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砂漠のイコン輸送防衛前線

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砂漠のイコン輸送防衛前線

リアクション

――、輸送一日目

 出発した輸送隊が砂漠を進む。
 砂漠とはいっても、カナンの砂漠は礫砂漠とあって砂地は少なく、歩行するイコンやトレーラーが足をとられることはない。トレーラーが進むのも舗装はさてはいないものの、道ではある。
 黒乃たちのGA:宅急便を先頭にして、6台の輸送車列(コンボイ)を組み、その脇をイコンが護衛として固めて砂漠を直走る。空では偵察用の飛空艇と、九品寺やサポート役の乗る飛空艇が行く。
 GA:宅急便を0号車として、何も積載せず、他車両の荷台に改良型イコンを以下のように積載している。
 1号車にイーグリット・アサルト、クェイル
 2号車にイーグリット、コムランド
 3号車にアグニ、アルマイン・マギウス
 4号車に玉霞、鋼龍
 5号車にセンチネル キラー・ラビット
 
 なお、1号車の運転に関しては新風 燕馬(にいかぜ・えんま)サツキ・シャルフリヒター(さつき・しゃるふりひたー)が行っている。
 護衛は交代制で、何時間か置きに部隊を止めては、護衛のイコンをトレーラーから出し入れする。燃料対策として、これはダリル提唱した。長旅ということで襲撃を受けたときにイコンが動かないのは危険であり、トレーラーで待機する合間にイコンのエネルギー回復と、整備をすることで、潤滑な護送をするための計らいだ。
 イコンは通常可動で最大12時間ほど動くが、戦闘時には1〜2時間しか動けない。消耗率が高ければ、それ以下の稼働時間と成る。なら、敵との戦闘が予測される今回のミッションにおいて、イコンの燃料をある程度保っておかなければならない。
 また、参加者への負担の軽減と言う面もある。カナンの砂漠を抜け、学校の回収部隊の待つ国境ジャタの森までに丸2日は要する。機械以上に生徒たちへの配慮が必要だった。生身で護衛や見張りをしている者たちにも休憩を入れさせる。

《ジーナより、前方の安全を通達おねがいします》
《同じくガイアス。我も安全を確認》
 ミスファーンで先行し、上空から偵察するジーナと小型飛空艇オイレに乗るガイアスからの通信がトレーラー部隊に残ったユイリへと届く。
《わかりました。全車両運転手に通達。前方に異常なし、通常運転を継続してください》
《了解だにゃ》
《了解です》
 0号車の音子と、1号車のサツキがジーナの通信に応答する。
「どうやら、出発直後を狙った襲撃はなさそうだね」
 0号車の荷台の上で見張りをしているジャンヌが地平を眺める。どこまでも、何も無い荒地が目の前に広がっているだけだ。
「この当たりで待ち伏せは無いはずですぅ。アンブッシュするには開け過ぎているですぅ」
 ルノーは【17口径75ミリ戦車砲SA35(六連ミサイルポッド)】を設置した銃座に座り、それでも当たりを警戒する。敵が迷彩を使用している可能性だってある。
 しかし、今のところは深く警戒するような所はない。白竜が選定したルート内ではここはまだ安全地帯と言えるのだから。
 同じくして最後尾の5号車を守備するリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)の肉眼にも《超感覚》にも、危険性は察知できなかった。
「こら! ディジーなにするのよ! 危ないじゃない!」
寧ろ、ペガサスに跨って後方を飛行しているシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が振り落とされないかが、心配なくらいだった。
「ヒマっすね」
アレックス・キャッツアイ(あれっくす・きゃっつあい)呟く。護衛に身が入ってなく、【音楽の教科書】を開いてそこに乗っている楽譜を鼻歌で歌う。別トレーラーに乗っている双子の姉であるサンドラ・キャッツアイ(さんどら・きゃっつあい)がいたなら、彼は叱られていただろう。

「まあ、何事もないのが一番だ」
「であるな……」
 コクピットの席にもたれかかり、十田島 つぐむ(とだじま・つぐむ)が腹を抑える。少し腹が減ってきたのだろうか。
 後部座席のガラン・ドゥロスト(がらん・どぅろすと)は情報パネルでハニカム・メーカーの弾薬状況を確認する。
 二人とも、何時あるかわからない襲撃に備えて、ずっと操縦席にて待機しているつもりだ。護衛の順番ではい今もこうしている。
「つぐむ様〜、食事をもって来ましたわ」
 コックピットハッチを開いて、ミゼ・モセダロァ(みぜ・もせだろぁ)が操縦席へと入ってくる。手に持った皿にはハムやチーズを載せたリッツサンド。つまむ程度の食事でいいと言った、つぐむの要望に答えて竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)が作った食事だ。
 ミゼはリッツを1つ口に咥え、つぐむへ差し出す。
「はい、口移し……あらぁ?」
 しかし、つぐむはミゼを無視して席を立つ。
「トイレだ。何かあったらお前とガランで出てくれ」
 ミゼを躱してトレーラー内の仮設トイレへと向かうつぐむ。腹を抑えていたのは、空腹からではなかったらしい。
「ちぇ……まあいいか」
 咥えていたリッツを自分の口に頬張ると、ミゼはつぐむの座っていた座席に張り付き、猫のように頬擦りを始める。
「〜ん、つぐむ様の温もりがする……」
「ミゼ、いらぬ事をしていると、つぐむに叱られるぞ」
 ガランがミゼへと注意を促すが、彼女は聞いている気配はなく「残り香が……」と呻くだけだった。何を言っても無駄だと思い、ガランは隻腕を反対脇に挟んで腕組みし、瞑想することにした。
「戻ったぞ。ミゼ席を変われ……てなにしているこの変態、汚れるだろうが
「ああん」
 つぐむは席に貼りつくミゼを踏みつけて、軽蔑的に見下げる。
 やれやれと思いつつ、ガランは再び瞑想に入った。