イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

古代兵器の作り方

リアクション公開中!

古代兵器の作り方

リアクション

     ◆

 食品売り場から逃げ遅れた人々を連れている海たちは、一路ウォウルたちの元へ向かっていた。誰よりも重傷だった彼を、海は知っている。故に、どうしても心配であり、どうしてもウォウルを助けたかったのだろう。が、そこで海の携帯が着信を伝える。
「もしもし――、あぁ。見えるだろ? 今言われた場所に着いて、合流したぜ。え? なんだって?」
 歩きながら話していた海は、何を言われたのかそこで止まった。その場で止まった為、一緒に回っていた面々も必然、足を止めることとなる。
「どうしたんでしょう、海君」
「何か問題でも起こったか、新しく逃げ遅れの人を見つけた報告か、どちらかじゃないかな?」
「……どちらかといえば前者の可能性が高いな。新しく逃げ遅れた連中を見つけたのなら、あそこまで暗い表情はしないだろう」
「だったら……どうしたんだろう」
 それぞれに心配そうな面持ちで海を見つめる彼らは、ひたすらに海の説明を待った。四人で話していても、それは憶測の域を出ることはないのだから。
「……それはもう、手遅れだろうな」
 その言葉に、四人が言葉を失った。憶測も何もなく、ただただ海を見つめるだけだった。何が手遅れなのか、手遅れという発言は、決していい意味では使われない。
そのあとは簡潔に会話をまとめた海は、電話を切ってそれをしまう。
「みんなは此処で引き返した方がいいかもな」
「な、何でですか――!?」
「そうよ、せっかく此処まで来たんだから最後まで一緒に」
「この先で、戦闘があるらしい。ラナロックって人じゃないらしいけど、三人がウォウルさんたちに攻撃を加えようとしてるらしいんだ。みんなを巻き込む訳にも、逃げ遅れた人をそこまで連れて行くのも、俺としては気が引ける。せっかく危険を避けてここまで来たのに、自ら危ない道に行く必要はないだろ?」
「一つ聞いてもいいか?」
 そこで、カイが口を開いた。
「ウォウルの近くにはすでに結構な数の人数がいるんじゃないのか? 俺たちが行く必要がどこにある?」
「確かに……」
 彼の言葉に、三月も賛同の意の言葉を乗せる。
「冷静に考えたら、ウォウル先輩だってそんなに簡単にやられるはずがないんじゃないか? いくら手負いであっても、ほかに協力者がいるなら」
「そうよ、だから高円寺君。やっぱりみんなで引き返そう? もしその時までのウォウルさんが出てこなければ、その後で救援に行っても大丈夫よ、きっと」
「違うんだ」
「え――?」
 海はわかっている、と言いたげにしながらも、しかしそこで一同の言葉に対して否定的な言葉を述べる。自分の思うところはそこではない、とで言いたげに。
「確かにみんなの言ってることはわかる。俺もその方が絶対に良いって思ってる。現にレンや静麻からもそう提案された。でも――でも……」
 海の件名の言葉を聞いた柚は、そこで彼の手を握る。優しくその手を包み込んで、穏やかな笑顔を浮かべて彼に向って言葉をかける。ゆっくりと、静かに。
「大丈夫です、海君の好きにしてください。その為の私たちです。その為に、私たちはあなたと一緒に此処へ来たんです。あなたの意見でみんなは動きます。それに――何も全員で向う必要ないじゃないですか。誰かが彼らを誘導し、海君はやりたいようにすればいいんです。何が気になっているのかはわかりません。でも、それでもあなたがそこまで気にかけていると言う事は、それだけあなたに対して大事なことがあるって事なんですよね」
「柚……」
「ふぅ、行ってきなさいよ。確かに柚のいう通りだもの。良いわ、私たちが彼らを安全なところまで連れて行ってあげるから、あなたは先に進んで」
 何かに観念したのか、それとも柚の言葉に胸を打たれたのか、渚が言った。
「そうだな、俺たちは此処で引き返すとしよう。二人いれば何とかなるだろうさ」
 意味ありげに、柚のほうを向いたカイ。
「必ず海を守ってやれよ、杜守」
「……はい!」
「……ありがとな。みんな」
 海の言葉を聞き、三月が彼の隣にやってきて呟く。柚にも、ほかの誰にも聞こえないような声で、海に向かって呟いた。
「海、君は必ず守るよ。君が危険な目に合うのは極力避けたいんだ」
「ありがとな。大丈夫だから、俺は大丈夫だから柚を」
「勿論、二人とも守るつもりだよ」
 海、柚、三月は、此処に来るまでに助けた人々と、そしてその人々を連れて外へと向かうカイ、渚に挨拶を交わすと、更に深部、ウォウルたちのいる広場へと向かった。
彼らが今いるところから広場までは、そこまで距離がない。それこそ、歩いて十分とかからない場所だった。
「確かに、誰かが戦っている音が聞こえますね……空気が、重いです」
「嫌な感じだ。本当に――嫌な感じ」
 柚、三月が呟くも、海からの返事はない。ひたすらに進む彼の足取りは随分と早い。
「おそらくこの角を曲がると――広場につく」
 壁に背中を預けて様子をうかがう海は、適当なタイミングで広場へと向かった。その後を続くように柚、三月も走る。そして、三人に聞こえてきたもの、見えたものは――

「ウォウルさん! 早く台車に乗って!」
「通路がわかる人いるの!?」
「駄目です……みんなわからない! 移動したところで追いつかれてしまいますよ!」
「そんなぁっ!? じゃ、じゃあどうするの!?」
「みなさん、そちらに攻撃行きますよ!」
「僕が止める、止めてみせる! こんな事、許しはしないからっ!」
「ルイさん、託さん、避けてください!」
「ウォウルさん、まだそのような事を言いますか!!」
「いいから避けなさい!」

 想像を絶する、惨状が展開されている。