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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ

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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ
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リアクション

 
 
    ★    ★    ★
 
 ドドドドド……。
「おお、最近の流行は、スパイクバイクに機晶キャノンを装備することか。メモメモ」
 意気揚々と通りすぎていく南鮪の姿を横目で見て、椎名真(椎葉諒)が、マメにメモをとりだした。
『いや、あれはブームじゃないだろう。ブームって言うんだったら、ファッションの店とか、喫茶店とか、女の子が集まるような所で流行っている物なんじゃないのか?』
 いくらなんでも、あれはないだろうと椎名真が椎葉諒に突っ込みを入れる。
「そうか。よし、じゃあ、ファッションなのだな。とりあえず、あの店から入ってみるとするかな」
『ちょっと待て、俺の姿でランジェリーショップに入るのはやめろ』
 遠慮なく、女の子の店に入っていこうとする椎名真(椎葉諒)に、椎名真が焦る。だが、身体を貸しているため、どうすることもできない。
「メモりますかな」
『下着の前でメモはやめろ!』
 むなしく椎名真が叫んだ。
 
    ★    ★    ★
 
「これなんかどうかなあ」
 淡い枯れ葉色のカットソーに、編み目の粗いカーディガンを手にとって、水神樹が訊ねた。
「うーん、とりあえず着てみたらいいんじゃないかな」
 ちょっと分からずに突っ立ったまま、水神誠が答えた。
「じゃちょっと待ってて」
 試着室に入って、ごそごそしてから再び水神樹が現れる。
 身体のラインにピッタリと合ったカットソーが、カーディアンの編み目からチラチラとのぞいてカジュアルな中にもちょっと色っぽい。
「うーん、まだちょっと重いかなあ」
「じゃあ、こっちかなあ」
 水神誠の感想を聞いた水神樹が、再び試着室に引っ込む。
「今度はどう?」
 しばらくして出て来た水神樹は、黒地に赤と青のラインの入ったチェック柄のシャツに、グレイのカシミアのショールを羽織っていた。手を出すスリットのあるショールで、広げたままポンチョのように羽織ることができる。秋のそよ風をつかまえてふわふわさせることも、しっかりと首に巻きつけて強い風を払い流すこともできそうだ。
「悪くないかな」
「どっちにしようか……」
 水神樹が、それぞれを腕にかけてちょっと悩んだ。
「両方買えばいいんだよ。それぐらいの小遣いはあるだろう?」
「まあ、そのへんは大丈夫だけど……」
 そういう問題じゃないんだけど、弟には女の子の気持ちをまだまだ理解できてないわねと、水神樹がちょっと心の中で安心したような残念なため息をつく。
「よし。余裕があるんなら、後で喫茶店に行って美味しい物でも……」
「そっちが目的か。いいわよ、両方とも買うから」
 小さく、ガッツポーズをつく水神誠に、水神樹が即決した。余ったお金を、すべて弟の腹の足しにするつもりはない。
「そうそう、それに合わせて、アクセサリーなんかもいいんじゃないかな」
「あら、気が利くわね」
 確かに、ショールを留めるブローチのような物がちょっとほしい。
 それぞれの服を別個に包装してもらうと、予定通り水神誠が紙バッグを両手に持って運ぶ。この店の紙バッグはちょっとしたブランドアイテムなので、なるべくたくさんもらおうという算段だ。
『まったく、さっきはひやひやしたよ』
「何を言っている。真面目な調査じゃないか」
 アクセサリー売り場で、帽子やスカーフを見ながら、独り言のように椎名真(椎葉諒)が椎名真に答えた。
『まるで、俺が女物の下着あさりをしているようだったじゃないか』
「何か問題でもあるのだろうか?」
『だから、それは俺の身体だし、俺の顔だって……』
「まあ、ナラカの仮面で半分は隠しているじゃないか」
 コンコンと、指先で半分に割れた仮面をつつきながら、椎名真(椎葉諒)が言った。憑依しているときは、どうしてもケロイドに似た痣が椎名真の身体に浮かんできてしまう。椎名真が気にしそうなときは、この割れたナラカの仮面で隠してはいるのだが……。
「それとも、こういう仮面の方がいいのだろうか」
 言いながら、仮面売り場にずらーっとならんだアイマスク型の仮面を手にとって、椎名真(椎葉諒)が言った。
「それにしても、たくさんあるじゃないか。おお、そうか」
 突然何か気づいたかのように、椎名真(椎葉諒)がポンと手を打った。
「これがブームか。よし、一つ俺もこれをつけて……」
『やめろー、違うから。そういうの、喜んでつけているのは特定のキャラだけだから。イルミンの仮面のお兄さんとか』
 それだけは勘弁してくれと、椎名真が叫ぶ。
「そうか。これにマントのコラボは、最高の気がするんだが、いっそ……」
『それだけは、やめろ……』
 椎名真が、椎名真(椎葉諒)にそれ以上しゃべらせないように、全力で否定した。
「なんだろう、あの人、さっきからぶつぶつと一人でしゃべっているけど……」
「見ちゃだめよ。さあ、参りましょうか
 会計を済ませて戻ってきた水神樹が、水神誠を引っ張って店の外に出た。
「よう、何を買ったんだ?」
 店の前にバイクを駐めていた南鮪が待ち構えていたかのように、水神樹たちに問い質した。
「何よ、服を買ってきたに決まってるじゃない。秋物の上下よ。文句ある? 喧嘩は、相手を見てから売りなさい
 強気の口調で、水神樹が南鮪に答えた。
「なんだと、上下だけだと! 貴様、何を考えている!」
 言うなり、ポケットから聖ワレンティヌスのパンティーを取り出した南鮪が、水神誠の頭にかぽっと被せた。
「うおわっ!?」
 さすがに水神誠が怯む間に、紙袋の一つをひったくる。
「交換だぜ、ヒャッハー。さあ、次だ!」
「ああ、待ちなさい!」
 すぐさま逃げる南鮪を水神樹が追いかけようとしたが、タイミング悪く店から出て来た椎名真(椎葉諒)にぶつかって捕り逃がしてしまった。
「大丈夫か、樹」
 パンティーを被ったまま、水神誠が水神樹を助け起こす。
「いたたた、なんだ、変態か……」
 ぶつかった、椎名真(椎葉諒)が、水神誠を見て言った。
「お前に言われたくはない」
 パンティーを脱いでポケットにしまいながら、水神誠が怪しい仮面を被った椎名真(椎葉諒)に言った。
「あなたたち……」
 それじゃ、ほとんど同類だと、水神樹と椎名真が頭をかかえた。