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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊

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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊
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リアクション

 ヒーローたちが突入する前に、オリュンポス・パレスの中へ進入することに成功していた者がいた。
「ロケ弁は、どこですかー!? 美味しい美味しいロケ弁はー!?」
 誰もいない場所で叫ぶのは黒羊郷ベルセヴェランテ。実況中継者として現在も各地点を飛び回っている虎子のパートナーである。
 ロケ弁を求めて三千里、虎子とはぐれてから数時間で一人でパレス内へ侵入していたのだ。そう、ロケ弁のために。
「こっちにくる人影を追っていたらここまで来てしまいましたけど、ここは一体どこでしょう?」
 きっぱりハテナ顔のベルセ。完全に迷子である。
「うぉ? 君、こんなところで一体何をしてるんだ?」
 モブ怪人であるZS12番号がベルセを見つけて驚く。誰もいないと思って見回りに当たっていたから無理もない。
「あ、すいませんー! ロケ弁はどこで出るんでしょうか?」
 あっけらかんと、何の危機感も持たずに喋りかけてくるベルセに少々困惑するモブ怪人ZS12。
「ロケ弁? ここらへんでロケがあるなんて聞いてないけど、まあお腹が空いてるのならこっちにおいで、人質部屋にいればご飯くらい出るだろうし」
「やったー! やっとロケ弁にありつけますー!」
「ロケ弁じゃないけどね、はいはいこっちこっち」
「はーい!」
 素直にモブ怪人ZS12についてくベルセ。虎子に会えるのはもう少し先になりそうだ。

