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リアクション
第4章 酉の刻〜きょういちばんのふこうなできごとだったよな。
*18時05分*
「さて、俺はなにを食べようかなぁ」
「昼とは違うものがいいでござるね」
3たび学校へとやってきた匡壱と佐保は、食堂の前でメニューを眺めていた。
休日でも1日3食、健康と体力づくりのためには絶対に欠かせない要素だ。
(ドスをといでもらっていたら遅くなってしまった。
斬れ味を試したいが、こんな時間に人がいるはず……いるじゃないか)
門をくぐり、校内を見まわす武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)。
日曜の夕方に、それも夕飯どきになんて、誰もいないかと思っていたら。
「よう、ちょいと模擬戦につきあってくれないか?」
「な、いまからか!?」
「がんばれ匡壱、侍たるもの受けた喧嘩は買わねばならぬでござるよ!」
「乱戦での対応を試したいから佐保も頼むわ」
「はうっ、拙者は……遠慮……」
「なに言ってんだよ佐保、お前だけ逃げようったってそうはいかねぇぜ!」
視界に飛び込むと、牙竜ったら有無を言わさず匡壱をつかまえる。
見学にまわろうとしていた佐保も、匡壱の言葉で逃げられなくなってしまった。
「しかたない、手加減はなしでござるよ!」
「あぁ、その方が助かるぜ!」
「覚悟しやがれっ!」
クナイを構える佐保に、牙竜はさらっと言ってのける。
刀を鞘から引き抜くと、勢いよく匡壱が駆け出した。
「はぁっ!」
振り下ろした双刀は、あえなく空を切り、地をえぐる。
佐保の手裏剣をもかわして、一定の距離を保つ牙竜。
まずは、匡壱と佐保の行動パターンを把握したいのだ。
と同時に、事前に黒く染めていた『登山用ザイル』をスキル『サイコキネシス』でコントロール。
ばれないよう慎重に、自身の足元へとひそませた。
近づいては離れ、両者ともなかなか相手をとらえられずに時間だけが過ぎていく。
「はっ、ほっ、えいっ!
ちっ……待つでござる!」
飛来するクナイと手裏剣を、右手の『さざれ石の短刀』で素早く打ち落とす牙竜。
後方へ跳躍したところを、佐保が追いかけてきた。
「チェックメイト!」
着地の瞬間すかさず地を蹴り、佐保の懐へ。
突きつけた左手には、『灼骨のカーマイン』が握られていた。
「おっと、動くなよ、匡壱!」
佐保を人質に、牙竜は匡壱を縛り上げる。
もちろん佐保もザイルでくるくるっと……ちなみにザイルの片方の端は、連れていた『ユニコーン』の左後ろ脚に結んでみた。
「俺は両利きでな……銃とドスは相手を惑わすために使う、ザイルで動きを一瞬でも封じるのが目的だ。
あとはトドメを刺す流れだな」
スキル『トラッパー』をも使用した巧みな心理戦が、牙竜勝利の大きな要因であろう。
「礼を言うぜ、おかげで実戦でも使えそうだ」
「それはよかった、相手になったかいがあったでござるな」
「くっそ〜、次は絶対に負けねぇぜ!」
笑顔で歩み寄ってくる牙竜に、佐保も匡壱も明るく返事をする。
悔しい気持ちの反面、自分達の力不足も分かったし、なにより人の役に立てたことへの充実感に満たされていたのだ。
「匡壱、わりぃ。
佐保の縄をほどいたらそっちもほどくから……よいしょっと、知ってた?
亀甲縛りは縄抜けできないように考案された結び方なんだと。
もう少し素早く縛れればパラミタ一の縄使いになれそうだな」
とか雑学も披露しながら佐保のザイルをほどいたのだが……ん、なにか忘れてないか。
「あ、ユニコーンに縄の端を縛ったまま……しまった!
ユニコーンは気性が激しいの忘れてたぜ!」
気づいたが、ときすでに遅し。
頭を抱えて追いかけ、ユニコーンを停止させる。
「あぁ……匡壱が引きずられてボロ雑巾のように!」
「くっ……てめ……がりゅ……覚えてろ……」
「ご愁傷様でござるよ、匡壱」
「すまん、夕食おごるから、な、許せ!」
かくして、匡壱の再起をかけて3人は食堂へと向かうのであった。
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