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無法者と怪盗と契約者と

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■???(夕方)


 狭い空間に機器が放つ光と控えめな電子音が流れる。
 ベッドが一つ。
 そして、それを囲むように最新の医療機器が設置され、全力で稼働していた。
 淡く光るモニターからは、依然として良くない数値が伝えられてくる。
 苦しげに呻くベッドの中の少女が、その状態をリアルに表していた。
 病院に担ぎ込まれてから一週間。
 今までもっているのが奇跡のような状態だった。

 そんな彼女の枕の下では、複数の何かが明滅していた。
 ゆっくりと力強く。励ますように。
 医者や看護師に見つからぬように置かれたそれは、ベッドの少女に対して温かく穏やかな光を放ち続けている。


 淡い虹色に包まれた空間で、少女たちが黒く濁んだ結晶を囲むように座っていた。
 濁った結晶には無数のヒビが入り、今にも壊れてしまいそうな状態だ。

「……さん、負けないでください。私も頑張りますから……」

 結崎 綾耶(ゆうざき・あや)が胸に両手を当てる。
 後ろが透けて見えるようなそんな状態でも心配する顔がはっきりと見えた。

「今のワタシには歌うことしかできません。それでも、少しでもあなたの助けになるのなら……」
「ボクは歌えないけど、応援なら任せろだぜ」

 アイリス・零式(あいりす・ぜろしき)の歌声にメイ・アドネラ(めい・あどねら)の励ましの声が共鳴する。
 音は光となって濁った結晶を包んでいった。

「まだここで朽ちるには早すぎるわ。思い出すのよ、あなたの大切な人、置いてきた人のことを……」

 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が優しく、そして諭すように濁った結晶へ話しかける。
 自分も残してきた大切なパートナーを思い浮かべながら。

「焦る必要はありませんわ。大丈夫、きっと良くなります。心を楽にしてください……」

 穏やかな表情を浮かべたセレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)がゆっくりと、染み入るような声で語りかけている。
 横では夏來 香菜がたどたどしくも応援していた。

 少女たちが声をかける度に、濁った結晶の細かいヒビが少しずつ消えていく。
 外では身体を、中では生きる気力を与えるために、誰もが必死に戦っていた。