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リアクション
華やかな席にはふさわしくない深いため息をついている人物がいた。月詠 司(つくよみ・つかさ)である。シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)に連れ出されたが、あいもかわらず、シオンに弄られっぱなしなのであった。
シオンは至れり尽くせりを逆利用して司や回りの子が嫌がるものを用意してみた。
「うわ、ごめんなさい!」
「なに、どうしたのですか?」
麻上 翼(まがみ・つばさ)の前にどっさりと肉、マリネ、ポテトの山を司は差し出してしまう。
「お、女の子に失礼ですよね」
「ぜーんぜん。ボクのためにいっぱい美味しいモノを持ってきてくれるなんて、気が利きますね! えっと、司くんっていいました? ありがとうございます!」
「あ、あはは」
クスクスとシオンがその様子を見て笑っている。その背後に、パラケルスス・ボムバストゥス(ぱらけるすす・ぼむばすとぅす)がすっと姿を現す。
「シオンはツカサで遊んでいるのか…」
「最高のオモチャだわ、ツカサって」
「ふ。俺も先ほど羽根 季保らしき女性にメールアドレスを渡してきたところだ」
「え!? 捕まえなくていいの!?」
「羽根 季保本人とは確認できなかったしな…それに本人だったとしても泳がせたほうが良かろうと思い。美しい黒髪の女性で胸はきゅっと形が整っていたぜ。ただ、目が義眼かどうか見抜けなかった。だから一つダンスを踊って、あとの展開を引き出すためにメールアドレスを渡したってわけさ」
「そう上手くいくかしら」
「まっ、気が向いたら連絡くれるだろう♪ おっと赫夜ってのはどこだ? 俺は何時でも美人の味方よ☆ んぁ? 恋愛は自由? 当然だろ、勿論ナンパもな♪」
「今のところ、姿は見せてないわね」
そういうとまたシオンは司に酷い事をして遊んでいた。
「お久しぶりです、そしてはじめまして、真言様」
閃崎 静麻(せんざき・しずま)が貴賓席で涼司と談笑していた真言に声をかけた。
「おお、静麻君といったね。以前は世話になった。お会いできて嬉しく思うぞ」
「俺もです。…色々真言様とはお話がしてみたいと思っていました。実際にどうなのでしょうか、地球からみたパラミタの印象と言うのは」
「それぞれ思惑があり、パラミタのまだ発見されていない鉱物資源や、生物資源を狙っている連中は多い…そのため、パラミタ人とパートナーになりたがる良からぬ輩もいる」
などと話す真言。真言はそれなりに静麻を信用している様子だった。
「なるほど、ではパラミタ人を利用しようとする連中が出てくるかもしれないわけですね…。人の欲望は尽きないものです」
「はっはっは! おぬしはなかなか食えん奴じゃ」
カッカと笑う真言。静麻も穏やかに談笑しながら、真珠や赫夜目当てに媚びようとする連中を、さりげなくガードしていた。
静麻のレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)も護衛していたが、色んな考えがその頭の中に渦巻いているようだった。
(弓削さんとの剣戟試合に参加したいけれど、来賓の方に傷を負わせる事は避けねばならないです。今回は真言さんの護衛に徹しましょう…ただ、真言さんも剣の道を修める名家の御当主、さぞかし剣の腕がおありのはずだわ。もしかすると赫夜さんが使った双頭剣の扱い方にも造詣があるのかも…。二刀流の双手剣と両手で扱う双頭剣なら状況に応じて接続分離で戦いの幅がかなり広がるはず。ああ、私もその奥義をしりたいものだわ…。何かしら助言を請うべきで、いえ、今は護衛に専念すべきだわ。でも今を逃せば教えて頂けそうな人がいるかどうか、でも面識のない私がいきなり尋ねても…)
「おい、レイナ大丈夫か?」
「はっ! やだ、私ったら! ごほん、護衛護衛!」
静麻に声をかけられるまで延々思考のエンドレスをしていたレイナは、背筋をしゃきっと伸ばして気合いを入れ直す。
「真珠!」
「こ〜とちゃん!」
アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)と天穹 虹七(てんきゅう・こうな)が赫夜を探している真珠を見つけて、声をかけた。
「アリアさん! 虹七ちゃん!」
虹七は真珠に抱きつく。
「虹七ちゃん、だめよ」
「大丈夫です、アリアさん。今日の衣装、とても素敵だわ、虹七ちゃんとおそろいのシフォンのドレスね」
「ありがとう。…あれ? 赫夜は?」
「アリア!」
そこにようやく濃紺に白の藤が金で縁取りされた振り袖を着て赫夜が現れた。
「姉様、どこへ行っていたの?」
「う、うん、ちょっとな…アリアも虹七ちゃんも可愛いな」
「赫夜こそ、素敵よ。ねえ、試合は見に行くんでしょう? 一緒に行っていい?」
「もちろん。あ、そうだ、アリアにも頼みたいことがあるんだ」
「なにかしら?」
「…ここではちょっとまずいから…」
ぼそぼそ年長組が話している間に、虹七は真珠にじゃれつきながら無邪気に
「ことちゃんは、虹七のこと好き?」
「もちろん、大好きよ。とても大事な私の小さなおともだちだもの」
「虹七もことちゃん、大好き!…じゃあ、ことちゃんは、みんなのこと好き?」
「好きよ。私、ひとりじゃないことが、これほど楽しくて素敵なことだとしらなかったの。ひとりじゃできないことも、みんなでやればできるものなのね。もちろん、嫌なこともあったりするけれど、それも友達がいてくれれば、どうでもいいって思えるようになってきたの。だから学校が大好きなの」
「きっと、今の気持ちが、とっても特別で、とっても自然なの。みんなも、ことちゃんのこと、大好きなの」
虹七はにこっと笑うと、真珠はその笑顔にはっとさせられる。
「そうか…そうだよね。虹七ちゃんのいうとおりだよね。…私、自信を持って良いのかな?」
「そうだよ!」
「赫夜、久しいな。健やかそうで何よりだ」
アリアとひそひそ話をしていた赫夜に、イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)が話しかける。
「イーオン殿! 久しぶりだな。…あれ? フィーネさんは?」
イーオンのパートナー、フィーネ・クラヴィス(ふぃーね・くらびす)が後ろの方で誰かに声をかけられていたが、「悪いな、先約があるもので」と軽くあしらってイーオンの傍にやってきた。
「お久しぶり、赫夜」
「赫夜、今、話をしてもいいだろうか?」
「…なんだろう?」
「赫夜、このパーティでの振る舞いによっては赫夜の将来を決めることになるかもしれないぞ」
イーオンの静かな声に赫夜は不安げな表情を見せる。
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