イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

女の嫉妬に巻き込まれたのが運の尽き、なのか?

リアクション公開中!

女の嫉妬に巻き込まれたのが運の尽き、なのか?

リアクション

「魔女ルルト・ロバの名においてルルト・ロバが命ず。今すぐに魔女ルルト・ロバの呪いを解き浄化させよ」



 どんなタイミングで解呪の言葉が発せられたかというと。
 レオーナはその好機を見逃さなかった。己の魔槍を強く握り込み、
「どうせ食べるなら、ゴボウでも食っとけやグォラァァァァァ!」
ウマ・ウマーイの口に魔槍「ゴボウ」(の柄の側)を勢い良く突っ込んだ。
「これも立派な食べ物(の名前をした槍)だから食えるよなぁ? ア? ア?(ぐりぐりぐりぐり)」
 という形でウマ・ウマーイを白目に剥かせることに成功した、そのタイミンで解呪が放たれたのだった。
 レオーナの小脇に抱えられた鳩が実際の重さを取り戻した。人の重さにつられてレオーナは大きく尻餅をつく。
「いったーい。――もう、どうせ元に戻るなら離れるとか気をつか、って……て、あれ? クレアじゃ、ない? ていうか、可憐! キュート!」
 倒れた弾みで自分の上に跨っている繊細という単語を体現したような儚い少女にレオーナはときめいた。
「アディ!」
 名前を呼ばれてレオーナを下敷きにして狼狽していたアデリーヌは立ち上がると恋人の胸に飛び込んだ。
「こわ、怖かった、ですわ」
 飛び込んでその胸に顔を埋め泣きだしたアデリーヌにさゆみは少し複雑そうな顔を浮かべるもののすぐに恋人を深く抱きしめる。
「鳩同士どうやら途中で入れ替わってしまったみたいですわ」
 レオーナに説明するクレアの顔はいささか赤かった。赤くもなるだろう。大切に抱えられ、愛の睦言が混じった言葉で励まされ続けていたのだ、赤くなるなという方が無理な話である。そして、囁いたさゆみも気まずい。
 というか、あのどさくさでまさか同じ鳩だからって入れ違っていたとは全く気づかなかった。
「ぐ、ぬぬぬ」
 頭に羽純、両肩に(なんとか取り戻した)ホリイとスワファルの三人が元に戻って、甚五郎は突如として増した重量に思いっきり踏ん張った。
「お、おお」
「はわわわ」
「……」
 転げ落ちる形で三人が三人それぞれの態勢で地面に着地した。
 身長が変わらないくらい大きかったダチョウから元のロビーナサイズに戻ったパートナーに忍は盛大な溜息と共にその場にしゃがみ込んだ。
「助かった」
 彼の苦労は止まること無く、終わらない。ロビーナが結婚を望む限り。
「どこ、どこ、どこ行ったでござるか! あたいの未来の旦那さまぁあぁぁあ」
 完全に伸びてしまったウマ・ウマーイは従者に連れられて既にその姿は噴水広場から消え去っていた。鳥が人に戻り、主人の願いが叶わぬことを悟った従者達の撤収のはやいことはやいこと。
 ロビーナの声が響き渡ること無く虚しく雑踏に掻き消える。
 無事に白鳥から元に戻れたコハクに抱きしめられているアンバーを眺め、和解したのを確認したルカルカはその場で大きく背伸びをする。
「さぁて、買い物の続きしよっと」
 彼の為のクリスマスプレゼントを買いに来たのだ。ただでさえプレゼント選びは時間がかかる。日暮れ前までに帰れればいいなと願いながらショッピング街に消えていった。
「お師匠様、お師匠様」
 気を失ったままのアガレスをリースは揺り動かした。
「ぬ。邪悪なる魔導書よ! 少女と共に滅びるが良いッ ――って」
 あれ? 目覚めた勢いで両の翼を広げたアガレスは、パチパチと目を瞬いた。リースに視線を移して、鳩みたいに首をクリっと傾げる。
 決め台詞のように叫ばれた台詞の内容がいささか聞き捨てならないが、リースは少しだけ照れるように笑った。
「ぜ、全部終わりましたよ、お師匠様。じ、事件は無事解決です」
「そうか。それはよかった。なんだ、リース。吾輩の顔に何かついているのか?」
「い、いいえ、お師匠様。た、ただ私はお師匠様がそうやって、は、話してくれるほうが良いなと思っただけです」
 勘違いと妄想が激しいけれど、ただの鳩として在るよりは、とっても良いように思えた。元に戻って心底良かったと思う。
「ねぇねぇ、その魔導書抱きしめて呪文唱えるだけで呪えるって本当なんだね」
 近づいてきたエースにルルトは頷いた。
「でもね。そもそもこの魔導書は私のじゃないんだよね。生き物を生き物に作り変えるのが大好きな知人の魔女が書いた奴なんだよ」
「凄く危険なモノじゃないか。生き物を作り変えるとか」
 しかも手順があまりに簡単過ぎる。し、盗まれやすいとかお話にならない。
「だから処分に困っているんだよ。貰い物だし」
「モヤシチャエ♪」
「あー、やっぱりその方が世の為、だよねぇ。あー、でも勿体無いと思うのは魔女の業かなぁ。悩むー」
 ウンウンと唸っているルルトの隣でエースはメシエに視線を流した。
「メシエ、君いつからそんなにヨウムのモノマネが上手くなったんだい?」
 アデリーヌが落ち着いたのを確認してさゆみは彼女をクレープ屋に行こうと誘いを掛けた。甚五郎達も帰路についた。
 徐々に噴水広場は平和を取り戻していく。
 では、帰ろう目を赤く腫らしたアンバーの手にコハクは自分の手を絡ませた。突然の姉のおてて繋いでにアンバーは驚いたが、すぐに気恥ずかしそうにはにかんだ。
 そんなアンバーの後を、彼女を口説こうとレオーネが追いかけていった。
 まだ一騒動起こる予感を漂わせて、ひとまず事件は解決したようだ。

担当マスターより

▼担当マスター

保坂紫子

▼マスターコメント

 皆様初めまして、またおひさしぶりです。保坂紫子です。
 今回のシナリオはいかがでしたでしょうか。皆様の素敵なアクションに、少しでもお返しできていれば幸いです。
 皆様お疲れ様でした。コメディということで部分部分緩めに描写させていただきました。コメディは初めて書かせていただきましたが、これはあれですね、綱渡りですね。ヒヤヒヤします。でも、楽しかったです。もう少しはっちゃけても良かったんでしょうか。

 また、推敲を重ねておりますが、誤字脱字等がございましたらどうかご容赦願います。
 では、ご縁がございましたらまた会いましょう。

2012年12月12日 修正。