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空が見たい!

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空が見たい!

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 ドワーフ討伐チームの面々が狭い通路を次々と進んでいく。
 先に様子を見に行ったドワーフたちの話によれば、昨日の地震とドラゴンが暴れたせいで第33坑道への道がつながってしまったという。
 しかも厄介なことに、そこに潜むモンスターを捕食しに鍾乳洞から移動しているらしいということだった。
 落盤や落石も多く、昨日までの見知った坑道とはまるで違う。
 蟻の巣状に掘られていた坑道のいくつかの壁が崩れて繋がったところも多いようで、広がった空間がいくつも出来ていた。

 どれほどか進んだ辺りで後ろを進んでいたセリーナが何かに気付いて立ち止まった。

「姫さん?」

 ナディムが不思議そうに振り返るとそこには物影に隠れながらこちらを追いかけてきているトリネルの姿があった。

「危ないから……ついて来ちゃダメって、言われたでしょ?」

 セリーナがふわりと近付き優しく、けれど少し困って話しかける。

「だって……皆が頑張ってるのに何もしてあげられないのが……悔しくて」

 泣きそうな声で胸の内を吐き出すトリネルを見て、セリーナはナディムとマーガレットにこの子を連れて村に戻ると告げた。

「トリネルちゃん、私もねあんまり戦うのは得意じゃないの。だから、一緒に村に戻って、他のみんなと村を守りましょう?」
「……私にも出来ること、ある?」
「私が一緒に考えてあげる。さ、戻ろう? きっとトリネルちゃんがいなくなって、みんな心配してるよ」
「うん……」

 きゅっとトリネルと手を繋いでセリーナは元来た道を戻っていく。

「姫さん……よーっし! マーガレット、さっさと倒して地上に帰るぞ!」
「ナディム……やる気出すのはいいけど、真っ先にやられたりしないでよね」

 ふふっと笑いながらセリーナの背中を見送って、マーガレットとナディムは先を歩く討伐チームの後を追った。



「さーて、あたしたちは何しよっか」
 セレンが残っているメンバーに声をかける。

「といわれても……村に落ちてきた瓦礫の片付けと、モンスターが入ってこないように入口を守るのと……あとは、普段通りじゃないかしら?」

 セレアナが少し考えて口にする。

「そう、普段通りにするのが一番!」

 先ほどまで離れたところでお茶を飲んでいたエルサーラがいつの間にか近くにティーテーブルを用意して座っていた。

「焦ってどうにかなる? 問題は解決する? ドラゴンのことは彼らに任せましょう。私たちは私たちに出来ることを。それが今できる一番いいことなんじゃないかしら」

 ふふっと組んだ手の上にあごを乗せて上目遣いで皆に問いかけた。

「エルサーラさんの言うとおりだね。悩んでても仕方ない、か。よーし、昨日ので汚れた分今日も元気に洗濯するぞ〜!」

 レキがカムイを引っ張って笑顔で洗濯物を取りに向かう。
 私もお洗濯〜、と叫んで久遠も後に続いた。

「じゃ、俺らはドラゴン倒してきた勇者様たちにご馳走する料理を準備しなくちゃな!」

 御宮は海月の肩を抱いて、最高の料理を出してやろうぜと笑顔を向ける。

「私も準備手伝います……!」
「わたくしは新鮮なお魚をとってきますわ〜!」

 ティーとイコナも各々走り出す。

「あっ、モグラさんたち! 牧場大丈夫かなぁ」
「心配ですね。朱鷺も見に行きます」
「外に行くなら危ないかもしれないからあたしたちも着いて行くよ」
「何かあっては心配ですからね」

 東と笹奈にセレンとセレアナも加わってモグラ牧場へと向かった。

「私たちは引っ張り出した資料の片付けに書庫にいます。何かあったらお声かけてくださいね」
 ニケとリースは書庫へと戻っていった。

「じゃあ、私たちは村の瓦礫を片付けましょうか」
「そうだねロレンツォ。少しでも早く綺麗にしましょう!」
「掘って掘られて……今度は石拾いだな!」

 なにやら楽しそうにドワーフたちと瓦礫の片づけを始めるトゥマス。
 それを見ながらテキパキと仕事をしていくアリアンナとロレンツォ。

 頭をぽりぽりとかきながら鉄心はドワーフとともに壊れた機晶道具の修理やメンテナンスの手伝いに回った。

「……で、僕たちはなにをするの?」

 広場にぽつんと残ったエルサーラのティーテーブル。
 もうさっきまでの空気は欠片もなく、一刻も早く村を元に戻そうとお互いが手を取り合って協力しあっている。

「私の仕事は、終わったわ」
「え、そんな。いいのエル?」

 辺りを見回してエルサーラは背伸びをする。

「ほら、私たちに出来ることは、いつものようにそこに在ること」

 ね、とふわりと笑ってエルサーラはお茶のおかわりを要求するのだった。