校長室
学園祭に火をつけろ!
リアクション公開中!
◆ 場所は変わって体育館。そこに客の姿はない。それもそのはず――体育館は締め切られている。その中で 「ちっがーう! って言ってるじゃろ!」 南部 ヒラニィ(なんぶ・ひらにぃ)の声が、誰もいないはずの体育館に響き渡る。 「わ、わからないよ、そんなこと言われても………」 「もっと鬼気迫る感じと言ってるじゃろ! もう一回」 「わぁ、助けてー、ロリババァー」 「んもぉぉぉ!!!! それじゃ棒読みだから、ぼ・う・よ・みっ!」 むすくれた顔をしているのは琳 鳳明(りん・ほうめい)。どうやらヒラニィから演技指導を受けているところだ。 その様子を見守るのは茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす)、レオン・カシミール(れおん・かしみーる)、茅野瀬 朱里(ちのせ・あかり)の三人。 「ヒラニィさん、大分気合いがはいってますねぇ………熱中し過ぎな気がして来ましたけど…」 「『見る者すべてに夢と希望を与えねばならんのじゃー!!!』だそうだ。まぁ、その意見には私も賛成だがな。やるからにはきっちりやりたい」 「ま、朱里たちは朱里たちで、やれることをやれば良いよね」 穏やかに鳳明とヒラニィの『熱血、演技指導教室』を見ているレオンと、それとは対称的に言葉を失っている衿栖と朱里。 「燃えてますねぇ……ヒラニィねぇさん」 「こりゃあわらわも負けてられんのぉ!」 三人の隣にやってきた博季・アシュリング(ひろき・あしゅりんぐ)、マリアベル・ネクロノミコン(まりあべる・ねくろのみこん)がヒラニィたちを見てそう言った。 「そっちのスピーカー、もう少し右に出来ないですかね」 「右か? ってぇ事は、こっちの方に――」 「すみません、それ反対でーす」 「お、やっべ。間違えた。わりぃわりぃ、こっちか」 「…………そうですね。オッケーです」 舞台脇では舞台装置の最終位置を確認しているテスラ・マグメル(てすら・まぐめる)と、それを手伝うウルス・アヴァローン(うるす・あばろーん)。 このときはスピーカーを調整したらしく、ウルスが悪戦苦闘しながら調整している。 「グッズの数量はこんなもんか。ま、あたしにかかりゃこんなもんね」 「茉莉、何でこんなに大きなサイズのティーシャツがあるのだ?」 「大きい子供用。ほら、大学じゃん、一応色んな対象年齢の為の用意だよ。それよりあん、なんで売り物の上に寝そべってんのさ…………」 「新品のシャツとかってさ、もふもふしてて寝転ぶと気持ちい――」 「いやどけよ」 「……………」 茅野 茉莉(ちの・まつり)はグッズ販売の売り子の為に商品の数量把握を、パートナーのダミアン・バスカヴィル(だみあん・ばすかう゛ぃる)は主にその妨害を頑張っている。その横では、用意されていた衣装を目の当たりに、大きくため息をつく相田 なぶら(あいだ・なぶら)とカレン・ヴォルテール(かれん・ゔぉるてーる)。 「確かに………確かに手伝うとは言ったが、何だってこんな…………」 「カレン、それは俺の台詞な気がするぞ。俺――なんだか凄い役回りみたいだし………うぅ、なんか恥ずかしい。出来れば知り合いには見られたくない………」 どうやら協力した事に若干の後悔がある二人。 「ま、まあでもさ。本番もしかしたら観客少ないかもしれないし。大学だしさ」 「………だったらいいけどなぁ」 「「はぁ………………」」 と、固く閉ざされてた体育館の扉が開き、そこに一人の男が現れた。 「セラっ!! 来ましたよ、来ちゃいましたよ間に合いましたよ! 皆の味方、ルイさんがやって参りましたよぉ!!!」 「セラさん。どうやら間に合ったらしいぞ。あなたのお父上は」 「間に合わなきゃ殴ってたよ☆」 レオンに笑顔を返すセラエノ断章の発言は、しかしその愛らしい笑顔には不釣り合いな物騒な物である。 「おぉ、来たかルイよ。ほい、これ台本。鳳明、衣装をー」 「はいはーい。お疲れ様ですルイさん。これ、ルイさんの衣装です!」 台本と衣装が入った箱を鳳明から受け取ったルイが首を傾げる。 「台本? 衣装? これは――」 「劇をやるから。ヒーローショーをやるから」 「え、ヒーローショ――」 「やるから」 「……………はい」 淡々と説明するセラエノ断章の言葉に返事をしたルイ。と、博季が笑顔でルイに近づく。 「凄いんだよ、ルイさんのやる怪人なんだけど、それは何とかノアちゃんがデザインしたんだ」 「怪人…………」 「さ、そろそろ開演の時間になるよ! みんな支度して!」 ルイを置き去りに鳳明が言うと、ルイを除く全員が元気よく返事をして、着替えや支度へと向かうのだ。 「ちょ、ねぇ、私イマイチ状況が――」 「ルイさん、頑張りましょうね(ニコっ)」 「あ、はい」 衿栖のだめ押しの笑顔のもと、訳もわからぬまま彼は更衣室へと向かうのだ。