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第2章 地獄の底で

「ここは……?」
 コウモリに連れ去られてから気を失っていたミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は、金属とカビの臭い、そして、ひんやりとした空気に包まれるのを感じて、目を覚ました。
 ミルディアが横たわっていたのは、暗い地下にあると思われる、牢獄のような場所だった。
 周囲には、自分と同じように連れ去られてきたと思われる、各校の女子生徒がぐったりとなって横たわっている。
「あたしたち、誘拐されたんだね。これから、どうなるんだろ?」
 ミルディアは、女子生徒ばかり誘拐して牢獄に押しこめておく、この企みを実行する者たちの望むものを想像して、身体をブルッと震わせた。
 とにかく寒くて、じめじめと湿っている牢獄だった。
 ビシッ、ビシッ!
 遠くから、ムチで床を叩く音が聞こえてくる。
 グルルルルル、グルルルルル
 獣の鳴き声もする。
 カタカタ、カタカタ
 何か、乾いた堅いものが移動する音も聞こえてきた。
 それらの音は、ミルディアが横たわる牢獄に近づいてきているようだった。
 やがて。
「おう、新入りメイドども! 目を覚ましたか?」
 筋肉モリモリのビーストマスター、グルル・キバツメが現れると、乱暴な口調でがなりたてる。
 グルルは、身には腰布を巻きつけているだけで、半裸に近い姿である。
 恐ろしい唸り声をあげるムチを、いちいち床に叩きつけている。
 グルルの背後から、何匹ものライオンが姿をみせる。
 さらに、剣や盾で武装した骸骨戦士たちも現れた。
「がっはっは、これはまた、上玉ばかりが揃っておるわい」
 グルルは牢獄の中におびえた表情でうずくまっている女子生徒たちの容貌を眺めて、いやらしい笑い声をあげると、牢獄の扉を開けて、ずかずかと踏み入った。
 グルルの後から、ライオンも数匹入ってきて、牙を剥き出しにして女子生徒を睨みつける。
 意識が回復している女子生徒たちは、何ともいえない異様な恐怖を感じ、声にならない悲鳴をあげてあとずさった。
「誰なの? あたしたちをどうするつもり?」
 ミルディアは、立ち上がって、グルルに歩み寄ろうとするが、足首が何かに引っ張られて、よろめく。
 みると、鎖のついた足枷をはめられていた。
 鎖の先には、重い鉄球がつけられている。
 何とか歩くことはできるが、馴れるまで時間がかかりそうだった。
「オレは、グルル。この館の主、サッド・ヘタイン様に雇われて、お前たちの監督を行う。いっとくが、オレのいうことに逆らったら、ただちにムチ打ちの刑にされるぞ」
 グルルは、ミルディアの身体を舐めるようにみつめながらいった。
「いやらしい目でみないで!」
 ミルディアは、本能的に両腕を胸の前で交差させると、後ずさろうとした。
 だが、グルルは、そんなミルディアに手を伸ばし、強引に腕をつかんで、引き寄せてしまう。
「きゃー! さ、触らないで!」
 ミルディアは抗うが、グルルはものすごい力でつかんで、放さない。
 グルルの目が、異様な光を放っていた。
「や、やめて!」
 グルルがスカートをまくりあげるので、ミルディアは悲鳴をあげる。
「これから、館の広間にまで上がって、サッド様に挨拶をする。お前たちは、この館のメイドのたしなみとして、下着一枚になってもらう。サッド様にその身体をよくおみせしなければならないからな」
 グルルは笑いながら、ミルディアのスカートを破り、上着もむしりとっていく。
 あっという間に、ミルディアは下着一枚の姿にされてしまった。
「へ、変態!」
 ミルディアは顔を真っ赤にして、グルルに殴りかかろうとするが、手首をつかまれて、強い力でねじりあげられる。
「く、くう!」
 痛みに顔をしかめるミルディアの顔を、グルルは情け容赦なく平手で打った。
 ばし、ばし!
