イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

SPB2021シーズンオフ 球道inヴァイシャリー

リアクション公開中!

SPB2021シーズンオフ 球道inヴァイシャリー

リアクション


【十一 来季への布石】

 合否発表が終わると、既に予定されていたように、選手とファンの交流会がグラウンド上で始まった。
 いの一番に飛び出してきたクマラが、現役選手達の間を駆けずり回ってサインを大量に貰っているのを、エースはただ苦笑いで眺めるしかなかった。
 他にも、大勢の百合園の女生徒達が一斉にグラウンドに下りてきて、自分達と同年代のコントラクターがプロ選手として活動する様に感嘆の声をあげたりする者も居れば、本場メジャーからやってきた選手達を取り囲み、興味津々で色々質問する姿など、実に様々な光景がそこで展開された。
「成る程……単に媒体を使っての広報活動のみならず、こうして実際に選手とファンが触れ合う……実に新鮮ですわ」
 いつの間にか歩の隣に佇んでいた亜璃珠が、感心した様子で何度も頷く。
 歩は照れ臭そうに頭を掻いたが、矢張り球団広報として1シーズンを過ごしてきただけのことはあり、企画力や実行力は、一人前のプロとして十分に成長したといって良い。
 対する亜璃珠は、これからプロの世界に挑む身である。そういう意味では、歩や円は目指すべき目標としてリスペクトしなければならない、という思いが強くなってきていた。
 交流会には選手とファンのみならず、リリィガールズやワルキューレとワイヴァーンズ双方のマスコットガール達も参加し、その賑わいはつきるところを知らなかった。
 勿論、全員が全員、グラウンドに降り立った訳ではない。
 スタンドに残り、この賑わいを眺めている者達も居る。ラズィーヤや千歳、イルマ、そして清音といった面々が、まさにその典型であった。
「ラズィーヤ様、これで戦力は大方、整ったようですね」
 イルマの問いかけに、ラズィーヤは満足げに頷く。どうやら、何かを確信した様子である。
「この戦力……これなら創設初年度のペナント奪取は、成ったも同然ですわ」
 これは即ち、ラズィーヤの堂々たる優勝宣言であった。

 交流会はまだ続いているが、早々に第三グラウンドを後にする姿もある。
 結和とアヴドーチカは合格決定を確認すると、早々に荷物を纏めてイルミンスールへの帰路につこうとしていた。
「本当に、良かったですねぇー。無事合格、おめでとぉございますぅ」
「意外とね、バールの代わりにバットを振り回すのも、楽しいもんさね。でも練習とかは、ちょっと面倒臭いかも知れないけどなぁ」
 そんな不埒な台詞を放ってみせたアヴドーチカだが、第三グラウンド脇の駐車場に出たところで、ふと足を止めた。
 見ると、同じくトライアウトに参加したサナギとセシルが、黒塗りのリムジンバスに乗り込もうとしているところであった。
「おや、あんなバス、来てたかね?」
「さぁ……今日初めて見ますけどぉ」
 首を傾げて顔を見合わせる結和とアヴドーチカだが、それ以上は詮索するつもりは無く、そのまま帰りの送迎バス方向へと足を運んだ。
 さて、一方のサナギとセシルだが、葦原ホーネッツのスタッフに案内されるがままに黒塗りのリムジンバスに乗り込むと、そこで思わず息を呑んで、タラップ付近で足を止めてしまった。
「うわ、何やぁ、このひとら……」
 怪訝そうに眉をひそめるサナギだが、セシルは違った。
 彼女は驚愕の表情を浮かべ、手にしていた荷物を、その場に落としてしまった。
「う……嘘でございましょう!?」
 セシルは信じられないといった様子で、そこに居並ぶ顔ぶれをまじまじと凝視した。
 黒塗りのリムジンバス内に居たのは、アルフォンゾ・ロドリゲスデイビッド・ジーターロイス・クレメンスアンディ・ジョンソンジーン・ベティットマイケル・マグワイアフィル・リプケン……いずれも現役メジャー選手の中でも、とりわけ超一流どころといわれるビッグネームばかりであった。
「葦原ホーネッツへようこそ。歓迎するでありんす」
 聞いたことのある声が、最後尾のソファーから聞こえてきた。
 そこに、ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)の姿があった。
 セシルは一瞬で理解した。ハイナの政治力学が、MLB屈指のビッグネームを葦原ホーネッツへと誘い込んだのであろう、と。
 既にラズィーヤが、左右の者達に早々と優勝宣言を出してしまっていたのだが、ヴァイシャリー・ガルガンチュアの前に、この葦原ホーネッツの超巨大戦力が立ちはだかることになろうとは、恐らく夢にも思って見なかっただろう。
 2022シーズンをかき回す台風の目は、ヴァイシャリー・ガルガンチュアだけではないといって良い。寧ろこの葦原ホーネッツこそ、真のダークホースであろう。


『SPB2021シーズンオフ 球道inヴァイシャリー』 了

担当マスターより

▼担当マスター

革酎

▼マスターコメント

 当シナリオ担当の革酎です。
 このたびは、たくさんの素敵なアクションをお送り頂きまして、まことにありがとうございました。

 物凄い引きを作って終わってしまいました。
 折角なので、この後もSPBシリーズは不定期に続けていこうかと考えている所存でございます。もしまた機会があれば、ご参加を検討頂ければ幸いに存じます。

 尚、今回一部の方に球団関係の称号が発行されております。内容に間違いが無いか、ご確認の程、宜しくお願い致します。

 ちなみに難読地名クイズの回答ですが、以下の通りです。

  『喜連瓜破』⇒きれうりわり
  『立売堀』⇒いたちぼり
  『河堀口』⇒こぼれぐち

 それでは皆様、ごきげんよう。