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リアクション
空京タウンにて
セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)、パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)、ティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)の3人は、のんびりとタウン散策を楽しんでいた。そこからそう遠くない空京の街路で、シズルらが協力を要請したのは、武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)であった。
「なんだとぉおおおお!!!!
春一番でセイニィのスカートがめくれてパンツが見えそうだとぉ!!!!!」
シズルから話を聞いた牙竜が顔を真っ赤にして叫んだ。
「そんな、そんな……俺の理性の崩壊の危機じゃないかぁ! 待ってろセイニィ、すぐ行くぜ!」
「あちょっと! あーあ……行っちゃった」
珍しくブラウスにフレアスカートという姿のシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)が声を掛ける。
「スカートめくり、ですって? それは聞き捨てなりませんの!」
丁度そこに居合わせた影野 陽太(かげの・ようた)のパートナーであるノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)はにっこりした。陽太不在の折で、一人空京でウィンドウショッピングしていたのである。
「わあ、北風の精霊さんなんだ!わたしは氷結の精霊なの。
イタズラばっかりで乱暴なメクリ君より、おサエちゃんのほうが好きだよ!」
それを聞いて、おサエは喜んだ。
「ホント?! 嬉しいな」
「うん、、おにーちゃんはなんだか『にんむ』とか言って、どっか行っちゃってていないの。
だからワタシが、サエちゃんのお手伝いをするよ!!」
そう言って、駆け出していった。
リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が首をかしげた。
「ティセラはねぇ……そういうの無頓着だから。気になるね。ティセラのとこへ行ってみるよ。
……おサエパワーはいらないわ。
要はメクリパワーを使わせないか、めくられても見させなければいいんだから」
ソルファイン・アンフィニス(そるふぁいん・あんふぃにす)がうんうん、と頷く。
「ええまあ、少々目のやり場に困りはしますけど、誰かが傷つくわけでもないですし。
春一番ですか……季節の変わり目をはっきりと感じられるのは悪くないと思いますよ。
今のシャンバラではあっという間に時間が過ぎていってしまいますからね」
最後のほうで、遠い目をしているソルファインを、振袖姿の小柄な童子 華花(どうじ・はな)がつつく。
「ちょっと、それずれてると思うぞ」
「……そうですか?」
「行くよっ」
リカインが声を掛け、3人は連れ立ってティセラを探しに行った。
日向は暖かいものの、建物の影に入れば、冷たい風が吹きつける。リュシエンヌ・ウェンライト(りゅしえんぬ・うぇんらいと)は、寒さに首をすくめた。
「ただでさえ寒い日なのに風が強くて嫌になるわよ、ホント。さっさと家に帰ろう……」
「ふーん、おねーさん寒いの嫌なんだ?」
「決まってるでしょ。こんな冷たい北風、耐えられないわ! って、誰よあんた?」
街路樹の枝に腰掛けていたメクリが、リュシエンヌに向かって片手をすっと上げた。
「俺はメクリ。春風の精霊だ。そら、春風のパワーをあげる、温かい風を巻き起こすことができるよ」
メクリはそういって、自ら起こした風に乗って、どこかへふわりと漂っていってしまった。
「……変な奴にも絡まれちゃったしツイてないな。って、あ、あの姿はもしかしてティセラ!!」
件のティセラはゆったりと歩きながら、他の二人に言っていた。
「ちょっと寒いけどいいお天気ですの〜!」
「かえってこの空気の冷たさが気持ちいいよ」
ティセラにセイニィがそう返すと、奔放に伸びをした。
「……だね」
パッフェルが言葉少なに応じる。
そこへ、息を切らし、牙竜が駆けつけてきた。セイニィの元につくや、イナンナの加護を発動させる。
「な、なによいきなり?」
「俺の理性の…… いやもとい、セイニィの危機なのだ!」
「そうなのです! 女性の危機なんですの!」
少し遅れてやってきたシャーロットも叫ぶ。
事情がわからず、きょとんとするセイニィ。
そこへやってきた桐生 円(きりゅう・まどか)が、突然パッフェルの右腕に腕を絡ませた。彼女は事情を何も知らない。たまたまオフのパッフェルと、買い物に行こうと言っており、待ち合わせ場所に現れたのだ。
「パッフェルー! 遊びに来たよー」
「あ、ああ。円」
「ずいぶん暖かくなってきたね、春がもうすぐそこまで来てるのかな?
