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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊

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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊
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リアクション

「あっちじゃ相当派手なショーが繰り広げられたみたいだな? 負けてられないぜ、グラキエス!」
「そうだな、悪役の俺たちも最善を尽くそう」
 ヒーローの前に立ちはだかる二人の怪人。
 獣のように荒く、悪魔のような風貌の「魔獣ロア」ことロア・ドゥーエ(ろあ・どぅーえ)と魔力の塊をその体内で合成させられた「魔人グラキエス」ことグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)
 本当のヒーローショーだと勘違いしたまま現在に至っている。
「なんや強そうな怪人やなぁ! これは魔法少女するかいがあるってもんや!」
「魔法少女はそんなこと言わないと思うよ、優菜」
「魔法少女だろうがヒーローだろうが、強くなるために全力やないか! 私もそうありたいんや!」
「とか言って、本当は魔法の実験とかしたいだけでしょ?」
「さあやったるでぇ!!」
「いや、まあ、変身姿とか見れて眼福……じゃなくて! 楽しいけどさ!」
「変身シーンは限定パッケージを購入すると謎の白いもやもやがなくなる素敵仕様や!」
「買ったー! じゃなくて!」
 漫才顔負けのやりとりをするのは、奏輝 優奈(かなて・ゆうな)レン・リベルリア(れん・りべるりあ)の二人。
「なんだ、相手のヒーローあの小さな子たちか?」
「相手が誰であろうと、全力で行かしてもらおう」
「ある程度は加減してやれよ?」
「善処する」
「……悪役になろうが、相変わらずの相棒だこと。まあ悪くはないがな」
「何を話してるんや知らんけど、とりあえず変身やー! レンもさっさと準備しぃ!」
「えっえっ!? 僕もヒーローになるの? でもそんなの全然思いつかないし」
「……あーもう! ちょっとタンマぁ!」
 右手を突き出して怪人二人にちょっと待ってくれ! と言わんばかりに止める。
「だ、そうだが?」
「ヒーローの口上は聞く。それも悪役の使命だ」
「そうだな。ちょっと待ってるか」
 二人が話をしている間に、優菜とレンがヒーローんも打ち合わせを開始。小声で。
「ヒーロー設定を用意してないってどういうことやの! おかげであちらさん待たせてるやん!」
「いやだって、てっきり優菜だけかと思ってたから」
「そんなわけないやろ! あんたも貴重な戦力になるんやで?」
「……僕が貴重な、戦力」
「わかったらあのいろいろ書き込んであるネタ張から何でもいいから引っ張ってきぃ、ええな!」
「ああ、確かに僕の妄想ノートならそれっぽいのがあるかもね、なるほ……って姉さん!?
 なんでアレのこと知ってるの!? というか見たの!? 見ちゃったの!?」
「ボク ノ カンガエタ サイキョウ ノ」
「ストップストップストーップ! 戦う、戦うから記憶してるのを音読するのはやめて!」
「そんなわけでお待たせしました! 今から変身します!」
「ああ、怪我をしないようにな」
「なんだろうな、このやり取り」
 ロアが笑う。笑われながらも変身する二人
「雪の国からやってきたヒーロー! 関西弁なのは仕様やで! マジカル☆スノー! ただいま参上!」
「それ、魔法少女っぽいよね」
「いいからあんたも変身や!」
「わ、わかったよ! 雪と共に踊る、細氷の騎士、見参! 標準語搭載! リダスティア! 霜焼け注意だよ!」
 二人とも雪や氷をモチーフとしたヒーローに変身を果たす。
「さて、これで役者は揃ったみたいだな」
「ああ、悪役が黙って見ているのはここまでだ。行くぞ、小さなヒーローたち」
 二人の変身を無事に見届けたロアとグラキエスが、二人に襲い掛かる。
「さーてと! 怖い怖い魔獣ロアの攻撃に耐えられるか?」
「そっちこそ! 氷付けで剥製にされんようにきぃつけてーな!」
 優菜が氷術をロアに放つ。
「遅い遅い! そんなじゃ獣は捕らえきれないぞ!」
 『神速』を使用し、さらにバッチの力で増幅されたロアの速さはまさに獣。常人では視界に捕らえることすらできないだろう。
「くそぅ! ちょこまかちょこまかとー!」
「そうやって頭に血を上らせると、獣に付けねらわれる。こんな風にな!」
「い、いつの間にっ!」
 大雑把になった優菜の動きの隙を見抜き、『羅刹の武術』を駆使して思い切り右ストレートを振りぬく。
「優菜っ!」
「余所見をしていると、持って行かれるぞ」
「ぐぅ!? こ、このー!」
 レンも『氷術』を使用する。しかしグラキエスは動じない。
「氷の魔法は、こう使う」