「やったわね。もう! 隙をみて、仕返ししてやるから!」
 ミルディアは悔しそうに唸って、うなだれる。
「逆らったら痛い目にあうといっただろう? おとなしくするんだな。さあ、お前たちも、ムチで打たれたくなかったら、自分から脱げ!」
 グルルは、抵抗しなくなったミルディアを突き飛ばすと、残忍さを露にしながら、他の女子生徒たちに呼びかける。
 しかし、怖さのあまり、女子生徒たちは身体がかたまってしまったようだ。
「どうした! 早くしろ!」
 グルルは顔を真っ赤にして怒鳴り、恐ろしいムチを床に叩きつけた。
「やめて。乱暴はしないで!」
 ソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)が叫んで、鉄球を引きずりながらグルルに近寄る。
「早くいうとおりにしないと、みせしめに、誰かを虐めてやる。お前でもいいんだぞ?」
 グルルはソニアの身体をしみじみと眺めながらいった。
「どうしても、そうしなきゃいけないのね。わかったわ。みんな、ここはおとなしくいうことを聞きましょう! でないと、この人たち、本当に殺すつもりよ。ここは、何とか生き抜いて、脱出のチャンスをつかまないといけないわ」
 いいながら、ソニアは衣を脱ぎ捨て、率先して下着姿になっていく。
 女子生徒たちは全員、足に鎖をつけられている。
 グルルは、怪力の持ち主で、凶悪そのものだし、周囲には、ライオンもいるし、骸骨戦士もいる。
 相手に逆らえる状況ではなかった。
 誰か、女子生徒がパニックを起こして悪漢たちにつかみかかれば、ただちに殺されてしまうだろう。
 ソニアとしては、屈辱をこらえる結果になるとしても、女子生徒たちに最も安全な道を示すほかなかった。
「いい心がけだ。地味な下着だが、肉づきは悪くないな」
 グルルのソニアをみつめる目が、欲望にギラギラと光り始めた。
 ソニアに続いて、他の女子生徒たちもぎこちない手つきで着衣を脱ぎ、全員が下着姿に変わってゆく。
「さあ、これでいいでしょう? ミルディアさん、その服、後で私が直しておくわね」
 ソニアは、グルルによって破かれたミルディアの服を拾いあげて、いう。
 ミルディアは、黙ってうなずいた。
 ぽん、ぽん
 グルルが、ソニアの肩を叩く。
 振り向いたソニアの頬を、強烈な平手打ちが襲った。
 ばしいっ!
「きゃ、きゃあ! 何をするの」
 悲鳴をあげて、ソニアは頬をおさえる。
「あまり調子に乗るなということだ。いうことさえ聞けばいいと思うなよ。お前、さっき脱出といったろう? 言葉には気をつけることだ」
 グルルは、血も涙もない口調でいった。
 そのとき。
「おーい! 追加だ!」
 しわがれた口調で叫びながら、誰かが牢獄に近づいてくる。
 ネクロマンサー、シビト・イジロウだ。
 シビトの背後には、骸骨戦士が何体かいて、さらわれてきたばかりの3人の女子生徒を拘束して連行している。
「ほーら! お前たちも早く脱げ!」
 シビトは、連行してきた3人の女子生徒を牢獄の床に突き飛ばして、怒鳴りつける。
「いたっ! もう、何するの!」
 篠宮真奈(しのみや・まな)は、床にうちつけた肩をさすりながら、シビトを睨む。
「あなたたちは、誰なんですう? ここは、どこなんですかあ?」
 サージュ・ソルセルリー(さーじゅ・そるせるりー)が、きょとんとした口調で周囲をみまわしながらいう。
「ちょっと、モリガン! 何であなたは鎖もついてないのよ!」
 著者不明 エリン来寇の書(ちょしゃふめい・えりんらいこうのしょ)が、骸骨戦士たちの後ろにたたずむ女子生徒を睨んでいた。
 エリンが睨むその生徒は、拘束もされておらず、シビトの側に立って、篠宮たちを見下ろしている。
「申し訳ありません。わたくしのため、犠牲になって下さると助かります」
 モリガン・バイヴ・カハ(もりがん・まいぶかは)は、淡々とした口調でいった。
 モリガンのその言葉に、3人からいっせいにブーイングがあがる。
「何いってるの? 信じらんない!」
 篠宮が噛みつかん勢いでモリガンに詰め寄ろうとしたとき。
「いつまでわめいている?」
 シビトが篠宮の腕をつかんだ。
「きゃあっ! 冷たいっ! 死人のようだわ」
 篠宮は悲鳴をあげる。
 シビトに突き飛ばされ、よろめく篠宮。
 ビシィッ!
