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リアクション
★ ★ ★
「エントリーナンバー12番、ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)さんです」
「よろしく頼むのだ」
普段とは違う衣装に身をつつんだジュレール・リーヴェンディが、ドスドスという無愛想な足取りで花道を進んで行った。
普段のイルミンスールの制服とは違って、背中に小さな偽物の羽根がついた水色のハイレグレオタードを着ている。それだけを聞くと意外と色っぽいように感じるが、機晶姫としての手足の無骨な装甲はそのままだ。それゆえ、いかにも狙ったふうなレオタードとの相性は最悪で、艶めかしい素肌ではなく硬質な装甲が丸見えなので、そちらの方の嗜好がある者でないと、あまり美しいとは感じないだろう。
顔立ちはぷにっとした幼女であるので、なおさらギャップをあおってしまっているとも言える。
綺麗な蜂蜜色の金髪は左右でクルンとまとめてシニョンにしており、印象的な金の瞳の上の眉は細く、キリッと切れ上がっていて凛々しかった。小さな鼻と口も品がよく、黙っていれば絶世の美少女なのだが……。
「はうぅ〜。い……、痛々しい……」
なんだか学芸会が気に入らなくて、妖精の衣装のままふてくされて歩いているようなジュレール・リーヴェンディの姿を見て、カレン・クレスティアがそっとハンカチで目頭を押さえた。
アルマインに乗るのであれば、パートナーは妖精の格好が必須だよねというカレン・クレスティアの勝手な思い込みで、ジュレール・リーヴェンディは、コックピットの中ではずっとこの格好をさせられているのだ。もちろん、本人には大不評である。
コンソールに囲まれた閉鎖空間ではほとんど気にならなかったのだが、こうやって衆目の下へ出てしまうと、その不自然さが際立っていた。
「面白い見世物だった、だがこれで終幕だ。機晶石エネルギー充填、ファイヤー!」
ステージ上のパフォーマンスということで、ジュレール・リーヴェンディがレールガンを取り出して派手に発砲した。出力を落としてあるとはいえ、上空に打ち出された弾体のソニックブームが観客の髪をかき乱す。
「次弾装填!」
パカッ!
調子に乗るジュレール・リーヴェンディの足許で、奈落の口が開いた。
「落ちる……」
レールガンにエネルギーを回しているために浮遊できないジュレール・リーヴェンディが、そのまま奈落に落ちた。
「止めだからいい! やれっ!」
ヒュンと、奈落の底からジュレール・リーヴェンディのラストシュートが空へと飛んでいった。
「ふ、不憫な……」
思わずカレン・クレスティアがつぶやいた。
「では、クローディア審査員、コメントはありますでしょうか」
「ええと、ちょっと印象の強い衣装だったけど、格好良かったと思うよ」
言葉を選んで、クローディア・アッシュワースが答えた。
★ ★ ★
「エントリーナンバー13番、セレア・ファリンクス(せれあ・ふぁりんくす)さんです」
しゃなりしゃなりと、セレア・ファリンクスが花道に進んできた。
髪の色に合わせて鮮やかな瑠璃色に統一されたドレスは、華やかで艶やかなものであった。前面に編み紐のあるコルセットドレスに、袖口にレースをあしらった長いつけ袖がついている。二段になったスカートは全面が大きく空いた三角型で、レースをあしらったエメラルド色の帯で絞って美しいプリーツを作っていた。
空いてしまっているスカートの前面には、レースのついたエメラルドの帯に留められた布が垂れ下がって前を隠してはいる。だが、左右が大きく空いてしまっているために、左右で紐を縛って留めたショーツは、横から顕わになってしまっていた。
ヒールの高い編み上げのショートブーツは、白いストッキングに膝上までおおわれた細い脚を長く見せていた。
髪の両サイドにはエメラルド色のリボンを飾り、鬢に巻きつけて前へと垂らしていた。首には、クロスを提げたチョーカーをつけている。
花道を戻ってきたセレア・ファリンクスが、審査員席にいる健闘勇刃に気づいた。思わず、チラリと腰の前布を翻して健闘勇刃にウィンクを送る。
「うう、これは、咲夜とどっちに投票したらいいか分からなくなったぞ……」
本気で困りながら、健闘勇刃が頭をかかえた。
観客は、コンテストの出場者に自由に投票できるのだが、当然のことながら、一人一票までである。天鐘咲夜とセレア・ファリンクスの両方に投票することは不可能であった。
ステージでは、セレア・ファリンクスがパフォーマンスの歌を披露している。
その歌声で気を落ち着かせると、健闘勇刃はおもむろにコインを取り出した。
「仕方ない、こいつで決めてしまおう。えいっ!」
勝敗を運に任せると、健闘勇刃がコイントスをした。
「表なら咲夜、裏ならセレア……」
落ちてきたコインをパシンと手の上に載せる。
表だ……。
「ああ、すまない、セレア、許してくれ」
陰で、健闘勇刃はセレア・ファリンクスに謝った。
「健闘審査員、いかがでしょうか」
「ええと、甲乙つけがたい美だと思うぞ」
とりあえず、最終結果が出るまではと、健闘勇刃がお茶を濁した。
「それでは、天王寺審査員、コメントをお願いします」
「はあ、すっごく綺麗だよね」
ちょっと溜め息混じりに、天王寺沙耶が言った。
「衣装としては、今のところ一番だよね」
うんうんとうなずきながら、天王寺沙耶が満足気に言った。
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