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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2

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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2
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第15章 Christmas Eve After4

「静香さん、出発の時刻はいつ頃?」
「もう出発しちゃってもいいと思うよ、ルカルカさん。運転する人は、ラズィーヤさんが事前に呼んであるし。試運転だからといって、無免許で運転だと逮捕されちゃうよ」
「とりあえず、運転してくれる人はいるし…。これ以上待つと、明日の運行に影響出そうだものね」
 “了解”と、静香に軽く頷いたルカルカは彼女と共に、列車へ乗り込む、
 魔列車の出発の合図を告げるべく、運転車両のマイクをオンにする。
「シャンバラレールウェイズへのご尽力に感謝します。これより落成記念の初運行です。ご案内させて頂きますのはコンダクターのダリル、トレインサービスアテンダントのルカルカです」
「コンダクターのダリルだ。本日は諸事情により、環菜はこれないらしい…。彼女の代わりに俺から礼を言わせていただく。この長期間、鉄道計画に助力いただき、心より感謝する。では、列車の旅を楽しんでくれ」
「それではこれより、ヴァイシャリー南湖の駅からヒラプニラ間を運行いたします。出発、進行ーーーっ!!」
 ルカルカの合図に合わせ、ダリルが汽笛を鳴らす。
 ボォオオオッ、と駅舎中に鳴り響かせ、魔列車はゆっくりと進み始める。
 シュッシュ…シュシュシュッ。
 だんだん加速していき、美しく塗装された列車がレールの上を駆ける。
「皆様。各車両には、駅舎で販売されている試作品などを展示しております。気になる商品がございましたら、ヴァイシャリー南湖の駅へお立ち寄りの際に、ご購入くださいませ!」
「へー…ジオラマか。列車だけじゃなくって、駅舎とかのミニチュアのパーツもあるな」
 静麻は試作品の箱を丁寧に開け、司とフィリップが考案した列車のプラモデルを、箱から出してみる。
「それを組み立てて、エリシアくんが考案した魔列車のミニチュアを、レールの上に走らせることも出来るんですよ」
 ミニスカサンタ姿の司が、ひょいっと顔を覗かせる。
「美羽くんとも協力していろいろ作ってみたいんです!」
「ツカサ、熱く語ってねぇーで、プレゼントを渡しな」
「あっ、そうですね、フィリップくん。シオンくん、おもちゃの袋は…?」
「今出してあげるから待ちなさい」
 物質化・非物質化により、おもちゃの袋を物質化させる。
「この中から1つだけ取ってください」
「何が入っているんだろうな」
 静麻は袋の中にある箱を取り、そっと蓋を開ける。
「駅に飾ってあるパネルのミニバージョンか」
「…当たり……」
「アゾートお嬢ちゃんにも、プレゼントをあげよう」
「ありがとう、フィリップ。―…ぬいぐるみ?」
「可愛くってもふもふしがいがありそうだったから、非売品としな」
「―…可愛いだなんて、チムチム照れちゃうアルよっ」
「お嬢ちゃんたち2人も、サンタのプレゼントをやろう」
 おもちゃの袋の口を開け、レキたちに見せる。
「どれにしよっかなー…。これにする!」
「チムチムは赤い箱にするアル」
 2人が箱を開けると、中から勢いよく緑色の物体が飛び出す。
「わぁあ!?」
「何アルかーっ」
「そりゃハズレだな」
 緑色の物体の正体は、ビックリ箱のちっちゃなぬいぐるみだ。
 つまりはハズレを掴んでしまった。
 近遠たちも揃ってハズレのうねうねくんを獲得した。
「4つとも飛び出すなんて……。ボクたちってどんだけ運がないんですか。フフフッ」
 しかし、絶望するどころか、奇怪な状況に思わず笑ってしまう。
「ビューンッ!て出てきましたわね」
「ほう、ビックリ箱か。気を抜いている相手に使ったらどうなるのだろう?」
「ハズレちゃいましたけど、ちょっと面白かったですね」
「じぶんもほしぃいい!!」
「この中から1個、好きヤツを取ってくれ」
「どきどき…。開けちゃうよー、えーい!」
 びょぉおおおんっ。
「わぁああ!?何コレ、蒼っ」
 不幸なことにそれが真の膝の上へボトンと落ちる。
「ビックリ箱のぬいぐるみだよ。開けたらびょーんって飛び出すのー!」
「ルカ…弁当は帰ってからだろ」
「駅弁は列車で食べるのがいいんだもん」
 弥十郎と西園寺が作ったSR弁当を頬張る。
「―…ルカ、こっち向いてみろ」
 蒼が遊んでいるのを見て、ダリルがちょっとしたイタズラを思いつく。
「その箱がどうかしたの?―…きゃぁああーーっ!!?」
 得体の知れないものが、ルカルカの額を目掛けて飛び出す。
「面白かったか?」
「え…ただのぬいぐるみ?ダリル〜っ!」
 ドッキリなイタズラを大成功され、恨めしげな声を上げる。
「サンタからのプレゼントだそうだ」
「ビックリ箱が!?―…面白そうね、ルカにも貸して。(よくもルカのおでこにぶつけたわね!)」
「いいけど、何するんだ?」
「人を振り向かせて、ビックリさせるなんて…いっぺん、ぶつけてみるーっ?」
 ルカルカはぬいぐるみを箱に入れ、蓋を開けてダリルに仕返しをする。
「イタッ!」
「あははは、おもしろーいっ」
 仕返しが成功し、お腹を抱えて大笑いする。
「笑いすぎだ」
「うにゃっ!?」
 金色の髪をわしゃわしゃされ、さらに仕返しされてしまった。