ねえねえ、今度一緒に、お花見とか行かない?」
「そうね。良いかも」
「ホントー?? やったぁああ」
「でも、もう少し暖かくならないとかしらね」
「そーだね〜。早く春にならないかなー」
「んじゃリクエストにお応えして」
そこへ唐突にメクリが現れた。
片手を持ち上げるような動作と共に、一陣の強い暖風が巻き起こる。
「あ、危ないっ!」
ノーン、牙竜、シャーロットの3人が、同時にセイニィに向かっておサエパワーを発揮した。
駆けつけてきたリカインが、ティセラをかばうように立ち、盾で風を防御する。
華花がティセラのロングスカートをすかさず手で押さえた。パッフェルと円は、ゴスロリスカートが大きくまくれ、ちらりと真っ白なレースの下着が覗く。
ティセラは無事だが、その脇で盾を持つリカインのスカートの裾は思い切りめくれ、下着が見え隠れしている。華花がボソッと言う。
「……リカイン姉ちゃん、パンツ、見えてるぞ」
「うわぁ、なにするんだ!?」
円が叫んでパッフェルのスカートを手で押さえる。自分も見えているのに気づいて、さらに叫ぶ。
「ほんとに、なんなのこの風!
見るな!あっち向けよ馬鹿ー!」
リュシエンヌはティセラのほうをじっと見ていたが、
「あああー!! ティセラのパンツが見えそうで見えないっ!! ええい、もどかしいっ!!」
大鎌形の光条兵器が、リュシエンヌの手に現れる。
「ティセラあああ〜〜!!
長いスカートじゃなくて絶対ミニが似合うに決まってるわ……フヒヒヒヒ……」
手にした鎌を通じて、メクリパワーを送ると、さらに風が強まった。華花がスカートの裾につかまったまま、こいのぼりのようにばたばたする。
「おー。これは楽しいぞ!」
「いやいやいや、さすがにこの強さではちょっと危ないかも。吹っ飛んでいってしまいますよ」
ソルファインがあわてて華花を捕まえる。そしてリュシエンヌに向かって、叫ぶ。
「そんな物騒なものを振り回してはいけません!! まずは話し合いましょう!!」
「大丈夫。ティセラが履いているロングスカートだけを切るように貫通設定を施してあるから。
切れるのはスカートだけよん」
「ああ、そうでしたか。傷つけるわけではないのですね。それなら結構です」
ソルファインが笑みを浮かべる。メクリはいつの間にかいなくなっていた。
「そういう問題じゃなああああい!!!! この、不届きものども!!
パワーブレス+ヒロイックアサルト+ドラゴンアーツの豪華仕様をお見舞いしてやるっ!!」
リカインが叫んで、リュシエンヌに向き合う。ソルファインが華花を抱えたまま叫ぶ。
「リカさん、それはいけません!! 暴力で解決はしません!!」
「んー。風を防げばいいのか」
華花がおもむろに氷術で氷壁を作り出した。温風が氷壁にぶつかり、渦を巻く。すさまじい風だ。立つどころか目も開けていられない。
全員がその場に突っ伏し、風がやむのを待つしかなかった。
やがて穏やかになった場に、シャーロットがおもむろに立ち上がった。まだ突っ伏したままのリュシエンヌに向かい、
「ジャスティシアですの!」
と叫んだ。
「私の目の前で、セイニィへの強制猥褻行為。
検察の手を煩わせるまでもありません。死刑です」
と言い放つと逮捕術で拘束する。
「これが俺の春一番だ!煩悩ごと吹き飛べ!」
牙竜が叫び、カタクリズムで拘束されたままのリュシエンヌを吹き飛ばしたのであった。
「……邪魔者は片付いたことですし、セイニィ、買い物にでも行きましょう」
「セイニィ、お茶でも飲みに行かないか」
シャーロットと牙龍が同時に言った。
「あら、私が先でしてよ」
「俺と出かけるよな?」
ノーンがおっとりと言う。
「みんなくたびれちゃったし、みんなでお茶しに行こうよ」
「そうですね。皆さんでお茶に参りましょう」
ティセラがにっこりと春の日差しのような微笑みを浮かべた。
暴風は去り、暖かい日差しに春の気配を持つ空気だけが残っていた。
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