 そしてベルセ侵入から少し経ち、ヒーロー同士で結集させた力を使いなんとかパレス内へと突入したヒーロー一向。
 途中で道が二つに分かれていたため、二手に分かれて捜索をすることになった。
「にしても薄暗いな。そこに右腕だけの俺が浮いていて喋っている、まさに悪の本拠地の光景か」
「そうですね、これだけ暗いと転んでしまいます」
「そのバッチで照らしてみたらどうだ? できるだろう?」
「このバッチは変身するためにあるんですよ? そういう用途じゃありません」
「使えれば何でもいいと思うがな」
 暗く、狭い道を行くのはラトス・アトランティス(らとす・あとらんてぃす)七瀬 灯(ななせ・あかり)だ。しばらく歩いていた二人だったが、程なくして足を止める。
「ん、行き止まり、外れだな」
「それじゃ戻らないと」
 道を引き返そうとした時、上から声が聞こえてくる。
「そうはさせんで、ヒーロー共!」
「だから無理やって! こんな狭い場所じゃ高いところからの登場は無理!」
「やるかやらないかやない、やるんや」
「どや顔で言うなこのアホ兄貴!」
「とうっ!」
 無理して高いところから飛び降りてきたのは瀬山 裕輝(せやま・ひろき)瀬山 慧奈(せやま・けいな)の二人だ。
「さあ、ここから先のUターンは禁止や。どうしても通りたいか? あかんな、あかんあかん。なあ? 皆の衆?」
 ラトスと灯を取り囲むようにして現れる人影、だがその姿はモブ怪人ではない。
 裕輝の【忍法・呪い影】、【下忍】からなる手下たちだ。
「我々は──モテない奴に限らず、この世の妬みし妬む者の味方、妬み隊。
 同志オリュンポスの危機を小耳に挟んだモノでな、助太刀に来た!」
「はあ……」
「すんません、もう少し聞いてやってください」
「そして自分は妬み隊に属する謎の人物! 恨みと妬みの使者、その名も───【ジェラシード仮面】!」
「驚いたってください、後生ですから」
「あ、ああ。おおージェラシード仮面、一体何者なんだー」
「お、驚きを隠せません」
「ふっ、決まったな!」
 やり切った顔をする裕輝。そして改めて二人の顔を見る。
「そういうことや! ヒーローみたいに! モテるやつには悪の鉄槌を……?」
 二人のヒーローを見た裕輝は言葉を失くす。
 何せそこにいたヒーローというのは、可愛げのある可憐な少女と、右腕だけが浮遊している謎の生命体がいるだけだったからだ。
「ん、いや、間違うた。おたくらは怪人側やな、外見でわかる」
「たくもうっ、先に見ておけばこんな恥かかずに済んだものを……。
 それはそうと、あっち側にヒーローが行ったようやからさっさと向かうでこのバカ兄貴!」
「……せやな。いやぁお騒がせしましてすまん。というかあんたらも怪人なら一緒に行こうや! 妬み隊として!」
「妬み隊はともかく、一緒に行くのには賛成や。どうですかね?」
 気さくに二人を誘う裕輝と慧奈が手を差し出す。
「す、すいません。私たちこれでも……」
「ヒーロー側だ。怪人と勘違いしても仕方ないがな」
「またまたそんな冗談言うてー。今度は騙されへんて」
「そうそう、さすがにそれは冗談ですよね? まっさか右腕だけの生命体がヒーローなんて、ないない。……ない、ですよね? えっ? マジで?」
「残念ながら、マジです」
「……マジか?」
「大マジだ」
「「……」」
 顔を見合わせる二人。しばしの静寂が四人を包む。その静寂を切り裂いたのは裕輝と慧奈だった。
「己ヒーロー! モテるだけでは飽き足らず、人を騙すまでするとは、その罪は重いで!
 この妬み隊の謎の人物、ジェラシード仮面がゆるさんっ!」
「妬み隊とは関係あらへんけど、この恥ずかしさ、晴らさせてもらうで!」
 気恥ずかしさを紛らわせようという魂胆が見え隠れしている二人に至極真面目に返答するラトス
「イレギュラーだが、ヒーローとしては戦わせてもらおう」
「怪人さんたちには負けません。変身です!」
 ミラクルバッチが光り輝き灯を包む。その光が解けたとき、灯は太陽をモチーフにしたヒーロー『サンシャインガール』と変身を遂げていた。
 だが、それに同ぜずに襲ってくる妬み隊。迎撃をしようとラトスと灯が『サイコキネシス』を使い、周りにあった残骸を操り、放り投げる。
 その投擲は的確というほか無い。しかし相手の妬み隊は、名前だけのギャク集団ではなかった。
「まだまだ甘いで! 甘ちゃんヒーローや!」
 軽々と向かってくる残骸を避ける妬み隊+慧奈。
 先ほどのうっかり加減はどこに置いてきたのか、身軽な動きでラトスと灯を翻弄する。
 これに若干の驚きを覚えつつも、冷静に判断し作戦を変更するラトス。
「大きな物体で丸ごとと思ったが、ここは各個撃破する他ないな」
「それじゃもう一度、サイコキネシスを……」
 『サイコキネシス』を使おうとした灯。しかし、裕輝はその一瞬の隙を見逃しはしなかった。
「……今や!」
 裕輝の一言で下忍と呪い影が一斉に動く。下忍の一人が手に持っていた【忍び蚕】を灯に投擲、白い糸を絡ませることに成功させる。
「あ、あらら?」
「よし! あとはお約束通りに動くんや!」
「どんなや! でも動きを封じたんはナイスやバカ兄貴!」
 動機はともかく、流れるように灯の動きを封じる裕輝。だが、それを見たラトスも黙っているわけではない。
「灯!」
 ラトスが灯を助けに入ろうとする。が、それを止めるため慧奈が前に立つ。
「悪いけど、見物だけで堪忍してや!」
 立ちはだかる慧奈。このままではラトスの助けが間に合わず、裕輝の求めるお約束展開になってしまう。
 しかし、世の中はそんなに甘くないのだ!

……ーン ……ゴーンッ ……ドゴーッン ドッゴォーンッッ!

 次第に近寄ってくる何かが破壊される音。その音の正体である人物が四人の前に現れる。
「おうら! 開発部はどこだあ!」
 叫びとともに壁をぶち破って現れたのは柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)だ。その胸には張り紙がされてある。内容はこうだ。

【兵器型怪人アームズ】
右腕に大型ガトリングガンを取り付けた射撃支援型怪人。
必殺技は魔法で強化した弾丸を放つ『ガンパレード』!
でも何かオリュンポスの趣味に合わないんで廃棄決定!
謎ハデス様に内緒で作った怪人なので見つからないように注意!

