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夏合宿 どろろん

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    ★    ★    ★
 
「はーい、そこのイケメンさん。お暇です?」
 ソフィア・クレメントさんが、暇そうにしているカールハインツ・ベッケンバウワー(かーるはいんつ・べっけんばうわー)くんに声をかけました。逆ナンです。
「オレのことか?」
 ちょっと迷惑そうに、カールハインツ・ベッケンバウワーくんが聞き返しました。
「もちろんですわ」
 言うなり、ソフィア・クレメントさんがカールハインツ・ベッケンバウワーくんの腕を取ってぺったりとくっつきました。
「おいおい、勘弁してくれ」
 カールハインツ・ベッケンバウワーくんとしては、こういう女の子は大の苦手です。嫌いではなくて、苦手というのが自分でも困ったところなのですが。
「肝試しですから、お化けからわたくしを守ってくださいませね」
 こう言われてしまうと、無下に追い払うことができないのがカールハインツ・ベッケンバウワーくんの弱点です。
 なし崩し的に、カールハインツ・ベッケンバウワーくんは肝試しに連れ出されてしまいました。
「だから、そんなにくっつくなって」
「いいではないですかあ」
「むっ」
 左手をガッチリとホールドされながらも、殺気に気づいたカールハインツ・ベッケンバウワーくんが、ウィップで飛んできたコンニャクを真っ二つに斬り裂きました。神代明日香さんの攻撃、失敗です。
「もう仕方ない、さっさと済ますぞ」
「わーい」
 ぐずぐずしていると他にもお化け役が寄ってきてうざいとばかりに、カールハインツ・ベッケンバウワーくんが先を急ぎました。さっさと終わらせてしまえば、開放されるはずです。
「よし、今度は楽しませてくれるだろうな」
 海岸に達すると、今度は瀬山裕輝くんの出番です。
「うらやましいぞぉ〜。くっつけ〜」
 ドッペルゴーストが、海岸を進むカールハインツ・ベッケンバウワーくんとソフィア・クレメントさんをジーッと見つめて言いました。
「なんだ、こいつは?」
「あら、多分、わたくしたちをうらやましがっているだけですわ」
「はた迷惑な」
 ドッペルゴーストにとも、ソフィア・クレメントさんにともとれる言葉で、カールハインツ・ベッケンバウワーくんが軽く文句を言いました。
「うらやましいぞぉ! もっと、くっつけ〜」
 少し進むと、またドッペルゴーストが現れました。
「またか! うざい」
「いいじゃないですかあ」
 カールハインツ・ベッケンバウワーくんが歩くスピードが少し速くなります。
「うらめしいぞぉ〜。このバカップルが」
 また少し進むと、今度は壊れかけたマリオネットが現れました。
「少し変わったな。だんだん腹がたってきた」
「ええ、ちょっと」
 さらに進むと、今度は武者人形が現れます。
「妬んでや……!」
 満を持して、武者人形が襲いかかろうとしましたが、カールハインツ・ベッケンバウワーくんとソフィア・クレメントさんのツープラトンで、瞬殺されました。
「行くぞ」
「はい」
 振り返りもせずに、カールハインツ・ベッケンバウワーくんとソフィア・クレメントさんが先を急ぎます。
「ふっ、いいバカップルに育ったな。今度あったら、容赦なく妬む!」
 よく分からない、瀬山裕輝くんでした。
 さて、さっさと祠に到着した二人でしたが、肝心の貝殻がありません。どうやら、うっかりソフィア・クレメントさんが忘れてしまったようです。もちろん、カールハインツ・ベッケンバウワーくんも持っていません。
「どうしましょうかあ」
「いや、貝ならあるだろう」
 そう言うと、いつの間にか、カールハインツ・ベッケンバウワーくんの手には、貝殻が握られていました。どうやら、素早く祠の中から一つ盗んだようです。
 それにしても、なんだか酒臭い貝殻でした。とりあえず、自分たちの名前を書いて証拠にします。
「さあ、帰るぞ!」
「えー、もうですかあ」
「すぐ帰る、即帰る、帰れ!」
 カールハインツ・ベッケンバウワーくんは、そうソフィア・クレメントさんに言いました。