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SPB2022シーズン vsシャンバラ・ハイブリッズ

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SPB2022シーズン vsシャンバラ・ハイブリッズ
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リアクション


【十二 それぞれのリスタート】

 SPB2022シーズン開幕ゲーム。
 この日、蒼空学園スカイランドスタジアムでは、ツァンダ・ワイヴァーンズを迎えての初戦を迎える。
 試合開始を一時間後に控え、ワルキューレの選手達は一塁側ダッグアウト内のベンチで、ワイヴァーンズのオーダー表を眺めたり、或いはオープン戦のスコアブックを調べるなどして、それぞれのモチベーションを高めつつある。
「それにしても、二年目にともなると、観客の入り方も派手になってくるものだな」
 ベンチフェンス越しに外野スタンド席を眺めながら、カイが感慨深げにいう。
 昨季の開幕戦などは、今日の半分ぐらいしか観客が入っていなかったと記憶しており、そういう意味では、あの交流戦も広告としての機能を大いに果たしたのではないかとも思える。
 カイの左右に、垂と裁が同じような格好で並び、これまた同じように外野スタンド席に視線を送った。
「去年のことはよく知らないけど、本当によく入ったよなぁ」
「……ま、今年は今年だから、頑張ってプレーするだけだよ!」
 確かにふたりのいう通りではあるが、ベンチの中は昨季とは微妙に顔ぶれが異なる。
 例えば、昨季は二軍暮らしがほとんどだった陽太が、今年は開幕ベンチ入りを果たしている。かと思えば、ガルガンチュアに移籍したブリジットの代わりに、春美が正三塁手としてスターティングオーダーに名を連ねたりもしていた。
 また、今季からはルカルカが先発に転向し、新たなセットアッパー候補達が、己の居場所を求めてしのぎを削る展開が待っている。
 色んな意味で、今季は昨季とはがらりと様子が変わっていた。
「毎年同じことをしていたんじゃ、どこも成長は出来ない、か……」
 カイ自身はというと、一塁手としてスターティングオーダーに名を連ねていることに変わりはないが、ひとつだけ大きな変化があった。
 今季から、内野キャプテンに就任したのである。
「頼りにしてるよ、キャプテン!」
「マウンドで困ったら、助けて頂戴ね!」
 春美とルカルカが、からかうようにして笑い声を残しながら、グラウンドに飛び出してゆく。試合前の最後の練習へと臨もうというのである。
 カイは、微妙な表情を浮かべて思わず頭を掻いた。

     * * *

 ベンチの風景が異なる、という意味でいえば、三塁側ダッグアウトも同じようなものである。
 ペタジーニがガルガンチュアに去った後、正一塁手に就いたオットーがクリーンアップを打つようになり、
オリヴィアとミネルバが、それぞれ遊撃手と三塁手のスターティングオーダーに抜擢されたのだ。
 昨秋の秋季キャンプからの頑張りと技術レベルの向上が認められての、このオーダーである。こちらも、多くのメンバーが色々と様変わりしているのがよく分かる。
 だが何よりも一番の変化は、投手陣が総じて大きくレベルアップしており、リーグ屈指の投手力を誇る、とまでいわれるようになったことであろう。
 特に葵と隼人の左右のエースに加え、巡と優斗のダブルストッパー構想は、今季の戦いを占う上で、大きな戦力アップを果たしていたといって良い。
「アウェーっていっても、同じツァンダ領内なんだし、ホームで戦うのと大して変わらないよね! さぁ皆、頑張っていこー! クリア・エーテル☆」
 ワイヴァーンズのおっかさんこと、正捕手あゆみの陽気な声に、ベンチ内の選手達は一斉に気合の声をあげ、グラウンドでの試合前練習へと飛び出してゆく。
 何故かリカインがシルフィスティと一緒に喉のケアをしていたのは、ご愛嬌というべきだろう。
 そこへ、ベンチ裏の廊下へと続くドアをくぐって、何故か九条先生がひょっこりと顔を見せた。
「ふたりとも選手だというのに、喉のケアー用品一式を欲しがるなんて、変わってるなぁ」
 事情を知らない九条先生が呆れた調子の声を放つと、リカインはえへへと妙な照れ笑いを浮かべて、ジッパー袋に入ったそれらケアー用品一式を、遠慮なしに受け取る。
「何なら、マイクパフォーマンス用のケア用品も持ってこようか?」
「あー、それは良いです……って、何で九条先生がそんなの持ってるの?」
 リカインに聞き返され、思わず誤魔化し笑いを浮かべる九条先生。口は災いのもと、とまではいわないが、幾らなんでも趣味を前面に出し過ぎたと内心で反省していた。

