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リアクション
第3章 エメネア攫われる!?
(相変わらず変な事件ばかり生み出す子ね……。もう星槍もないし、この世から居なって貰うほうが世の為でしょう?)
ゴーレムと学生たちが戦う中、1人遅れて空飛ぶ箒に乗ってやって来たのはメニエス・レイン(めにえす・れいん)だ。
近付く彼女に気付いている者はまだ、居ない。
「美羽、そのゴーレムを倒したら、扉の傍のゴーレムへと直ぐに標的を変えて。一輝たちもそっちへ。前線に出てるアリアに集中してしまっているから……!」
エメネアの傍で彼女を護衛しながらも戦況を眺める滝沢 彼方(たきざわ・かなた)は、クイーン・ヴァンガードに所属する学生に通信して、的確な指示を出す。
そうしている間にもエメネアたちに気付いたゴーレムが数体、近付いてきていた。
魔法的な力場を使ってダッシュし1体へと近付くのは、フォルネリア・ヘルヴォル(ふぉるねりあ・へるう゛ぉる)だ。
「力は五千年前の半分以下、技も装備も全然足りません」
振り下ろされる手斧を羽を模した柄を特徴とする白い剣――翼の剣で受け止めた。
「けれどそれがどうしたと言うのです。私は、勇気という名の剣を執り、希望という名の盾を持ち、絆という名の鎧を着て今、此処にいるのです」
柄を握る手に力を込め直して、その手斧を押し返すと、払ってみせた。
「つまりは万全と言うことですわ。こんな有象無象に敗れる物ですか。シャンバラ古王国クイーンヴァンガード、フォルネリア・ヘルヴォル参ります!」
微笑む彼女は、お返しだと言わんばかりに剣から、爆炎を放った。
「ワタシたちも手伝うわ」
シオンは、パートナーが用意してくれていた武者人形と共にフォルネリアが相対したゴーレムへと近付いた。
「こちらはそれがしらが任されますな?」
他のゴーレムには、玲たちや久たちがそれぞれ相対している。
「!」
エメネアを守るため、形成していた日比谷 皐月(ひびや・さつき)の保護結界に反応が見られ、彼は辺りを見回した。
後方へと視線を向けると、空飛ぶ箒に乗ったままのメニエスの姿がある。
「エメネア、危ないっ!」
護国の聖域を展開しつつ、メニエスとエメネアの直線上に入った。
けれど、エメネアを中心に周りの学生たち皆を巻き込んで、氷嵐が襲い掛かる。
「エメネア、君はオレ達が……オレが、守るから」
自身にも氷の小さな粒が襲い掛かっているというのに、彼方はエメネアを身を挺して庇った。
吹き荒れる氷嵐が治まると、グールとゾンビが2体ずつ、そしてレイスが1体、近付いてきている。
「まだゴーレムの残数も多いというのに!」
御茶ノ水 千代(おちゃのみず・ちよ)は機関銃の引き金を引くと、アンデッドらとの間に弾幕を張り、少しでも足止めをしようと試みる。
それでも晴れた弾幕の間から近付いてきていたグールに対して、皐月はタワーシールドを構えたまま突進していった。防壁があっても貫通してしまうほどの攻撃に、グールは多大な痛みを負う。
「彼方、怪我の治癒を……」
「オレより先にエメネアを頼むよ!」
心配するリベル・イウラタス(りべる・いうらたす)に彼方はそう告げてから、火炎を呼び出すと痛みを負ったグールに向けて、放った。
「……我が、主が……貴女を先に癒しなさいと言ったのです。ボクは……貴女を癒します。だからどうか、それを無駄にしないで下さい」
「はい、ありがとうございますー」
リベルから癒しの魔法を施されながら、エメネアは微笑んで応える。
そんな彼女らの上空にいつの間にかメニエスが近付いて来ていた。
「右も左も馬鹿ばかり。であれば、私も馬鹿にならなければ損なんでしょうか。出来れば御免被りたい物ですけど」
不機嫌そうに、ぽつりと呟きながら雨宮 七日(あめみや・なのか)は鉄鎖を呼び出すと、その先をメニエスの跨る箒に向けて放つ。
「降ろされるものですか、ッ!?」
メニエスは抵抗を試みるものの、鉄鎖の絡みついた箒は引き摺られ、彼女はエメネアたちの間へと落ちてしまった。
フォルネリアや玲、久たちはまだゴーレムに掛かりきり、皐月や彼方、千代もアンデッドを倒すのに精一杯だ。
前線に立つ学生たちは地下から上がってくるゴーレムが尽きないために、気付いても駆けつけることが出来ない。
これ幸いだとメニエスは酸の霧を呼び出した。リベルや七日は思わず目を覆う。
「はうっ!?」
その隙に、杖の先でメニエスはエメネアを殴りつけた。
気絶とまでは行かないものの、殴られた場所を押さえ込むエメネア。彼女の腕を掴み、引き摺り下ろされていた箒を手に取る。
「連れ去るなんてさせないよ!」
千代が声をあげ、アンデッドに向けていた機関銃の先をメニエスへと向けた。
「エメネアの意思はエメネアの物だ。誰かが外から無理矢理捻じ曲げて良い様な物じゃない!!」
彼方も目の前のゾンビを凍らせると、メニエスへと向き合った。
「来いっ!」
「いやですーーー!!!」
気絶していないエメネアを箒に乗せようとしても抵抗されてしまう。
そうしているうちに七日が近付いてきて、メニエスへと拳を振り上げた。
痛覚を鈍らせているメニエスに、多少の攻撃は効かない。けれど、逆に弱点があることに気付かれてはやっかいだ。
メニエスはエメネアの手を離すと、1人箒に跨って、神殿を出て行った。
「無事でよかった」
千代や彼方がエメネアを案じて、周りを取り囲む。
近付いていたゴーレムたちも倒したようで、久たちも彼女の周りへと集まった。
扉の周りのゴーレムたちも粗方、倒されてきている。
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