「皆、モニターに注目して!これから、今まで撮った記録の映像を流させてもらうわ」
 月夜の声に、乗客たちはいっせいにモニターを見上げる。
「客車と合わせえて計7両、パラミタ内海から引き上げたのよね。この海は可愛くって…とってもやんちゃなニャ〜ンズがいたことを覚えてるかしら?」
「最初のあの敗北は、忘れたくても忘れられないよ…」
 全身でニャ〜ンアタックを受け、成長しすぎてもふもふしていなかった海のギャングに対して、キレたレキが反撃しようとしたが返り討ちにされ、毛まみれになって沈まされた。
「確かに、おおきいのは厄介だったと思うわ。でも、子サメたちは小さくって可愛かったわよね」
「そういえば俺も映されていたんだな」
 子サメたちが邪魔しないよう、静麻がボールを投げ、戯れている様子が映像化されてしまった。
「画面中央に、人が倒れているわね?」
「これ…ツカサじゃないの?」
「えっと…。渡された炉にあるアダマンタイトが、ものすごーく高温だったんですよね。それを…丁度いい温度まで下げるために私は…っ」
「なんやかんやで、2両目まで修繕と内装の工事が終わったのよね。特に、内装を担当した人たちが、車内から出てきた時…。寝不足な目のクマと、やり遂げた充実感を握り締めた感じだったわ」
 弥十郎たちも不眠不休のツライ作業にも関わらず、特に愚痴もこぼさず、完成させた時の瞬間を思い出す。
「次の発掘はもっと過酷だったわよね。一時はどうなるかヒヤヒヤしたわ。美羽やコアたちが睡眠時間を限界まで削って、皆と協力して装飾前まで工程を進めることが出来たわね」
 見届けてきた作業の光景を思い出しながら解説をしていると…。
 モニターに、“恐怖!パラミタ内海に現れたヤシの木男”というタイトルが流れる。
「その彼の姿を見た女性は、ほとんどっていいほどに、青ざめていたわ…。現場にいた私も、実は驚いたの。しかし彼は、懸命に発掘作業を手伝ってくれていたわ。発掘が終わった後、まったく姿が見えなくなったらしいの」
 月夜や刀真でさえ、気づかないのは無理もない。
 ヤシの木ヘッドに鎧貝を装着した姿に、さらにマスクをつけた奇妙な格好し、進化した姿で現れたこともある。
 塗装作業の現場いた彼とヤシの木男が、実は同一人物だということに気づいたのは、おそらくほんの一部の者だけだろう。
「で…今回、私がナレーター役に代わって、いろんな現場で話を聞かせてもらったわ。SR弁当がほぼ全部、採用されていたわ。3組ともイルミンの校長をさせる、相応しい腕前だったと思う。納得ショップの商品開発は、ユニークなアイデアがたくさんあって面白かったわ」
「じぶんとにーちゃんが一緒に考えたお弁当も、さいよーしてもらったのーっ」
「試食分しかありませんが、分け合って食べてもらうことになります!」
 トレインサービスアテンダントのモードにスイッチが入り、ルカルカが乗客たちに配る。
「これはお子様ランチかしら?」
 蒼と真が作った弁当に月夜が箸をつける。
「容器とオマケはじぶんでー、おりょーりは、にーちゃんに作ってもらったのーっ」
「オマケは客車だったわ。デスクに飾ろう!このトマトプリン、甘酸っぱくって美味しいっ」
「あれれー、刀真にーちゃんは?」
「刀真は運転車両にある機械から、このモニターに映像を送ってくれているの。流しっぱなしでいいのに、遅いわね…」
 なぜ客車へ来ないのか気になり、彼の様子を見に行く。
「ねぇ、刀真。映像は流しっぱなしでもいいわよ」
 月夜がいくら話しかけても、まったく返事を返さない。
「―…ねぇ……、刀真。ぇっ、寝ちゃってるの!?」
 返事がない、立ったまま眠っているようだ。
 徹夜で編集作業をしていたため、ついに限界がきたようで、マウスの左クリックを押したまま眠ってしまっている…。