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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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「この先を右ですね」
 千石朱鷺が、マップを見ながら言った。
「やけに曲がりくねっているような気もするけれど、大丈夫なのか?」
 ココ・カンパーニュが、少しむっとしたように言った。
「警備が手薄で安全な道を選んでいますから」
「ですが、それも、データを作った時点の物と言うことですね」
 再確認する千石朱鷺をその場に留まらせて、ペコ・フラワリーが前に進み出た。当然、警備配置は流動的に変化している可能性がある。
 低い獣の唸り声が聞こえてきた。
「おや、もうこんな所まで入り込んできたのか。やっかいな奴らだ」
 倉庫だろうか、広くなった空間に、ヴァイスハイト・シュトラントがいた。そのそばにいるのは、ライオンをベースとして、鷲の翼と蛇の尾と硬い鱗を持ったキメラだ。本来ならジィグラ研究所からマ・メール・ロアに納品されるべき物であったが、できのいいキメラは逆にマ・メール・ロアの攻略用に海賊たちが横取りしていたのだった。
「やはり、簡単に進ませてはくれませんね」
 広くなったので戦いやすいと、ペコ・フラワリーが背負っていたフランベルジュを軽くブンと振ってキメラを威嚇した。
「キメラは持っていくつもりだったが、まあいい。使うべき時に使わぬことこそ愚かだ。やれ!」
 ヴァイスハイト・シュトラントが命じるなり、キメラがペコ・フラワリーたちに襲いかかった。身構えていたペコ・フラワリーが、持っていた盾で初撃をなんとか受け流す。その隙に、ヴァイスハイト・シュトラントは内湾へと続く通路の奧へと姿を消した。彼女が通りすぎていった後に、何枚もの隔壁が順に閉じていく。
「一人じゃ無理です!」
 紫月唯斗が、再びペコ・フラワリーに前足を振り下ろそうとしたキメラに、遠当てを放って牽制した。
 二人に増えた獲物に、キメラが瞬間どっちを攻撃しようかと迷う。その隙を逃さず、ペコ・フラワリーが大上段に斬りつけてキメラを下がらせた。
「一気に片をつけるか」
「だめです、今のうちにリーダーは先へ進んでください」
 キメラと相対そうとするココ・カンパーニュに、ペコ・フラワリーが言った。
 確かに、今は急ぐべきかもしれない。一瞬考えたココ・カンパーニュに、真横の方から襲いかかってくるものがあった。
「危ないんだもん!」
 どこに隠れていたのか、葛葉 明(くずのは・めい)がブラインドナイブスでキメラに鉄甲のきつい一撃を見舞った。
「キメラは一匹じゃなかったということであるな。まだ、隠れているかもしれん」
 自分こそ、ココ・カンパーニュたちの陰に隠れていた毒島大佐が、煙幕ファンデーションとともにしびれ粉をキメラの顔面に投げつけた。たまらず、キメラが後退する。
 毒島大佐の言葉を裏づけるかのように、さらに五体のキメラが現れ、ココ・カンパーニュたちを取り囲んだ。
「翼、敵を近づけさせるな!」
「了解しました」
 月島悠と麻上翼が、弾幕を張ってキメラたちを牽制する。
「これは、ボクたちを足止めしたいってことなんだよね。だったら、止まるのは面白くないじゃない」
 振り回されて襲いかかってきた蛇の尻尾を切り落としながら、マサラ・アッサムがココ・カンパーニュに言った。
「危ない!」
 マサラ・アッサムに振り下ろされようとした爪を、朝野未那が帯電させたパワーアシストアームで受けとめる。しびれたキメラが、後退した。
「何をぐずぐずしてんだ!」
 ふいに、後方からラルク・クローディスの声がした。遅れて突入した一団が、追いついてきたのだ。
 ココ・カンパーニュの後ろに回り込もうとしていたキメラを、ラルク・クローディスがブライトフィストで殴り倒した。
「よし。来い、エレメント・ブレーカー!」
 ココ・カンパーニュが右手を高く突きあげて叫んだ。グッと引き下ろした拳に、星拳エレメント・ブレーカーが現れる。
「使ってくださいですぅ! 魔力よ、巡りたまえ〜」(V)
 神代明日香が叫んで、光術を放った。
「もらうよ、アブソーブ!」
 ココ・カンパーニュが、ゆっくりと飛んできた光球を星拳エレメント・ブレーカーで吸収する。
「おぬしに力を……」
 エクス・シュペルティアが、ココ・カンパーニュの背中に触れてパワーブレスをかけた。
「やっと本気か。道を作れ、メティス」
「はい……」
 レン・オズワルドがほくそ笑んだ。彼の後ろをふよふよと漂うようにしてついてきていたメティス・ボルトが、アイアン・メイデン型の外部装甲をオープンにする。内部に設置された無数のミサイルが前方に照準を定めた。
「キメラは入って来ちゃだめだよ!」
 朝野未沙と朝野未羅が、奧の通路にむかって左右に氷の壁を作りだした。その間を切り裂くかのように、メティス・ボルトの放ったミサイル群が時間差をつけて飛んでいく。隔壁にあたったミサイルが、次々に障害を粉砕しながら爆発した。
「さあ、早くオッパイの救出を!」
 葛葉明が思わず本音を口にして叫んだ。
「いっけえ!」
 星拳エレメント・ブレーカーにファイヤーストームを纏わせたココ・カンパーニュが、爆風と、それに飛ばされた氷片を切り裂きながらまっすぐに突進していった。その後を、アルディミアク・ミトゥナの救出を目的とした者たちが続いていく。
 朝野未沙たちの作った氷壁は爆風で粉々になって飛び散り、ココ・カンパーニュたちにむかおうとしたキメラたちに襲いかかっていた。
「さあ、あなたたちの相手は、このわたくしよ」
 混乱するキメラたちにむかって、日堂真宵が叫んだ。
「渦巻くは地獄の劫火、ゲヘナの火、即ちは地獄が引導、この者邪神が供犠とす! いっけぇーファイヤーストームっ!」
 ココ・カンパーニュたちを見失ったキメラたちの敵意が、あっと言う間に日堂真宵の方にむく。怒りの咆哮が次々にあがった。
「あ、睨まないでよ!」
 やり過ぎたかと、日堂真宵がいったん怯む。
「いやいや、上出来じゃな。これから、楽しめそうじゃ」
 片腕に毒蛇を絡みつかせながら、ウォーデン・オーディルーロキが言った。
「まとめてやっつけるぜ!」
 ラルク・クローディスが先陣を切って突っ込んでいく。
「一匹ずつ、引き離せ。各個撃破しよう」
 月島悠は、麻上翼とともに、キメラを誘導していった。