     * * *

 外野スタンド席のライト側では、セレンフィリティとセレアナの両マスコットガールが、今日も所狭しとスタンド席内を駆け巡り、方々で突撃インタビューに挑んでいる。
 その元気な姿を、加夜と山葉オーナーが苦笑交じりに眺めていた。
「今年も、あのおふたりが客席を賑わせてくれそうですね」
「……賑わせるっていやぁ、もうひと組、元気なやつらが居るぜ」
 加夜の言葉を受けて、山葉オーナーはライト側外野スタンド席の一角を指差した。
 そこに、お揃いのユニフォームに身を包んだ美羽とコハクの姿がある。
「あれって、もしかして……」
「ナベツネさんからの決済が下りたんでね。正式に、蒼空ワルキューレ公認応援団の発足だ……いや、チアリーディング部だったっけか? まぁ、どっちもで良いか」
 美羽とコハクが聞いたら怒り出しそうな台詞を、山葉オーナーはしれっと何食わぬ顔でいい放つ。これには流石に、加夜も苦笑するしかなかった。
 また同時に、加夜はレフト側スタンド席でも、見慣れた姿が元気に走り回っているのを、目を細めて眺めた。小悪魔っぽいコスチュームに身を包んだ、理沙とセレスティアのマスコットガールコンビである。
 この明るさ、この賑わい。
 これこそがスポーツ観戦の醍醐味であり、誰もが共通して楽しめるエンターテイメントである、との思いを、加夜は心の奥底で更に強めた。
 すぐ近くでは、淵とカルキノスがこの日も大勢の子供達を観戦に招待しており、幼い声が盛大にスタンドを沸かせているのを、加夜は嬉しそうに眺めた。
「こんにちは! 今日は宜しくお願いします!」
 ワイヴァーンズ広報担当である歩が、スーツ姿のフィリシアと共に山葉オーナーと加夜の前に姿を見せた。
 開幕前にオーナー同士で挨拶が交わされてはいるが、現場レベルでの挨拶は、この日が最初であった。
 するとそこへセレンフィリティとセレアナが、更にはレフト側スタンド席から理沙とセレスティアも駆けつけてきて、ある種の大挨拶大会のような様相を呈し始めた。
「皆さん、どうぞ宜しく〜!」
「こちらこそ宜しくね〜! でもって、打倒サニーさんを、今年こそ果たしましょ!」
 妙なところで、共同戦線が張られていることを、加夜も歩もこの時、初めて知った。

 何はともあれ、SPB2022シーズン、開幕である。



『SPB2022シーズン vsシャンバラ・ハイブリッズ』 了

担当マスターより

▼担当マスター

革酎

▼マスターコメント

 当シナリオ担当の革酎です。
 このたびは、たくさんの素敵なアクションをお送り頂きまして、まことにありがとうございました。
 本リアクションをもって、SPB2022シーズンは開幕となりましたが、次のSPBシナリオがいつになるかは、まだ全く予定等を立てておりません。
 昨季同様、いきなりシーズン終盤まで話が飛ぶ可能性も大いにあり得ますので、あらかじめご了承の程、宜しくお願い致します。

 ちなみに自販機クイズは、
   3.いやいや、両方ともありまんがな
 が正解です。

 それでは皆様、ごきげんよう。