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イルミンスールの割りと普通な1日

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イルミンスールの割りと普通な1日

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●ユニコーンは乙女の下に。

 神代明日香(かみしろ・あすか)はアゾートを誘い、ユニコーンを探していた。
 生息地は限定されているが、きっとイルミンスールでも飼育はされているからだろうと思ったからだ。
「でも、ユニコーンって案外存在自体がセクハラですよねぇ……」
 困ったように、明日香はアゾートに話しかけた。
「え、えっとどこがだろう? 一角を持った白馬だから……」
 どうやらアゾートはユニコーンの俗説を知らないようだった。
「ユニコーンって、純潔の乙女の施ししか受けないみたいなんですよ」
「……!」
 ぼっとアゾートの顔が真っ赤になる。
 どうやら意味が通じたようで、一安心だ。
「あ、いたいた」
 メイド服をひらひらと揺らしながら、明日香はユニコーンの下へと駆けていく。
 ユニコーン――姿形は馬に一本角を持った生物。処女の懐に抱かれて初めて大人しくなるといわれている生物だ。その角には毒に汚染された水を清める効果があるとか。そしてユニコーンの角は万病に効く薬の材料になるとまで言われている。
 アゾートが知識として覚えていたのは後者だ。自分の研究について何がしかの成果があるのではないかと思っていた。
「ソフィアちゃーん!」
 おーい、と手を振っている明日香の下へアゾートは急ぐ。
 ユニコーンは二人を受け入れ、首を摺り寄せてきたり、大人しくブラッシングを受け入れたりしていた。
「君に乗せてもらってもいいですか?」
 明日香がユニコーンに頼んでみると、ユニコーンは二人が乗りやすいように座り込んだ。
 どうやら、人語を理解できるようだ。
「やった! ソフィアちゃん、どこいきたい?」
「うーん……。みんなの所に行ってみたい、かな」
 アゾートはそう答える。ユニコーンも理解したようでゆっくりと立ち上がると、わいわいと他の幻獣と触れ合っている人たちのところに向かっていくのだった。



 レイカ・スオウ(れいか・すおう)は息巻きながら、ユニコーンを探していた。
 ユニコーンの世話をする為ではない。いや単位のためならそれも当てはまるが、本来の目的はそうではない。
 パートナーのカガミ・ツヅリ(かがみ・つづり)に思いを伝える、後押しの願掛けをユニコーンにしたかったのだ。
 獰猛な性格から、群れてはいないだろうと予測してレイカは敷地の奥へとどんどん進んでいく。
「レイカ、何をそんなに急いでるんだ?」
 カガミがレイカを呼び止める。
「なんでもないですよ! ユニコーンを早く見つけないと!」
 振り返り、力強く言う。
「別にユニコーンじゃなくとも、他の幻獣を飼育して単位を貰えばいいじゃないか?」
「そ、それじゃあダメなんですよ!」
「……ふう、そうか。じゃあユニコーン探しをしようか」
 レイカの揺れない意思に、カガミが折れた。
 そうして、二人は探し続けるが、一向に見つかりはしない。
 何十分と探し続けた。
 微かに何かを叩く音が、レイカの耳に届く。
「何か……聞こえた?」
「声も聞こえるな」
 もしかしたら、自分たち以外にユニコーンの飼育をしている人たちかも知れない、とレイカは思う。
 うっすらと自分たちが来たほうから、影が見えた。
 馬のようなシルエットに、人が二人乗っている。
 遠目からうっすらと見えるだけで、正確には何かわからない。
 それは、ゆっくりと座り込むと、上に乗っていた二人を降ろしレイカたちのほうへと向かってくる。
 影が実体を帯びる。
 白い馬。一本角。
 ユニコーンだ。
「あっ!」
 見つけた。レイカの表情が嬉しそうに笑みを作る。
 レイカは、ユニコーンの下へと駆け寄る。
「おい、レイカ、待て!」
 カガミの静止を振り切ってユニコーンの下へひた走る。
 そして、視線が合わさる。
(カガミに自分の思い、伝えられるのかな……)
 不安が胸をよぎる。ユニコーンに出会い、カガミを想う気持ちを伝えるための勇気を貰いたい。
 まっすぐにユニコーンを見る。
 ユニコーンも穏やかにレイカを見返す。それは何かを探っているようだ。
「レイカ!」
 後ろからカガミの声がした。
 そして、ユニコーンはレイカを力強く押した。
「きゃっ!」
 尻餅をついてしまいそうになるところを、カガミに支えられる。
 カガミの手が暖かい。
「このやろ……」
 レイカをしっかりと立たせてカガミはユニコーンを睨み付ける。
「待って!」
 レイカはカガミを止めた。
 きっとこれはユニコーンがレイカの願掛けを受け取って後押しをしてくれたのだと、思った。
「ねぇ、カガミ、聞いて?」
 カガミをしっかりと見据え、レイカは深呼吸した。
「私、ね……」
 顔が熱い。じっとりと汗が滲んで来た。
 それでも、言わないと。
「カガミ、あなたが……好き、です」
 言った。急なことで、カガミの顔がまともに見られない。目を瞑ってしまった。
 そして数秒が数十分にも思える時間。レイカは恐る恐るカガミを見る。
 そっぽを向いて、頬を染めて今言われたことを必死に理解しようとしている。そんな顔だった。
「カ、ガミ?」
 どうすればいいのか分からなくなって、レイカはカガミに声を掛けた。
「え、あ、ああ、な、なんだ!」
 もしかしたらこれは脈アリなのではないだろうか。
「ずっとお前を見てきた。本当はこういうこともオレから言った方がよかったんだろうけど……」
 その先の言葉はなくとも、カガミがレイカに何を言いたいのかは分かった。
 だから、レイカはカガミの台詞を中途で止めさせ、行為で示したのだった。

担当マスターより

▼担当マスター

来宮悠里

▼マスターコメント

 初めましてお久しぶりです。そして執筆遅延してしまいほんとーーーーーーに申し訳ございませんでしたぁぁぁぁああああああorz
 前回と打って変わって、参加者50人MAXにとても戸惑いました。ちょっと涙目でした。
 来宮悠里プレゼンツ、イルミンスールの割りと普通な1日、楽しんでいただけたでしょうか?
 誰だてめぇ! って方はマスターページを見てもらえると、ちょっとはわたしのことがわかるかもしれません!

 今回のシナリオのMVPキャラは間違いなくミスリルゴーレムとスライムですね。よく働いてくれました。
 というか、何がつらかったって、スライムからめた部分がとてもつらかったです……。本来ああいう系統のノリは余り書かないものでして。戸惑いつつも頑張ってみました。お気に召したらとても嬉しいです。

 では次回も参加してやってもいいぜ! って方がいらっしゃいましたら、来宮悠里のシナリオをよろしくお願いしますっ!