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第一回葦原明倫館御前試合

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第一回葦原明倫館御前試合
第一回葦原明倫館御前試合 第一回葦原明倫館御前試合

リアクション

   弐

  第一回戦
○第四試合
 琳 鳳明(りん・ほうめい)(シャンバラ教導団)VS.東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)(葦原明倫館)

「これは注目カードだねー」
 氷雨が対戦表を見ながら言った。
「どうしてですか?」
 デロちゃんが尋ねる。
「秋日子さんはボクと同じ銃使いだから、そこんとこでも興味深いんだけど、こっちの鳳明さんって人、試合前にちょっとあんまり緊張しているもんだからお話したんだ」
 そういう時、氷雨の無邪気な外見は相手に警戒心を抱かせない。
「そしたらね、秋日子さんも鳳明さんって人も――」

 呼吸を整えて気を丹田に集め、呼気と共に一気に全身に巡らす。
 鳳明はこれまで大槍を使っていた。槍術こそがそれを教えてくれた義父との大切な繋がりだと思っていた。だが今は、拘りを捨て、持てる力の全てを出し切ろうと考えている。
 差し当たっては、完全に錆付いていると思われる八極拳を使いこなせるようにしなければならない。この御前試合は、腕試しにうってつけだ。
 フッ! と鳳明は息を吐き出した。
 ――気力も充実、いける!
 対する秋日子は、くるくるとRSAF エンフィールドNo.2を指先で回した。欠片も緊張していない。彼女は武士の心を学びつつ、銃を扱うという(自称)サムライガンナーである。自分がどれほどの腕であるか、試してみたくて仕方がない。
 緊張の度合いは正反対だが、二人共に全く同じ目的を持っているという点で、確かにこの勝負は興味深かった。
「始め!」
 同じ目的だけに、初手も同じだった。
 鳳明は【鳳凰の拳】を、秋日子は【光条兵器】を使用した。鳳明の拳と、秋日子の光がぶつかり合う。
「くっ……!」
「何のこれしき!」
 秋日子が距離を取る。鳳明が使う八極拳は、極端に間合いが短い。近づかなければ、攻撃は絶対に当たらないのだ。
 鳳明はスキル【後の先+神速+軽身功】で間合いを詰めようとした。だが、
「下がガラ空きだよ!」
 膝に衝撃を受け、鳳明の足が一瞬止まる。その隙を逃さず、秋日子は額に向けて引き金を引いた。
 コルクといえども衝撃は強く、後ろへすっ飛んだ。勝負はそれで決まった。
 秋日子が差し出した手を、鳳明はぼんやりと眺めた。
「……えっ?」
「いい勝負だったね!」
 秋日子の笑顔を見て、鳳明は自分が負けたことを知った。
「そっか……私負けたんだ。……あ、いえあの、ありがとうございましたっ。悔しくはあるけど、東雲さんと試合えて良かった」
「秋日子でいいよ! こっちこそ、ありがとう!」
 秋日子と、彼女の手を取り起き上がった鳳明に観客席からは惜しみない拍手が送られた。


○第五試合
 駿河 北斗(するが・ほくと)(イルミンスール魔法学校)VS.クリムリッテ・フォン・ミストリカ(くりむりって・ふぉんみすとりか)(イルミンスール魔法学校)

 試合場に炎の渦が起った。
 その中からツインテールの少女が現れる。
「爆炎の魔女クリムちゃん参上。さあ私の相手出てらっしゃい!」
「――俺だけど」
 先に待っていた北斗は、呆れ顔で答えた。クリムは目を真ん丸にする。
「ほ、北斗ぉ!? あなた何やってるの!?」
「だから試合。まさかいきなりクリムが相手とはなあ。審判さん、これってアリ? 俺ら、パートナーなんだけど?」
 プラチナムはかぶりを振った。
「パートナーと戦うことがあるかもしれないとは、告知してあります」
「そ、そんなこと言ったって、いきなりよ!?」
「そうか、仕方ないな、それじゃ」
「北斗! あっさり諦めないでよ!」
「そんなこと言っても、ルールじゃ仕方ない。俺はパラミタ最強の魔法剣士を目指してるんだ。どんなことがあっても負けないのが最強だ。だから俺はやる。クリムは?」
「わ、私だって……やるわよ!」
「話がついたようですね。では第五試合、始め!」
 プラチナムの容赦ない一言で、二人は対峙した。
 クリムにとって北斗は弟のようなものだ。傷つけたくない。苦しめたくない。だが北斗が試合を望むのであれば、クリムに出来るのはなるべく早く終わらせることだ。
 クリムの手の平に、小さな火球がいくつも生み出される。
「行っくわよー、ファイアボール・エクスプロージョン!」
 その火球が一つに纏まり、容赦なく北斗にぶつけられる。
「うわぁ!」
「ほ、北斗、大丈夫!?」
「敵の心配してんなよ!」
 北斗は棒を下段から切り上げた。素早く避けたクリムはしかし、その棒が光に包まれて伸びるのを見た。
「しまった、光条兵器……!」
「クリム! 俺が相手だからって寝惚けてんじゃねえか!?」
 返す手で、北斗はクリムの腰を薙ぎ払った。クリムは吹っ飛ぶ。
「クリム!」
 プラチナムの判定が出るのを待って、北斗はパートナーに駆け寄った。
「大丈夫か!?」
「強くなったわね、北斗……」
「ああ」
 にやりと北斗は笑った。
「これでドージェにまた一歩近付いたぜ」