 レンの『氷術』に対して『ブリザード』で圧倒するグラキエス。氷の嵐はそのままレンを襲う。
「この程度、霜焼けにもならないさ!」
「なら火傷はどうだ?」
 間髪いれずに『天の炎』をレンに撃ち込む。その容赦のなさ、まさに悪。これぞ『魔人グラキエス』である。
「やりすぎじゃないか?」
「……ヒーローは倒されても、立ち上がってくるものさ」
 ロアの問いに対して答えたグラキエス。その二人が見たものは、あれだけ圧倒されたにも関わらずもう立ち上がっている優菜とレンの姿だった。
「……ああ、あれはまさしくヒーローだな。手加減なんてしてる暇もない」
「よう、やってくれたなぁ! そんな悪い悪い怪人たちは、雪にかわってお仕置きや!」
「姉さんは、僕が守るんだ! こんなところで屈するわけには行かないよ!」
「きぃや、【氷竜・ラヴィーネ】。全員、凍らしたれ!」
「【氷雪比翼】、展開! さっきみたいには行かないよ!」
 優菜がラヴィーネを召還、レンは【氷雪比翼】を展開して空を舞う。
「並みの怪人なら逃げ出すが、俺たちは並以上なんでな。バトル続行だ!」
「ドラゴンにはドラゴンで対抗しよう、そちらのほうが迫力もある」
 ロアが『不壊不動』を使用して攻防に隙を無くし、グラキエスが【召喚獣:バハムート】を召喚する。更に【ネロアンジェロ】を展開する。
 魔法少女のようなヒーローと少女のように可愛いヒーロー、対するは原始的な獣を恐怖を漂わせる怪人と死神を彷彿とさせる黒まみれの怪人。
 四人を制するかのように、【ラヴィーネ】と【バハムート】が対峙する。
 その絵面は奇妙にてして圧巻。
「いったれー! 【ラヴィーネ】!」
「蹴散らせ、バハムート」
 二体の巨竜が歯をむき出し、体をぶつけ合い、死闘を繰り広げる。ここだけ怪獣大戦争に入り込んだかのような光景だ。
「だが、本命は俺。魔獣ロアが狙うのは魔法少女の嬢ちゃんだ!」
 地面がえぐれあがるほどの踏み込みで、優菜に襲い掛かる。
「そうは、させない!」
「……甘いぜ! 嬢ちゃん!」
「そっちこそ! あと僕は男だよ!」
「あーそれは悪かった坊ちゃん。だがいいのか? 俺の相棒が姉ちゃんのところに向かってるぞ」
「ゆ、優菜が僕の姉さんだっていつ気づいたの!?」
「さっき思いっきり守る! って叫んでたろうが」
「う、うう。恥ずかしい……」
 恥ずかしがるレン。そのレンから離れられないロア。外見からは想像できないほどしなやかな筋肉を持っているレンをここでフリーにしてしまえば、グラキエスに邪魔が入る。
 だからこそロアは動かないでいたのだ。
「いいのか? 姉ちゃんが危ない目に逢ってるかもだぞ?」
 プラフをかけるロア。だがレンも引かない。
「平気だよ。こうなること、最初から計算済みだから」
「なんだと?」
 怪訝な顔をするロア。
 地上ではなく空中、グラキエスがまさに優菜に襲い掛かろうとする寸前だった。
「残念だが、ピリオドだ」
「そうやな。そちらさんのな!」
 ニヤっと策士のように笑う優菜。不穏に思ったグラキエスがある異変に気づく。
 無数の得体の知れない影が地面に落ちていたのだ。
「……上か!」
 グラキエスが見上げると、巨大な雪だるまと無数の雪だるまの雨が降ってきていた。
「晴れ時々雪だるまに注意、なんてなっ!」
 荒れ狂う雪だるまの雨に攻撃を断念して回避行動に移るグラキエス。地上で戦うロアも雪だるまを掻い潜り、破壊して、回避する。
「とんだ天気だな! ……ってあの坊ちゃんはどこに」
「ここだー! てりゃー!」
「しまっ―――」
 雪だるまの雨を縫うように飛んできたレンは『ソードプレイ』を使用して、見事にロアに攻撃をヒットさせる。
 直撃を受けたロアが倒れる。
「こいつは、もう坊ちゃんとは呼べないな。……ヒーロー」
「ロア!」
 やられたロアに気づきグラキエスが飛びつく。
「後は任せたぞ、グラキエス」
「……ああ」
「べ、別に殺してはいませんからね!」
「殺生やなー、レン」
「だ、だからっ!」
「……行くぞ、ヒーロー。ここから先は更に全力で行く」
 【刻印眼】に封じた魔力を開放するグラキエス。
「凍れ」
 雪・氷をモチーフとした相手に『ブリザード』を使用。膨大な魔力に任せた攻撃は、この属性に体制があろう二人でもダメージを抑えきれることはできなかった。
「む、むちゃくちゃや! これじゃほんまにエタナール・フォース・ブリザード、ウチらは死ぬ状態や!」
「さっきまでと目が違うよー!」
「……終わらせる」
 グラキエスの周りが震えだす。最大級の魔力を消費して攻撃をしようとするグラキエス。
 だったのだが。

プスンッ。

「……魔力、切れ、か」
 そう言って倒れるグラキエス。最初からアクセル全開で魔力を使っていたためSPが先に音を上げたのだ。
「た、助かったー……」
「ふぅ、必殺技その2『ジャッジメントフリーズ(物理)』の出番はなかったか。残念や」
「もうそれただの殴打でしょ」
「さあ、次や次! 次の相手で使ったるでー!」
「ちょ、ちょっと待ってよー!」
 倒れた二人を後に、次なる実験台、もとい怪人たちを求めて進む優菜とレンだった。