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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

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第二章 誘拐犯を調査


「……捜索の前に」
 酒杜 陽一(さかもり・よういち)は公園を出て様々な施設が建ち並ぶ通りに立っていた。手には手掛かりとなる写真が握られている。
「捜索は人が多い方がいい」
 そう言って陽一は捜索人数を増やすためこの空京の街に滞在しているとある人物にメールをした。写真を送付して。
「さてこの女の子や持ち主が少しでも分かれば」
 陽一は『サイコメトリ』を使い、写真に込められた想いを読み取り始めた。
 
 満面な笑みの15歳ぐらいの少年
 
 写真を撮る時だろうかはにかんだように笑う少女

 悲しみで顔をぐちゃぐちゃにする少年が成長したと思われる青年
 
 青年の手に握る写真


「……身代金ではないな。あれは」
 陽一が一番心に残ったのは悲しみに暮れる青年の姿だ。あれは大切な人を亡くしたと見て間違いない。仲の良かった妹を失った陽一にはすぐに分かった。

「……詳しいことは聞き込みではっきりさせるか」
 陽一は、パラミタセントバーナードを連れてナコが写真を見つけた場所に行った。そこから絵音の匂いを辿りつつ情報を収集するのだ。

 甘い匂いが充満する製菓店。

「……あのぉ、この写真の女の子」

 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナーノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は手掛かりの写真片手に接客に忙しい店員に声をかけた。
「今、忙しいんだけど」
 険悪な顔で振り向いた女性店員の表情がノーンの『メイドヘブン』により緩んだ表情に変わった。

「この写真の女の子かい?」
「はい」

 店員は見せられた写真を食い入るように見つめる。

 そして、
「かなり前だったかな。妹を捜してるって言っていたよ。確かサミエちゃん」
 ノーンの求める情報を話し始めた。

「その妹を捜しているって人は?」
「20歳過ぎの女性だったよ。イリアルとか言うわりと美人な女性だったよ。もし見かけたら連絡してくれって連絡先と名前を書いた紙を貰ったんだよ。でもどっかにいったけどね」
 写真をノーンに返す。

「はい。そのサミエちゃんをどうして捜してるかは」
 現在最も重要な質問をした。

「確か事故で行方不明になってるとか。両親も一緒に事故に遭ったらしいけど遺体が見つからなかったのはその妹だけだったとか言ってよ。誰かに助けられてるんじゃないかと思ってるとか。でも事故は三年前だからねぇ」

 店員は首をひねりながら答えた。言外には生存は無いだろうと言っている。
「……三年前
 ノーンも店員と同じように思った。

「あんた、歌とか歌ったりするんじゃないか」
 ふとノーンの顔を見ていた店員が何か閃いたような表情で訊ねてきた。

「……歌うけど」
「どっかで歌うのを見たことあるよ。良い歌だなって。プロかい?」
「プロじゃないですけど」

 立て続けに訊ねられて戸惑いつつもきっちりと答える。どうやら歌姫として活動しているのをたまたま見かけたことがあったらしい。

「そうかい。まぁ、これあげるからこれからも頑張りな」
 店員は販売してるお菓子の詰め合わせをおもむろに手に取り、ノーンに手渡した。
「あ、ありがとう!!」
 お菓子が大好きなノーンは喜んで受け取った。

「他の人に電話してみよう。酒杜先生、そっちは何かわかった?」
 店を出てすぐに他の捜索者に連絡をしてみることにした。

「え、居場所と思われるとこにいるの!? わたしも行くから待ってて」

 連絡をした途端、絵音の居場所を手に入れ、陽一と合流するために急いで向かった。