オリュンポス開発部

等と書かれた紙。そう、恭也は本来怪人としての戦力になるために改造を施されていたのだ。
「周りを見てみりゃ山のようなジャンクパーツに囲まれて、知らない間に改造された俺を! 趣味に合わないなんて理由で廃棄決定☆ なら仕方ないな、ハッハッハ! ってふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 拉致して気に入らないから廃棄って子供かー!!」
 そう叫びながら怪人設定で使われるはずだったガトリングを撃ち続ける、『ガンパレード』を無差別に使用する恭也。
「こ、こいつはクレイジーやで! だがその憎しみ、妬みに共通するもんがある! どや? 一緒に妬み隊として活躍せぇへんか?」
「確かに、今の攻撃はええな。仲間になってくれるなら大助かりやし」
「……そうだな。決めた」
 恭也が思わぬ返事をしたと思われた。だがそれは別の決意から出てきた言葉。
「そうか! なら……」
「落とす」
「えっ?」
「オリュンポス落とす」
 あまりの急展開にしばしの間思考が停止する裕輝と慧奈。その隙を逃さなかったラトスが慧奈を突破して、灯を助ける。
「あ、ちょ!? しまったー!!」
「灯、大丈夫か?」
「ええ、おかげさまで」
「よかった。それとそこの怪人っぽいヒーロー、助かった」
「ああ? 何で右腕だけが喋ってんだ?」
「気にするな。それより、この城を落とすのなら手伝おう。ヒーローっぽいこともしておかないと、怪人側で退治されそうだしな」
「……ヒーローね。まっ、改造するだけ改造してぽいってな怪人側よりよっぽどいいぜ! っしゃ! 一緒にぶち落とすか!」
「……残念やで、交渉決裂なんてな。ほんま、残念や!」
 裕輝率いる妬み隊が三人に飛び掛る。しかし、先ほどのように上手くはいかない。
「オリュンポスに加担するってんならいいぜ、まずはそのふざけたお前等から落としてやる!」
 怪人の名残であるガトリングガンを無尽蔵に使用する『ガンパレード』。
 毎分、数え切れないほどの弾丸をバラまく恭也に近づけない妬み隊。
 しかし、基本スペックの高い妬み隊も『ガンパレード』を何とか掻い潜ってくる。
「今度は当てさせてもらおう」
「そこですっ」
 その避けた僅かに生じる硬直を狙って『サイコキネシス』を使い、下忍と呪い影を制するラトスと灯。
「くっ、せめて一人だけでも行動不能にせんと……!」
 劣勢になりつつあるこの状況を打破するべく、やられた下忍たちの間を縫って恭也を抜き、灯に狙いを定める慧奈。
「まずは一人……!」
 だが、その狙いを読んでいたラトスが止めに入る。
「悪いが、見物だけで勘弁してくれ」
「くっ、さっきのお返しってところかいな!」
「行きます!」
 『サイコキネシス』で慧奈を攻撃する灯だったが、寸でのところでかわされてしまう。しかし明らかに体勢は逆転、恭也が加わったことでラトスたちヒーロー側が優勢となる。
「……ふっふっふ、はっはっはっは!」
「なんだよ? 劣勢で頭がイカれたかよ?」
「右腕にガトリングぶら下げてるヤツほどじゃないで」
「ほっとけ!」
 即興コントを繰り広げる裕輝だったが、彼にはまだ勝算があった。
「オレら妬み隊をここまで追い詰めるとは。大したもんやで! だからこそ、奥の手を使わせてもらうで!」
「……このフラグ臭、嫌な予感しか」
 残念ながら、慧奈の予感は的中することになる。
「見さらせ! この機晶爆弾でお前等を木端微塵にしたるで!」
「あ、アホ兄貴! さっさとそれしまえ!」
「大丈夫や、オレ等への被害も計算済み……」
「それ機晶爆弾ちゃう、自爆弾や!」
「えっ」
「えっ、やなーい!」
 慧奈が駆け寄る。が、時既に遅く。

ドーーーーーーーーーーーーーーーーン!

「だ、だれやっ! 機晶爆弾と自爆弾同じ懐にいれたんはっー!」
「あんたやアホ兄貴ー!」
 建物内で打ちあがる花火。その形は、笑う兄貴と突っ込む妹の姿だった。
 予想だにしなかった終わりに困惑する三人。
「あー、なんというか……一言だけ。無茶しやがって……」
「儚い花火ですね……」
「そうだな。だが、この花火は俺たちの道しるべにはなってくれたみたいだ」
 爆発の影響で壁に空いた穴、その先には動力炉までの道筋が書かれているパレス内の案内図があった。
「ふむ、成る程な。このルートを通って……うっしゃ! この城を落とすのは続行だ! 二人とも、頼むぜ!」
「了解だ」
「頑張ります」
 そうして三人は動力炉に向かって走り出す。オリュンポス・パレスを落とすために。