 グルルが篠宮のすぐ側の床をムチで打った。
「脱げ!」
 グルルはつま先で、篠宮のスカートをまくりあげる。
「こ、怖いー! はい、脱ぎますー!」
 サージュが、突然素直になって着衣をいそいそと脱ぎ始める。
「逆らえば、なぶり殺しにされるの? わかったわ。モリガン、これだけのことをして、ただですむとは思わないことね」
 エリンは唇を噛んで、忌々しげにモリガンを睨みつけると、ヤケになって着衣を脱ぎ捨てた。
 みれば、篠宮はグルルに押し倒され、荒々しく服を破かれている。
「わっはっは! 興奮させてくれるな、お前!」
「へ、変態! もう、好きにしなよ! あたしなんかの身体みて、楽しいの?」
 篠宮は、下着一枚にされて床を転がされ、恥ずかしさと怒りに顔を真っ赤にしながら立ち上がる。
「くふふ。仲良しグループ3人の、誰が一番胸が大きいかな?」
 シビトは意地悪な笑みを浮かべながら、下着姿になった3人の身体を比較していた。
 モリガンは、悪漢たちのおもちゃにされる3人を、無表情な瞳でみつめていた。
(モリガン!)
 篠宮は、腹立たしい思いの中で、拘束される寸前にモリガンのいった言葉を思い返していた。
「これからわたくしは、あなたたちを裏切ります。でも、どうか信じて下さい」
 そういわれて、言葉の意味がわからず3人がぽかんとしていたときに、突如コウモリの大群に襲われ、意識を失ったのだ。
 気がついたら、この地獄の館に、拘束されていた。
 誘拐犯たちに好き放題なぶられる、女子生徒にとってはまさに地獄としかいいようのない空間だった。
 この館の主人が、女子生徒たちをまず下着姿にする理由は、おおかた察しがついた。
 おそらく、全員を普段から全裸にしていたのでは、興奮しなくなるからだろう。
 普段は下着姿でいたぶって、気に入った一部のメイドを全裸にするつもりなのだ。
 全裸にしたうえで、どうするのか。
 そのことを思うと、篠宮は胸がドキドキした。
(モリガン、いまはただ、あなたの言葉を信じて、屈辱に耐えるしかないわね)
 自分のパンツをえぐるようにみつめるグルルの視線に気が狂いそうになりながら、篠宮は決意をかためるのだった。
 
「おら、しっかり歩けー!」
 牢獄を出て、一列になって階段をのぼっていく女子生徒たちの背後から、グルルのムチが床を打つ恐ろしい音が響く。
 女子生徒たちは全員下着姿で、ひんやりとした館の中を歩かなければならない。
 全員が、手枷か足枷をはめられ、鎖を引きずっている。
 鎖の先は、重い鉄球がついていることもあれば、グルルやシビトの手に握られているものもあった。
 歩きにくくて、転びそうになるが、それでもグルルたちは意地悪にせかしてくる。
 恐怖と屈辱と怒りとで、女子生徒たちはみな、頭がおかしくなりそうだった。
 前後左右には、ライオンや、骸骨戦士が歩きまわって、野性の勘で監視している。
 女子生徒たちは、絶対絶命の状況にあり、ただ命じられるがままに動いていた。
 何とかして、脱出しなければ。
 その思いが、それぞれの胸のうちで強くなる。
 脱出するそのときまで、歯をくいしばるしかなかった。
 そして。
「フハハハハハハハ! ようこそ、我が館へ!」
 館の広間で、ずらり勢揃いした下着姿の女子生徒たちを前に現れたのは、狂気に満ちた笑い声をあげる、残忍さが凝り固まったような男だった。
 サッド・ヘタイン。
 Sの館の主として、付近の住民に忌み嫌われ、恐れられている存在である。
 目があう者全てを絶望のどん底に叩き込まずにいない、邪悪に満ちたそのたたずまいを前にして、女子生徒たちは身体を震わせ、唾を飲み込んでいた。
「ほら、しっかり歩かんかい!」
 サッドは、ある女子生徒を四つん這いにさせて犬のように歩かせ、その首輪から伸びる鎖を引きまわしている。
 その女子生徒をみて、ミルディアは思わず声をあげた。
「あれ? 美緒ちゃんも!」
 百合園女学院の生徒なら見間違えるはずもない、けしからん巨乳で知られる新入生・泉美緒の無惨な姿がそこにあった。
「わんわん! 皆さん、ここは、不思議な館ですわよ」
