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第4章  街道に訊ぬ者


 雲一つない青空は、やけにすっきりとしていて。
 事件があったことをすら、かき消してしまいそう。

「子どもの無事な成長を願った親の気持ちを思うと、幼い子供達なだけに早期の保護をおこないたいですね」
「そのとおりネ!
 まだ希望を捨てるのは早いヨ!」
「だが、最低最悪な状況を想定して動かなければならないことがあるからなあ」

 冷静に語る叶 白竜(よう・ぱいろん)だが、その表情に色はない。
 やけに明るいティファニーとは対照的だと、世 羅儀(せい・らぎ)は感じていた。

「あ、ありました。
 こちらの方に、お話しを伺いましょう」
「うむ……ごめんくださいでござるよ」

 リンゼイ・アリス(りんぜい・ありす)と佐保が立ち止まったのは、お宮さんから最近にある被害者の家。
 呼び鈴を鳴らせば、すぐに扉が開いた。

「こんにち……ぅわっ!」

 リンゼイの挨拶も終わらぬうちに、足元へアタックが。
 詫びとともに母親から連れ戻されるのは、弟だろうか。

「こんにちは、さいきんなにか変わったことってなかったかなー。
 だいじょぶ、この怖い顔のおじさんがみんなを守ってくれるからね」
「羅儀、子どもは任せましたよ。
 すみませんが、そのときのことを詳しくお聴かせいただけませんか?」

 羅儀と白竜の問いかけを、きっかけにして。
 子どもは、最近ハマっているアニメの話を。
 そして母親は、いなくなった長兄のことを、少しずつ話し始めた。
 頬に、涙が伝う。

(こんなにも必死なものなのでしょうか、本来の親とは……)

 心中で、リンゼイは驚きにも似た感情を感じていた。

(修行にならなさそうなことには、あまり首を突っ込みたくないのが正直なところですが……こんなにも……)

 自分と兄を、子として愛してはくれなかった父。
 実力主義の家で育った身には、涙など新鮮で、新鮮で。
 新たな発見に、心を動かされるのであった。

「「「「「それでは、お邪魔しました」」」」」

 全員で深々とお辞儀をして、再び青空のもとへ。

「いまの内容は『銃型HC』で送っておきました」
「ありがとうな。
 しかし、無事に済んでよかったぜ」
(ただでさえ国軍の制服で、威圧的な雰囲気を周囲に与えているからな。
 白竜のような厳格な姿勢では、街の人に恐れられて充分話を聴けないのではと心配だったんだが)
「む、なんですか?」
「いや、なんでも……」
「うふふふ……」

 羅儀の不安など余所に、白竜は顔をしかめた。
 2人のかけ合いが温かくて、思わずリンゼイは笑みを零す。