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リアクション
「…………大丈夫、でしょうか?」
村の中でも特に機晶技術に長けているというドワーフの元をニケは訪れていた。
台の上に横たわっているのは、パートナーである機晶姫のメアリー・ノイジー(めありー・のいじー)。列車の事故でこの村に落下してからまだ目を覚ましていなかった。
「壊れちゃいないみたいだが……わしらが持ってる技術ではどこまでできるか、どれほど時間がかかるのかも分からんよ? それでもいいのかい?」
「このまま何もしてあげられないよりは」
本当なら今すぐにでもメアリーを連れて地上へと戻りたかった。
しかし、地上への道もないこの状況では、せめてメアリーをみてもらうくらいしか今のニケにはどうすることも出来なかった。
「しかし、このお嬢ちゃんちと変わっとるのぅ」
「ちょっと問題があって。暴走してしまうので低出力にしているんです。それでもやっぱり暴走してしまうと村にも被害が出てしまうし、このままだと村で暮らしていくわけにもいかなくなってしまいますからね……」
ふむ、とあごに手を当てながらメアリーをまじまじと見るドワーフ。
「でも、私は彼女を治してあげたいんです。私の従者ですから……」
「……地上の技術はわしらにはさっぱりわからん。それでも、できる限りはやってみよう。応急処置くらいにはなるじゃろ」
「ありがとうございます……!」
頭を下げながらもニケは心からホッとしていた。ここが機晶石の取れる場所でよかったと。ドワーフの中でも機晶石の扱いに長けているものがいて本当によかったと。
横たわるメアリーは何も語らないけれど、きっと次に目が覚めたなら『すっきりした気もするけど、どうかしら?』なんて言いながらいつも通り無気力そうに動き出すに違いない。
メアリーのことはドワーフに任せて私も出来ることをしなくちゃ、と少し泣きそうになりながら顔を上げた。
「さーて海月、人数多いから頑張って準備しような!」
牧場から届いたばかりの新鮮なパラミタモグラをどんっと置いて御宮 裕樹(おみや・ゆうき)は後ろに隠れて出てこようとしない麻奈 海月(あさな・みつき)に声をかけた。
「に、兄さん……私やっぱり」
「大丈夫大丈夫、ここの調理場のおばちゃんたち、みんな楽しい人たちだから!」
「あらやだ、楽しい人たちっていうのは嬉しいねぇ」
「地上の人にも面白い人はいるものなのね」
はっはっはっと笑いながら、もうすでに打ち解け始めている御宮。
やはり厨房は全世界共通なのか料理の話になると皆食いついてくるようだった。
「う〜ん、これだったら他の野菜とも組み合わせてスープやシチューにするのも上手そうだなぁ」
話しながらも無駄なくモグラに包丁を入れてさばいていく御宮から、次第に離れていく海月。
できるだけ御宮の手元を見ないようにしながら、洗い場の方へとよろよろと歩いていく。
「……お姉さん、大丈夫?」
調理場の手伝いだろう。まだ小さい手でお皿を洗いながら子供のドワーフが消え入りそうな声で話しかけてきた。
「あ、えっと、その……」
「私もね、苦手……なんだ」
え、と顔を上げる海月の目に、恥ずかしそうにしながらも必死で話しかけようとする子供の姿が目に入った。
「ほ、他の人と話したり、あと、モグラさん……さばかれてるの見るの……」
「わ、私も……!」
恥ずかしさでしばらく俯いてた二人だったが、少ししてお互い恥ずかしそうに顔を見つめた後ふふっと笑って洗い物を再開した。
「せっかくだから、地上のお話、き、聞きたいなぁって」
「うん。どんな話がいいかなぁ……」
「えーとね、」
ドワーフの子供と仲良さそうに一緒にお皿を洗う海月を見ながら、御宮は厨房に連れてきて良かったなぁと微笑んだ。
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