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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

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「……迎えに行く」
 靴を履いて飛び出して行った。お友達がどこにいるかも分からないまま。

「スノハちゃん!! 水穂ちゃん、あとはお願い」

 追いかけながらネージュは大人薬で元の姿になった。追いかけるにはちびっこのままより元の姿の方がずっと楽だから。

「……スノハちゃん」
 二人を見送った水穂は心配でたまらなかった。
 ネージュがスノハに追いついたのは写真館の前だった。

 何百種類のドレスや靴にアクセサリーに専属のスタイリストやカメラマンがいる大きな写真館。

「キリスお嬢様は、どうして赤色が好きなのかなぁ」
 北都は、全身赤色の随分大きくなったキリスを綺麗にメイクをしながら執事な感じでお喋りをしていた。
「りんごも赤いし、いちごも赤いし、トマトもお日様もあたしが好きなものぜーんぶ赤いんだよ」
 答える内容は元の年齢相応のもの。見た目はすっかり赤の国のお姫様なのに。

「はい、これでおしまい。どうぞ、お嬢様」

 手鏡をキリスに渡した。自分の姿を見て彼女の顔はきらりと光った。

「うわぁ、お姫様だぁ」
 嬉しそうに鏡の中の自分を食い入るように見つめる。

「……ほら、写真を撮って貰おうね」
 鏡に見入っているキリスに手を差し出し、上手にエスコートしていく。

「あ、スノハちゃんだ」

 取り終わった自分の写真を眺めていた獣人の女の子が外を走る友達に気付き、外へ飛び出した。

「どうしたの? スノハちゃん」
「ロロミちゃん」
 図書館から飛び出して来たスノハは急に声をかけられ、足を止めた。ちょうど、ネージュも追いついたところだ。
 
「じゃーん、これロロだよ。スノハちゃんも撮って貰おうよ」
 ロロミは嬉しそうに自分の写真を見せびらかした。ちなみ、喧嘩をナコに説明した子供だ。スノハは無理矢理、ロロミに連れられ写真館の中へ入った。
 当然、ネージュも事情説明のためについて行った。
 
「スノハちゃんも撮ってあげて」
「……スノハちゃん」
 キリスの撮影を眺めていた北都はロロミの言葉に何があったのか困るも事情を知っているだろうネージュを発見し、彼女の手招きで少し店の入り口に移動した。

「何かあったの?」
「……実はね、連絡があって」
 ネージュはルファンの電話内容とスノハに伝えたことを話した。

「見つかったんだ。それは安心だねぇ。帰りたがらないっていうのが心配だけど」
 ドレスを楽しそうに選ぶスノハとロロミを眺めながら、あまり進展しない状況に面倒くさいことになったと思っていた。
「そうなんだけど、一緒にいる人が何とかしてくれるはず」
 スノハのことも心配だが帰りたがらない絵音のことも心配だ。
 秘密のお話はここまでにして先ほどまで絵音を迎えに行くと必死だったのが様変わりしているスノハの方に話を移した。

「スノハちゃんのことは任せても大丈夫?」
「構わないよ。何かに夢中になってる方がいいだろうしねぇ」

 楽しそうにロロミと遊んでいる様子を眺めながら了承した。

「ありがとう。スノハちゃん、ここでお友達と楽しんでね」
 ネージュは、北都に礼を言い、楽しそうなスノハに一言。
「うん。……ごめんなさい」
「いいよ。お姉ちゃん、行くね」
 スノハは、ネージュに気付き、笑顔で頷いたかと思うと迷惑をかけたことを思い出し、しょんぼりと謝った。 ネージュは笑顔で言ってから水穂が頑張っている図書館に戻った。

「お帰りなさい、ねじゅちゃん。どうでしたか?」

 ネージュが戻って来るなり、一番に聞いたのはスノハのこと。
「スノハちゃん、北都君に任せてきたよ。お姫様になって写真を撮ったりしてるよー」
「そうですか」
 ネージュは、水穂に報告してから座ったまま動けない彼女に代わって散らばった絵本を静かに片付け始めた。子供達が起きたらすぐに戻れるように。

「すごーい、お姫様だよ。あうっ」
 ふわふわのドレスを着込んだチャーミングな女性、大人薬で大きくなったスノハは慣れないハイヒールにバランスを崩してしまった。

「転ばないように気を付けてね、スノハお嬢様」
 うまく執事な北都がスノハを支えた。ゆっくりとメイク室まで導いて椅子に座らせた。

「スノハお嬢様は、大きくなったら何になるのかなー」
「先生! ナコ先生みたいな先生になるの。あとは、絵本を書く人、服とかアクセサリーを作る人にもなりたい」
「たくさんなりたいものがあって忙しいねぇ」
「うん!!」

 綺麗に化粧を施し、アクセサリーを飾りながら気が紛れるようにたわいのないこと聞いていく。答えは5歳の子供らしく可愛いものばかりだったりする。

 すっかりお姫様になったスノハは鏡を見てびっくりし、撮った写真を見てほんわりと感動するのだった。