安心下さい。

 もちろん、個人的な部分をどんどん掘り下げ・突き進むも、至極マイペースでやるのもありです。
 でも何でもありということではなく、それがきちんと一つの物語になるということが大前提であって進めていきたいと思いますよ?ミューズよ力を(たぶん)。
 あまり語れる余力と時間が本当にありませんにてでは、皆様の送ってくださるアクションに敬意を込め……

 称号お付けしている方もいますので、ご確認ください。誤字脱字等含めミスがあればお手数ですがご一報ください。
 基本的に情報はリアクションや次回シナリオガイドから読み取って下さい、個別コメントはあえて送っている方も送っていない方もあり、ごちゃ混ぜです招待枠につきましても、皆様どうかあまり気にせずにいてくださるとと思います。全員に送るか、いっそ全員に送らないかどちらかにしたいくらいで、どの方にも、次回物語の続きはあるわけで・参加されてもされなくても…………では、今はこれにて。
 では、是非、次回本編第1回でまたお会いしましょう。新しい方のご参戦もお待ち致しております。(今唯)
 *「今唯ケンタロウBLOG*Out Of Scrap Basket」次回公開予定のお知らせや、(機会があれば)ここで書けなかったシナリオエピソード等にも触れたいと思います。