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夢見月のアクアマリン

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夢見月のアクアマリン

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〜謀略のセイレーン〜

 宴会場で眠りの異変が起こっていた頃。遠くの廊下では雅羅と喧嘩になった海を心配した友人達が彼を追ってきていた。
 もっとも海はと言うと、特に目的も無く廊下に出てしまった上、城の中が広すぎてどうしていいのか分からず頭をかいているだけだ。
「もういいよ、俺は大丈夫だから柚と三月は二人で会場に戻っててくれ」
「だめです!」
 いつもより強気な柚の発言に、海と三月は揃って姿勢を正す。
「戻る時は海君も一緒です。
 雅羅ちゃんもちゃんと話せばさっきの事は誤解だって分かってくれますよ」
 柚が海に話しをしているところへ匿名 某(とくな・なにがし)結崎 綾耶(ゆうざき・あや)大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が追いついてくる。
「おーい海、何があったんだよ……って」
 某は海の近くまできて、柚が海を説得しようと思わず握っていた手を見て踵をかえす。
「ごめん俺ら邪魔だったな」
「ち、違います! これはっその……お話しをしててそれで……」
 柚があまり顔を赤くして慌てるので、某達は笑いだしてしまう。それはさっきまで肩を落としていた海も同じだった。
――よかった、海君笑ってくれて……。
 柚が胸を撫で下ろしていると、ふと耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「……ええ、連れてきたわ。皆魔法生物を軽く倒せるレベルばかり。
 望み通りよ三賢者様」
「この声、ジゼルちゃん? ん!」
 柚の口が後ろに立っていた海の大きな手で塞がれる。
 気付くと目の前で三月が口元に人差し指をつけて「しーっ」と合図を送っていた。 
 柚はそこで某の視線が鋭くなっている事や、綾耶と康之が壁に耳をつけているのにも気付いた。
 壁の向こうからは尚も声が聞こえてくる。
「力や魔法力以外は……他は何もしないのよね?」
『どうしたのジゼル』
『まさかあの者達に情が移ったのではあるまいな』
『愚かな地上人共、奴らは我等セイレーンを滅ぼした者達なのですよ』
「馬鹿な事言わないで!
 今のはただ……確認しただけよ」
 壁の向こうからはジゼルのものと三つの違った声が聞こえてくる。

「ねえ。あの人達の力を奪えば……
 私達セイレーンの一族は復活する……そうなのね?」 

「そんなっ!!」
 柚は海の手の中で、思わず声を上げる。
 彼女の横で某は苦虫を噛み潰した表情で、壁の向こうを睨みつけて居た。
「今のうちに動くぞ、宴会場の連中にも伝えて脱出するんだ」
 耳元で囁く声が震えている。海も動揺しているのだ。
 何か下手を言って困らせない様にと柚は頷くだけにして宴会場の方へ足を進めた。
 しかしその足は、100メートルも進まない内に止まってしまう。
『キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ』
 超音波のような怪音が廊下に響き渡る。
 二股に分かれた魚の尾と、背中に鳥の羽根を持った怪物が彼等の前に立ちはだかっていた。
「クソ! 気付かれていたって事か!!」
 海達は迫りくる怪物を前に、己の武器を抜いた。