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ACT4 祭りのあとには……


「ぐがー! んがー!」

 豪快なイビキを響かせて巨大化したまま眠るもっくんたち。一応静かにさせることには成功したが、どうしたものかと悩む契約者たち。
 と、そんなみんなの元へアリエティを引き連れた武尊、又吉、レン、ノアの4人がやってきた。

「今回の犯人を連れてきたぜ」

 そういって武尊はアリエティの背中を押す。
 アリエティはみんなの前に出ると、事情を説明して頭を下げた。
 アリエティから魔法の甘酒を作る時に使った材料を聞き出していたレンは、その中にあった薬草のひとつが今回の巨大化と急激な酔いの原因だったということを突き止めた。
 記憶術に長けたレンはその不思議な薬草のことを昔とある本で見たのを覚えていたのだ。

「アリエティ、元に戻す薬を作れるな?」

 レンの言葉にアリエティはうなずく。
 そしてレンから聞いていた通りの調合で薬を作り始め、少し経つと薬は完成した。
 アリエティは完成した薬を口を開けて眠るもっくんたちに飲ませる。
 すると元からでかいイオマンテを除いて、もっくんもペシェも元のサイズに戻っていく。

「あれー?」

 ペシュはキョロキョロと辺りを見回す。エルサーラが近くに寄って話しかけるとペシェは酔っ払っていた時のことは覚えていないといった。

「はあ、もう本当に世話が焼けるわねっ」

 エルサーラはそういいながらも、ペシェを抱きしめてもふもふするのだった。

「いやー、そのー、皆さん」

 と、先ほどまで暴れまわっていたもっくんが苦笑いを浮かべながら控えめに声をあげた。
 セレンがそんなもっくんを睨む。

「せっかくの晴れ着が汚れちゃったじゃない……クリーニング代、高くつくわよ!」
「――すっ、すいませんでした!」

 秘技ジャンピング土下座で謝るもっくん。
 ペコペコと頭を下げて平謝りだ。

「こんなに謝ってるじゃない。許してあげたらセレン?」
「むぅ」

 恋人のセレアナにそう言われてはセレンも口を閉じるしかない。

「もっくん!」

 と、ノアが土下座し続けるもっくんの側に駆け寄った。

「あっ、えっと、どうして俺の名前を?」

 ノアは笑顔を浮かべ、自分がファンであることを告げた。

「えっ、そんな……嘘だろ?」
「嘘じゃありません!」

 ノアはそういうともっくんがかつて準レギュラー出演していたTV番組の主題歌を歌い始めた。
 そしてもっくんの事がどれだけ好きのかを話して聞かせる。

「確かに人気はイマイチかもしれませんけど、私はもっくんが好きです。だから今年はがんばってね!」

 ノアの言葉にもっくんは目に涙を滲ませる。
 そしてもっくんは立ち上がると、ノアの手を握り固く誓うのだった。

「俺、がんばるよ――ひとりでもあんたみたいな人がいるんだ。それなら腐ったりしてられないもんな!」
「フッフッフッ、どうやらオレの完璧な作戦で一件落着のようだな」

 そういってひとり満足げにうなずくのはヴェーゼル。
 そんなヴェーゼルに向かってパートナーの陽子がいった。

「あの、ひとりご満悦のところ申し訳ないんだけどさ。バイトで持ってきたお酒を勝手に全部使っちゃったけど、どうするの?」
「あっ――しまったッ!?」

 陽子の言葉に頭を抱えるヴェーゼル。
 事件は解決したが、彼の財布は新年早々ピンチを迎えることになってしまったようだ。

「おい、コラ! 貴様ッ!!」

 と、いままでどこにいたのか変熊仮面がプンプンと怒りながらイオマンテの前に現れた。

「パートナーの分際で、俺様より目立つとは何様のつもりだ! 俺様が全然活躍出来なかったではないか!?」
「うっ……」
「んっ? どうしたイオマンテ?」
「うえええええええっ――」

 ゲロゲロゲロ〜。
 飲まされた薬がマズかったイオマンテ。
 我慢できずについつい発射。
 そしてなんということかソレを頭からおっかぶってしまった変熊仮面。
 みんなは驚きながら一歩二歩後ろに引いて、悲惨な状態の変熊仮面を見つめる。
 ぷるぷる震える変熊仮面は両腕を振り上げて叫んだ。


「新年から俺様の美しい体が……なんてことをしてくれるんだァァッ!」


 その叫び声は上空にも響く。

「んっ?」

 空に浮かんでいたガートルードはその声に後ろを振り返った。
 そんな彼女の元に地上から召喚獣サンダーバードが舞い戻ってくる。
 見れば、地上では空京神社に向かっていたイコン部隊がキョロキョロと何かを探していた。
 イコン部隊は急に現れては消えた召喚獣を不思議に思いながらも、任務を続行するために空京神社へと向かう。

「もう見世物は終わったようですよ……」

 ガードルードはそうつぶやくと、興味をなくしたのか召喚獣を引き連れてどこかへと飛び去ってしまった。


 こうして巨大酔っぱらいゆる族大暴れ事件は幕を閉じたのだった。