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リアクション
【7班】
「……よし」
カセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)は目の前で行われている喧嘩の惨状に、パートナーから借りた『無量光の数珠』を取り出した。
効果がどれほどかは知らないが、少しでも援護になるなら……と、そちらへ向けて数珠を投げつける。
数珠は――頂点へ達したところで爆発した。
「え?」
それに気を取られた不良たちが慌てふためく。
「うわ、何だこの光――!?」
凄まじい光を発しながら爆発した数珠は、跡形もなく消えてしまっていた。否、バラバラになってはじけ飛んだのだ。
カセイノは意外な効果に驚きつつ、冷や汗した。これは、失くしたでは済まされないだろう。――自由時間を使って見つけ出すしかないな、うん。
自分は何も見なかったことにして、カセイノはそそくさと薪を手に歩き出した。
【6班】
「ちょっと行ってくる」
と、笹奈紅鵡(ささな・こうむ)は薪を置いてすぐに歩き出した。
彼女の向かう方向に何があるか気づいたアインス・シュラーク(あいんす・しゅらーく)はノヴァ・ルージュ(のうぁ・るーじゅ)へ声をかけた。
「ノヴァ、紅鵡さまを支援してきてください」
「支援? 分かった」
と、元気よく返して紅鵡を追いかけていくノヴァ。
「何かあったのか?」
鍋に水を入れるアインスにゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)が尋ねた。
「先ほどから少々騒がしい様子ですので」
「……で、ここからどうするんだ?」
と、目をきらめかせるゲブー。彼はカレーの作り方を一切知らないが、カレーを愛してやまなかった。
「カレーのルゥを入れるのです」
一方のアインスはてきぱきと調理を進めていく。
「確かに、あちらの方が騒がしいのである」
と、呟くホー・アー(ほー・あー)。
退屈していたバーバーモヒカンシャンバラ大荒野店(ばーばーもひかん・しゃんばらだいこうやてん)はホーへ言った。
「あの人たち、パラ実のみんなと遊びに行っちゃったのかな? いいなー、いいなー」
「……それは、大丈夫なのであるか?」
「え、何が?」
にこにこと無邪気な笑みを浮かべるバーバー。
【7班】
「メガネの有無は関係ないじゃろう」
と、ミア・マハ(みあ・まは)はぼやきながら、玉ねぎを切り始めた。
「鶏肉も大きめでいいよね。どうせ煮込むし」
と、適当な大きさに切り分けるレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)。
手際は良いが、どの具も大きめに切られていた。
「よし、あとはこれをコーラ煮して――火、お願い」
薪に火を点けたカセイノに、何も知らないリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)が声をかけてきた。
「素敵なカレーが出来上がりそうですわね」
「ああ、そうだな」
と、適当に返すカセイノ。数珠が爆発したなんてばれたら、彼女はきっと怒るはずだ。
だがリリィは幸いなことに、まだカセイノを怪しんではいなかった。
米と水を入れた飯ごうを火にかけて、土御門雲雀(つちみかど・ひばり)は顔を上げた。
「他に何か手伝うことはありますでしょうか?」
「うーん、あとは鍋に具を入れて、水とルゥを入れるだけだよ」
と、鶏肉を煮終えたレキが答える。
「ということは……」
「出来上がりを待つだけ、だね」
と、エルザルド・マーマン(えるざるど・まーまん)。
チームワークが良かったのか、他の班より先に最終段階へ入ってしまった。
レキがミアと協力して鍋に具を入れていくのを見て、雲雀はその向こうの様子がおかしいことに気がついた。
「どうしたでありますか、松田さん」
急に声をかけられて松田ヤチェル(まつだ・やちぇる)ははっとした。
「ああ、雲雀ちゃんにエル君……カナ君が薪を拾いに行ったきり、全然帰ってこないのよ」
と、溜め息をつくヤチェル。すっかり待ちくたびれた様子だ。
「薪を拾いに、か……」
エルザルドは妙な不安を覚えた。先ほどから周辺が騒がしいことに気がついてはいたものの、まさか――。
「んー……ちょっと見に行ってみるか、エル」
と、雲雀が言い、エルザルドは頷いた。
「そうだね、場所が場所だし、もしかしてってこともあるからね」
「で、その由良さんはどの方向へ?」
「あっちの方。ごめんね、二人とも」
と、ヤチェルが申し訳なさそうにすると、雲雀たちは笑った。
「そんなことないであります」
「ヤチェルちゃんの謝ることじゃないよ」
先ほどの爆発を挑発と受け取った不良たちは、再び武器を手に取り始めていた。
「援護するよ!」
と、叶月たちの後ろから紅鵡が声をかけた。
不良たちの足元を狙って援護射撃をする紅鵡。その姿を見て、ノヴァが駆け出した。
「紅鵡さまを邪魔する人たちをめちゃめちゃに壊せばいいんだね!」
はっとして紅鵡が叫ぶ。
「ノヴァ! 殺さないで、ただ追い返すだけでいいの!」
「えー、そうなの?」
ぴたっと足を止めて、ノヴァは程々に不良たちを相手にし始めた。
「あーあ、モヒカンが乱れちゃってるよ」
と、前線を外れた不良の一人に近づき、バーバーモヒカンはその頭をセットしだす。戸惑いながらも、不良は大人しくしていた。
いい加減、両者ともに疲れが見えてきていた。
「あーあー、派手にやり合っちゃって何してんの、ほんとに……」
と、呆れた声を出すエルザルド。
「しかもあれ、明らかにバテてるの、由良さんじゃね?」
と、雲雀。
彼女の言う通り、叶月はすっかりバテていた。得意の蹴りにもキレがない。
「雲雀、アレ頼める?」
「アレって……もしかして、アレか?」
「俺は基本的に汗臭い殴る蹴るは嫌いなんだよ」
と、エルザルド。
雲雀は一つ息をつくと、歩き出した。