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リアクション
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身体にナイアルラトホテップを呼び戻したジャジラッド・ボゴルが、むんと自力で縄を引き千切った。ゲシュタール・ドワルスキーの方は、シュナイダー12世が助け出している。
「ワタシは……」
着ぐるみの尾ひれの部分を縛られて逆さ吊りにされているキャプテン・ワトソンが淋しげな声をあげた。こうなると、ジャジラッド・ボゴルたちに釣り上げられた小型の鯨という感じである。
「オルカもじきにゴールするさ」
「よしんば、スライムの海に落ちても、海ならはおまえとオルカにとっては得意の領域。何も心配はないであろう」
「いや、海の意味が違いますから……。オルカ、早く来てくれー」
ブラブラとゆれながら、キャプテン・ワトソンは叫ぶしかなかった。
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「にゃあ〜」
尻尾に髑髏型の鈴をつけた黒猫のむるんが一声鳴いた。その声に、御主人の姿を見つけられなくてぼーっと辺りを旋回していたふぎむぎが、やっと日堂真宵の所にやってきて縄をついばんだ。
「痛たたた、長いこと縛られてたから身体が痺れて痛いわ。せっかく、身動きできないみんなをこしょこしょする計画が……。しかたない、とりあえず少し休みましょ。それにしても、カレー馬鹿はどこに行ったのかしら……」
腰を痛そうにさすりながら、日堂真宵は大会本部に移動すると、パイプ椅子を三つくっつけてその上に寝転んだ。
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そのすぐそばでは、小鳥遊美羽が、満足そうにローゼンクライネの頭を撫で撫でしていた。
「さすがは、オリヴィエ博士改造ゴーレムなんだもん。十四位なら、やっぱり他のゴーレムよりも高性能だっていうことだよね」
小鳥遊美羽の言葉を証明するかのように、同じオリヴィエ博士改造ゴーレムであるラルク・クローディスのタイタンも十七位に入っていた。
「うんうん、一位になれなかったのは残念だが、今回はいろいろといい経験になったよな」
同じ美少女タイプのオリヴィエ博士改造ゴーレムでも、正統派萌えっ娘のローゼンクライネと、どちらかというと格闘ゲームのヒロイン的なガタイのいいタイタンとでは、ずいぶんと印象が違うものだ。
★ ★ ★
「ううむ、序盤は快調だったのに、期待値以下の順位とは、乱数の女神様に祈りが足りなかったか」
ダイスを握りしめた本郷涼介が、思いっきりルタールにスリスリと甘えられながらつぶやいた。
「ごめんね、お兄ちゃん。頑張って応援したんだけど……」
少ししょんぼりして、クレア・ワイズマンが言う。
「そんなことはないさ。クレアが応援してくれたからこそ、無事ルタールがゴールできたんだから」
そう言って、本郷涼介はニッコリと微笑んだ。
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無事ゴールできたからと言って、すぐに助けられたわけではない者も中にはいる。
リアトリス・ウィリアムズのロウファは、縛られたままの御主人に迷わず飛びついてスリスリし続けていた。
「ああ、かわいい。でも、今は縄をかみ切って、早く……」
リアトリス・ウィリアムズが懇願して、やっとロウファは縄をかみ切ってくれた。
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「来い、カルディア」
ヘラ・オリュンポスに呼ばれて、カルディアが自由になった御主人の首に巻きついて襟巻きのように甘える。
「私のガブリエルは……」
淋しそうにギルベルト・ハイドリヒが言った。
「まだのようであるな。地道に待つしかあるまい」
淡々と、ヘラ・オリュンポスが言った。
「アルやシルトさんはどこに行っちゃったんだろう……」
「ああ、あそこでペットたちを追いかけ回している馬鹿者共のことか?」
ヘラ・オリュンポスの指し示す彼方では、ゴールしたペットたちの間を駆けずり回って、思いっきりもふもふしているアルノー・ハイドリヒとシルト・タクティク(しると・たくてぃく)の姿があった。
「犬もかっこいいけど猫もいいよな〜。鳥とかもかっこいいし……」
「その、触って……よい、だろうか」
「ゴーレムかっけぇ! おんぶされたいな!」
「大きいな、そして力強い」
もう二人は大はしゃぎである。
「あの二人、私のことは……」
「ああ、多分すでに眼中にはない……」
ヘラ・オリュンポスは、ストレートに言い放った。
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「いけー、右介と左介! スライムだけには負けるなー!」
右介と左介にお湯をかけながら、ルルール・ルルルルルが応援した。
その後ろからは、遅れてはいるもののスラの助さんが、ぬたーのたーっと確実に追いかけてきていた。