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●第19章 捜査班登場


 街で大暴れなご一行の反対側では、真面目にこのことを事件として取り組むものもいた。
 水上 光(みなかみ・ひかる)は電話で有益な情報を得られず、慌てていた。手に入らなかったら、自分の永遠の夢?が手に入らなくなる。
「ほんとうにさっ! ちょっとは性転換薬探すの手伝ってくれてもいいじゃないか! 鷹村の馬鹿ッ!」
 ぶつくさと鷹村に文句を言ってみた。
 言っても空しいだけだが、言わなければ気分が晴れない。ならば、言った方が精神衛生上、良いに決まっている。善くはないが。
 鷹村の名前に反応した金住 健勝(かなずみ・けんしょう)は光の方を見た。
 可愛い少年が口にした「タカムラ」なる言葉は、自分の知っている「鷹村」であろうか。一応声をかけてみることに越したことはない。
「そこの方、待つであります!」
「はあ?」
「失礼ですが、先ほどタカムラと言ったのは、教導団のタカムラででありますか? 鳥の【鷹】と書く方の、タカムラであります」
「え? まぁ、そっちだけどぉ?」
「よかったであります! 自分は歩兵科の金住であります。実は、自分も同じ目的で空京に居るであります」
「もしかして、性転換薬?」
「そうであります!」
「ゲッ!」
「どうしたでありますか?」
「いや、なんでも…なんか、情報見つかったのかい?」
「いえ、まだです」
 そう答えたのは、健勝と一緒に聞き込みを行っていたレジーナ・アラトリウス(れじーな・あらとりうす)だ。
「そ、そっかぁ! じゃあ、手伝わなきゃいけないな! クイーン・ヴァンガード特別隊員としてっ」
 かなりうそ臭いと言うか、やましいさを感じずにはいられない言葉な気もするが、金住は気が付かなかった。
 事件を追っていたところだったのを知り、光は無理やりでも手伝おうと考えていた。
 もちろん、おんぶに抱っこ。横取りする気満々だが、内心のほどは秘密だ。
 そして、三人は以下の条件で調査した。

・性別が変わる品物を知らないか
・もしあるなら、最近それを買った人がいないか。それはどんな人物か
・またはその薬がなくなったことはないか

「なかなか見つからないであります」
 金住は呟いた。
「まあ、他にも店はあるし!」
 自分以外の人間もいるということで、光はまだ元気だった。
 そして、同じように何かを聞きまわっている人物を発見し、三人は遠くから様子を伺った。
 道行く人に話しかけてはメモをしているのは久世 沙幸(くぜ・さゆき)藍玉 美海(あいだま・みうみ)セルシア・フォートゥナ(せるしあ・ふぉーとぅな)アリステア・レグナス(ありすてあ・れぐなす)の四名だ。
 アリステアなんぞは白いのに、黒いオーラを放っているかのよう怒っていた。
「もしかして、同じ目的かもしれないであります」
「じゃあ、ずっと楽が…じゃなかった、手伝ってあげられるねっ!」
「そうであります。では、声をかけるであります。もし、そこの方。もしかして、性転換薬の出処を探しているのでは?」
 金住は久世に声をかけた。
「はぁい、私たち、犯人をさがしてるんだもぉン〜」
 沙幸は言った。
「そうですわ。本当にまったく…あのプニプニふわふわだったわたくしの沙幸さんが、こんな姿になってしまうなんて……犯人は絶対に許せませんわよ! 絶対に捕まえて叩いて晒して嬲って挿してイカしてとっちめて差し上げますわっ。沙幸さんのたっゆんなおっぱいを今こそ取り戻すのです!!!」
「あー、はいはい」
「そーです! 朝からこんな屈辱的な思いをさせてくれましたし、やって良いことと悪いことの区別も付かない輩には、きついお仕置きが必要ですねぇ」
 アリステアは言った。
 セルシアは傍観を決め込んでいる。

(……あーあ、絶対怒ってる…なんか黒いオーラ出てるもん。半殺しじゃすまないかもね、これ……。…助けないけども)

 そんな薄情なことを考えていた。
「じゃぁ、ケータイ番号を交換しようよ〜」
 沙幸は言った。
「それがいい! はぐれても連絡できるし」
 光も同意した。
 そして一同は話し合い、以下の情報を交換する。

 ・前日何をしていたか?
 ・前日どんな人と会ったか?
 ・会った人からなにか貰わなかったか?
 ・前日どんな食べ物を食べたか?
 ・前日どんな飲み物を飲んだか?
 ・そしてそれらに違和感がなかったか?