 異常な状況にも関わらず本人は至ってのんびりしていて、ニコニコ笑いながら犬ごっこのノリであちこち動きまわり、他の女子生徒たちに愛想よく声をかける。
 四つん這いになって移動するたびに、豊かな乳がたぷんと揺れる。
 泉は、Sの館を女子生徒たちがメイドごっこや犬ごっこをして遊ぶ、女性専門の遊戯場だと考えているようだった。
 サッドたちは、遊戯場の管理職員で、自分たちの相手をするのが仕事だと思い込んでいる。
 本人の意識がどうあれ、犬のように引きまわされている泉の姿は、衝撃的なものだった。
「何も知らない泉さんをこんな目にあわせるなんて、ひどいわ!」
 ソニアは、泉の扱いのひどさに、涙を流してサッドに抗議した。
「ああ、ひどいさ。だが、これほど楽しいことはないぞ。みろ、この乳を! これほどの絶品はなかなかお目にかかれない! 私はこの女も、そしてお前たちも自分の自由にもてあそぶことができるのだ!」
 サッドは、ソニアに歩み寄り、その丸い肩を両手でわしづかみにすると、勝ち誇ったような笑い声をあげた。
 そんなサッドに、モリガンが進み出て、篠宮たち3人を指し示して、いった。
「サッド様。わたくしからの捧げものです。お気に召しましたら、どうか私をあなたの側に置いて下さい」
「ほう。殊勝なこころがけだな。いいだろう。ただし、ときにはお前の味見もさせてもらうぞ」
 サッドは、篠宮たちの容貌をみて目を細めると、モリガンの胸をさっと掌で撫でていった。
「どうぞ、お好きなようにして下さい。ああ、気持ちいいですわ」
 モリガンは、サッドの愛撫におおげさに反応してみせた。
「モリガン! いったい、何を?」
 篠宮には、眼前の光景が信じられなかった。
 この館に入ると、全ての女性の頭がおかしくなるのではないかと思われた。
「さあ、お前たち、よく聞け! 既にこの館では、昼夜を問わず多数のメイドが私のために全力で奉仕を行っている。私は、メイドたちの忠誠に対し、夜な夜なお仕置きをすることで報いてやっているのだ! お前たちも、今日から私のために誠心誠意の奉仕をやってもらう! いいな!」
 サッドは、傲慢そのものの口調で女子生徒たちに一方的に命じる。
 多くの女子生徒たちは、恐怖のあまり、うなずくことしかできない。
 だが。
「勝手にさらってきて、一方的に働けだなんて、ひどい話ですわ。たとえ力ずくでも、そんな話を了承するつもりはありませんわ」
 ルル・フィーア(るる・ふぃーあ)が、気丈にも言い放った。
 下着姿になるまでは従ったが、もういい加減うんざり、というのがルルの心境だった。
「ほう。いい度胸だ。痛い目にあいたいか?」
 サッドがルルを睨む。
「やりたければ、やればいいですわ。どんな目にあおうとも、あなたのメイドにはならないですわよ」
 ルルは、心臓が張り裂けそうな恐怖をこらえながら、表面上はどこまでも強気にいってのける。
「ああ、やってやろう。お前のような女を崩すのが、私の悦びだ!」
 ビシィッ!
 サッドは、血に染まったムチを取り出すと、ルルの身体に思いきり振り下ろした。
「く、くう!」
 ルルは打たれた箇所をおさえて、うずくまる。
 白い肌が、真っ赤にはれあがっている。
 下着の一部が剥がれて、中身がみえそうになっていた。
「痛いだろう、ああ? 痛いといえ、そして悲鳴をあげろ! そら、そら!」
 サッドは悪魔のような表情になると、何度もムチを振り下ろす。
 ビシッ、ビシッ!
「ああ! どんなにやられても、私は!」
 ルルは、歯を食いしばって、ムチ打ちに耐えた。
 下着がズタズタになり、妖精のように美しい裸体が悪魔の眼前にさらされる。
 ルルが意地になればなるほど、サッドは興奮を深めていった。
「ハハハハハハハ! では、お前には、罰として、公開拷問でたっぷり屈辱を味わわせてやろう! 後悔しても遅いぞ! 私はもう許さないからな!」
 笑いながら、サッドはうずくまっているルルを引き起こすと、そのお尻をサッカーボールのように蹴り飛ばし、倒れたルルの背中に、何度もムチを振るう。
(助けて、助けて、淳二さん! 助けて、早く!)