「昨日は早く寝た…ってゆーか、寝落ち?」
 光は答えた。
「んー、お菓子食べてぇ、紅茶飲んだもぉ〜ン。お腹空くよね、夜更かしって」
 そう言ったのは、沙幸。
「消灯時間には寝たであります! 時間厳守は軍人の基本であります」
「寝れなくて、コーヒー飲んだ記憶が…」
 アリステアは言った。
「甘かったわよね……なんとなく」
「あ、私もそう思ったもぉン。イチゴの匂いがしたような」
「そうそう…」
「もしかして、ソレ?」
「推察になりますが、イチゴの匂いが原因に関わるような『何か』ではないかと思うであります」
「ん゛ー」
 その後も人は増え、樫黒 雲母(かしぐろ・うんも)も加わった。
「誰の仕業かは知らないけど、性転換するなんて面白いねぇ〜。どうやってやったのかを調べて、それが魔法だったら分析してみたいし、それが薬だったら成分を調べてみたいよなぁ。だって、宿題終わるしね」
 月代 由唯(つきしろ・ゆい)は笑った。
「由唯は性転換してないから、そんなことが言えるんだぜ! あぁ、どうしよう〜〜」
「ホラ! 男なんだからもっとビシッとしろっ! …って、今は女か…」
 雲母は女になったことで思考がパニックに陥り、自暴自棄になってるのが心配なところだ。
「とりあえず、手伝ってもらえないか鷹村に頼むであります」
 金住は鷹村に電話をしたが、鷹村は出ない。
「出ないであります」
 金住はもう少し待った。
「……ん?」
『わふっ…も、もしもしぃ〜〜…』
 しばらくして出たのは、知らない女の声。性別の入れ替わった城 紅月(じょう・こうげつ)だ。だが、金住は知らない。
「え? 誰でありますか?」
『俺、城 紅月だよ。お前、誰ぇ?』
 女にしては言葉遣いが男の子っぽい。
「自分は金住であります。鷹村の携帯電話だと思ったでありますが…」
『うん。これ、兄貴の。…ぅっ…わぉーーん! お願いだよぉ…兄貴を助けて』
「うわ! 声が大きいであります。 あ、え? 鷹村に何かあったでありますか!?」
『兄貴が死んじゃうよー! わぉ〜〜〜〜ん!
「耳がっ! わかったであります。今すぐ行くであります」
 金住はしばらく話をし、電話を切ると鷹村の元へと駆けつけた。

 そして、金住たちが到着したころ、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)も到着した。
 倒れる鷹村を全回復すると、皆は一息つく。
「で、犯人は誰だかわかったの?」
 美羽は言った。
「まだなのよねぇ」
 美海はコハクに視線をくれながら答えた。
 妙な視線に美羽は眉を顰める。
「で、イチゴの匂いがしたって、本当? 実は、僕も…」
 コハクは思い出しながら言った。
「コハクもかぁ…」
 美羽は独りごちる。
 それを聞いて、凛もわずかに頷いた。
「そんな話は聞かなかったけど…ありえる」
「そんなの魔法に決まってるよ」
 由唯は言い切った。
「だって、簡単じゃないさ」
「でも、匂いがしたって…」
「それは、薬。魔法薬じゃないかな」
「だろうなぁ……」
 光は言った。
「薬なら問屋を調べれば見つかるんじゃないですかね」
 考えつつ、鷹村が答えた。
「調べてないところはないですかね」
「手は尽くしたのであります。…あとは、友人関係に聞くのが一番であります」
「じゃぁ、そこからいきますか」
 鷹村は言った。

 皆は友人関係に電話をしまくって手がかりを得た。
 とある、薬の問屋の顧客が候補に上がったのだった。

 そして、戦闘の準備は、整った。