 精神感応で、遠くにいるだろうパートナーに必死で呼びかけながら、ルルは痛みに耐える。
 優れた超能力者であるサッドにはその心の声は全部聞こえていたが、それゆえに、表面上は強気を保つルルをいたぶることに、サッドはたまらない快楽を覚えるのだった。
 踏みにじり甲斐のある女であり、その意味でサッドはルルを気に入っていた。
 一方で、サッドがルルをなぶりものにする光景は、他の女子生徒からみると、まさに悪夢としかいいようがなかった。
「い、いや! やめて! 殺さないで!」
 女子生徒たちは、サッドに対する恐怖のあまり、パニック状態に陥りつつあった。
 もはや、逃げる勇気さえもない。
「ゆ、許して、許して下さい!」
 女子生徒たちは、我知らず、いっせいに叫び始める。
「許して下さい! 許して下さい!」
 ルルをではなく、自分たちを許して欲しいという一心で女子生徒たちは叫んでいた。
「ハハハハハ! わかったようだな。これからは、私にお仕えしてもらう。せいぜい、おとなしく賢明に振る舞うことだな」
 サッドは勝利の笑い声をあげながら、なおもルルを打とうとする。
「もう、やめて!」
 ソニアが、サッドの前に進み出ようとしたとき。
「やめろ! 私が身代わりになる! だから、ほかの子には手を出すな!」
 鬼崎朔(きざき・さく)が、ルルの前に身体を投げ出し、サッドのムチを受けていた。
 ビシィッ!
「うっ!」
 鬼崎の顔が歪む。
(ヒャハハハハハハハ! 犯っちまえ! おもちゃにしてやる!)
 封じられていた恐怖の記憶が、彼女の中に一瞬よみがえった。
「ほう。そのケツは、なかなか魅力的だな!」
 サッドは鬼崎の引き締まったお尻に攻撃を集中させる。
「あ、あああ!」
 鬼崎のパンツが破け、ちりぢりになってゆく。
「よし、たっぷりかわいがってやろう。だが、ほかには手を出さない、というわけにはいかんな」
 サッドは鬼崎を鎖で念入りに縛りあげながらいう。
「げ、外道が!」
 鬼崎は唇から血を流しながら、サッドを睨む。
「シビト、グルル! 今夜は、新入りを中心に、たっぷりお仕置きをしてやるとしよう」
 サッドは部下たちに呼びかける。
 女子生徒たちの大半は牢獄に戻されたが、数名はサッドたちの拷問を受けることになった。

「ひ、卑弥呼!」
 地下の牢獄では、鉄格子の向こうに投獄されたばかりの一人の女子生徒を前に、弁天屋菊(べんてんや・きく)が茫然としている。
「クフフフフ。この女を殺されたくなければ、お前の料理人としての腕をサッド様に捧げるのだ」
 シビトが、冷酷な口調で弁天屋にいった。
「き、菊!」
 囚われの身となった親魏倭王卑弥呼(しんぎわおう・ひみこ)が、すがるような視線をパートナーに向ける。
「くそっ! わかったよ。しばらく働いてやる。だから、卑弥呼の生命は保証してくれ。厨房はどこだい?」
 弁天屋は、がっくりとうなだれて、シビトにいった。
 何よりもまず、卑弥呼の身の安全を考えなければならない状況だった。
「階段を上がって、館の1階の奥にある。メイドを何人か使って構わんぞ。さあ、早く行け」
 シビトは、弁天屋にその場を去るようせかした。
「さて、少し楽しませてもらおうか」
 シビトは、牢獄の扉を開け、拘束されている卑弥呼に近寄っていく。
「い、いや! 来ないで! 菊は、菊はどうして行ってしまったの!?」
 卑弥呼は、涙を流して身をよじらせ、できる限りの抵抗を示しながら叫ぶ。
「あれ? わからなかったのか? あの料理人は、お前を売ったのさ」
 シビトが、意地悪な口調でいう。
「そ、そんな! 菊!」
 卑弥呼は、絶望のどん底に叩き落とされた思いだった。
 シビトは、クフフフフと笑いながら、卑弥呼の頬を平手で打ち、衣を裂いて、下着姿にし、髪の毛をつかんで引きまわす。
 暴れる卑弥呼のお尻を、棍棒でこころゆくまで打って、反応を楽しんだ。
 シビトは、弁天屋に対し、卑弥呼の生命の保証はしたが、それ以上の約束をした覚えはなかったのだ。